ますぶちStyle/宝石箱の片隅

ジュエリーや宝石、真珠を中心に、ジュエリー・ビジネス、歴史まで幅広く書いていきます。是非ご一読下さい。

『同質化・均一化している現在のジュエリーについて』

2023年03月05日 | 日記

宝石箱の片隅・パイプの煙

毒蛇は急がないvol-005

 

 

 

『同質化・均一化している現在のジュエリーについて』

 

自分の作り出すものがいくらオリジナルだと叫んでも

どうしても低価格帯になれば、同じようなものになってしまうでしょう。

香港やムンバイなどのトレードショーに行けば

どのブースに行っても同じようなテイストのものばかりで

うんざりするほどたくさんのジュエリーや宝石が並んでします。

その中からきらりと光るものを見つけ出すのは至難の業です。

最近は国内のIJT、JJF、IJKそしてミネラルショーなるものには

全くと言って良いほど行かなくなりました。

このような国内の展示会に行っても、期待を裏切られるだけです。

それは何も国内だけに限ったことではなく、

海外でも推して知るべしなのです。

どうしてこのような状況になってしまったのでしょうか。

見方によっては底辺が広がったと言えなくはないです。

それはそれで良いのです。

でも、そう言った中で、必ず一際光るものがあった筈ですが

売上だけに拘り過ぎて

業界自体が小さく縮こまってしまったのかも知れません。

もう何度も同じテーマで書いてきましたから

“あぁっ!!あいつまた始まったよ”と言われそうですが・・・。


AZClub初級講座『ジュエリーの歴史入門』   『20世紀のジュエリー[1900〜1980年代まで]』

2023年03月05日 | 日記

AZClub初級講座『ジュエリーの歴史入門』

 

『20世紀のジュエリー[1900〜1980年代まで]

 

日時:2023年3月28日(火)19:00-21:00

ZOOMによるOnlineゼミになります

参加費:2500円

定員:7名(定員になり次第締切ます)

お申込・お問合せ:jewellerystory_0512@yahoo.co.jp

 

 

ジュエリーの歴史を識れば

ジュエリーがもっと面白くなる、

もっと楽しくなる

20世紀に入るとジュエリーを取り巻く環境が激変します。

世紀末にはフランスを中心とした

アール・ヌーヴォーやリバイバルジュエリーが

イギリスではアーツアンドクラフツが、

ジュエリー市場をリードしていました。

1850年のロンドン万国博覧会を嚆矢として

フランスを中心に頻繁に博覧会が行われていました。

この博覧会によってジュエリーは富裕層を中心に大衆化の道を歩み始めます。

そしてプラチナとダイヤモンドによる白いジュエリーの登場です。

ジュエリーの様式では

ガーランドやエドワーディアンが流行します。

しかし第一次世界大戦はそれまでの社会生活を一変させ

モダニズムが主流になり女性の意識が変わります。

アール・デコの登場です。


宝石たちの1000物語(2)第2回 《パパラチア・サファイア/padparacha sapphire》   『ピンクのドレスの女』

2023年03月05日 | 日記

宝石たちの1000物語

人に歴史があるように、宝石にもそれぞれの物語がある。1000文字に収められた最も短いショートショート。1000の宝石たちの煌めき。それは宝石の小宇宙。男と女の物語は星の数ほどあります。そしてそれぞれの物語は切なく哀しく、時には可笑しく愚かしく。

 

 

 

シリーズ−1:アンコール特集

 

(2)第2回

《パパラチア・サファイア/padparacha sapphire》

 

『ピンクのドレスの女』

 

ホテルのバーの止まり木に、その女性は一人で座っていた。

細身のシガーから立ち上る紫煙が

薄くゆっくりと周りの空気に溶け込んでいったのを、

私は何となく見ていた。

彼女の着ているピンクのカクテルドレスに合わせるように、

カウンターには少し口を付けただけの、

ピンクレディのグラスがあった。

このホテルでパーティがあっての帰りだろうか。

或いは誰かと待ち合わせなのだろうか。

それにしては、後ろ姿が寂しそうに見えた。

長めの髪が肩まで垂れ下がり、

彼女の仕草で時々表情をあらわす、

真珠のダングリングのイヤリングが、妙に印象的だ。

今日は珍しく、こちらもここで待ち合わせをしている。

やがて僕の肩に触れる気配で振り返ると、

待ち合わせの彼女が微笑みかけていた。

「何を見ているの」

「いや、別に」

「あの隅の女性が気になるの」

「いや」

「ウソ、さっきからずーっと見ているわよ」

私は彼女の発言を無視した。

これ以上付き合うと何を言い出すか判らない。

彼女は私の側に座ると、

バーテンに隅の女性と同じ飲み物を注文した。

「よせよわざとらしい」

「あら、いいじゃない。私だってこれが飲みたかったのよ」

「でもあの人の指、見た?」

そういわれて改めてその女性の指をみると、

左手の中指に大きめのピンク色した指輪が収まっていた。

「あの指輪の宝石何だか知っている?当ててご覧なさい」

「判らないよ」

「じゃあヒントをあげる。ピンクダイヤ、ピンクトルマリン、パパラチア・サファイア、のどれでしょう」

「ますます判らないよ」

「私が思うには、きっとパパラチア・サファイアね」

「何で判るの」

「勘よ!!」

「・・・」

「パパラチア・サファイアの色はとても独特の色で希少なの。

むかし、といってもそれ程昔ではないんだけど、

母親がある人にプレゼントされたの。

それを見ていた記憶があるからよ」

「ふーん」

「私ね、もともと赤やピンク系の色にはとっても敏感なの」

『パパラチア・サファイアは

ルビーやサファイアと同じコランダムに属し、

オレンジからピンクが混ざった独特の色を呈する。

産地はスリランカだが、マダガスカルからも産出される』

「なんだそれ」

「実はね、今度うちの店に入荷した商品の説明文。

偶然にもパパラチア・サファイアを店長が仕入れたのよ」

「ふーんっ」

「でもああいった宝石が似合う女性に憧れちゃうな」

「まあそのうちにな」

「なによそれ!!」

「いや君は充分資格があるってことさ」

いつの間にか、ピンクのドレスの女は席を立っていた。

あとに香を残して。