ますぶちStyle/宝石箱の片隅

ジュエリーや宝石、真珠を中心に、ジュエリー・ビジネス、歴史まで幅広く書いていきます。是非ご一読下さい。

New JAMの本棚-044 『小説日本芸譚』松本清張著・新潮文庫

2022年08月30日 | 日記

New JAMの本棚-044

 

『小説日本芸譚』松本清張著・新潮文庫

 

 

◎ 

松本清張という作家は私が好きな作家の一人で、

膨大な量と分野の本をかなり読んできました。

今でも何十冊か枕元に置いて拾い読みをしています。

その中でもこの本は特に好きです。

歴史上の人物を取り上げながら、

彼独特の視点で見事にフィクションに仕立て上げているのです。

私の連れ合いの父は朝日新聞社の小倉支店で一緒だったことがあり、

清張のサイン入り短編集が本棚の片隅に鎮座しています。

それは兎も角この本に収録されている10人の芸術家(芸術新潮には12人掲載)は

皆一芸に秀でた人物であるのですが、

彼等の資料を読み通すだけでも気が遠くなる作業だったと思います。

その上でそれぞれの業績について自分の視点を明確にする、

という作業はもう想像を絶するものです。

小説でありながら真実を語っているという錯覚をしてしまうほど。

あまりにも面白くて何度も読み直しています。


essay:ジュエリー小辞典[初級講座]・知っているようで知らないジュエリーや宝石の事

2022年08月28日 | 日記

essay:ジュエリー小辞典[初級講座]




知っているようで知らないジュエリーや宝石の事



私がミキモト時代の1976年に、ムサ美の1年先輩のK氏とコピーライターのO氏の3人、そしてその当時GIAの鑑別資格を持っている商品部の方達と、知恵を出し合って一般客向けの小冊子「ジュエリー小辞典」を作成しました。
この小冊子はその後何度か新しいものを作る計画はあったようですが、今日に至るまで作られていないようです。
このエッセイは、私なりの視点で小冊子の文章に加筆修正を加えて新たに書き起こしたもので、もしお読み頂いた人たちの参考になれば嬉しいです。
ジュエリーや宝石の取り扱いについては今更、という気もしないではありませんが、街中で見ていると意外と基本ができていないことに出会うことがあります。
小売店などでも販売する時点や、販売した後のメンテナンスにあまり力を入れていないような気もします。
既にジュエリーや宝石のヘビーユーザーの方にとっては「なんだそんなことか・・」と言った内容ですが、そして時代が違うと言われればそれまでですが、ジュエリーや宝石の取り扱いの基本は何十年経っても変わらない、と思います。

*このエッセイについてご質問、ご叱責などありましたら、jewellerystory_0512@yhoo.co.jp
迄お気軽にお寄せください。毎週月曜日に掲載して参ります。


宝石たちの1000物語[番外編] 深夜12時開店のBAR・第12話 [ロシアンスフェーン]

2022年08月28日 | 日記

宝石たちの1000物語[番外編]

深夜12時開店のBAR

 

 

フツーの何気ない日常の会話から奥深いジュエリーや宝石の世界に踏み込んでいく。男と女、女と女、そして男と男。舞台は新大久保の裏ぶれた片隅にある一軒の酒場。客が10人も入れば一杯になってしまう小さな酒場。深夜零時きっかりに開店し客がいれば何時までも付き合い、客が帰れば閉店する。そんな店にようこそ、いらっしゃい。今宵もまた・・・・。

第12話

[ロシアンスフェーン]

朝からシトシトと小雨がそぼ降る一日だった。

夜になってもいっこうに止まない。

だからといって激しく降る訳でもないのだ。

明け方の4時をまわった頃、ドアを押して入ってきた客がいた。

「いらっしゃい」

「ここまだいいですか」

「いいですよ気の済むまでいて下さって結構」

見ると歳の頃は30前後といったところ。

水商売風には見えない。

でもこの時間にこの辺をうろついているようにも見えない。

質素な身なりだがどこか上品だ。

「お腹空いちゃった、ビールと何か見繕って頂戴」

「判りました。ウチは冷蔵庫に入っているもので賄うくらいですが」

「そうね卵ある、それとトマト。一緒にいためてくれる。仕上げにごま油を一滴」

「中華風でいいんですね」

「さすがマスター、判りがいいわね」

「おだてても注文以外は何も出ませんよ。はいビール」

「アリガト」

「ところで外はまだ雨が降っていますか」

「そうね相変らずってところ」

このひとは一体どういう女性だろうか。

一番判り難いタイプの女性である事には違いない。

「マスター、私が何者か思案しているでしょう」

「いやなにその・・」

図星を指されて、料理に取りかかる振りをした。

でもビールを注ぐ仕草はあきらかに玄人だ。

しかし彼女何とも不思議な雰囲気がある。

「ところでマスター最近この店に、優男風のひょろっとした男が来なかった?」

「いえそんな感じの男性は見かけませんでしたよ」

「そぉ、確かこの店に入るのをみたって人がいたのよ」

「誰が云ったか、私は知りません」

「それならいいのよ」話はそこで途切れた。

「へいっお待ちどうさま」

といって料理を渡しながら何気なく耳元に目がいった。

マスターの顔に動揺が走った。

その女の耳元に垂れ下がっている、ロシアンスフェーンのイヤリングには確かに見覚えがある。

しかし何処でみたのかどうしても思いだせないのだ。

女はそんなことには一向に無頓着で瞬く間にビールと料理を平らげた。

「ああっ美味しかったわ、マスターご馳走さま」

その女が帰ったあとも、マスターはしきりに考え込んでいた。

どうやらマスターの前歴に、宝石関連の仕事、という項目が入ってくだろう。

商売柄女の客は多いから、彼女たちがつけているジュエリーや宝石のトラブルについて、いとも簡単に解決してしまう手際の良さ。

かなりのキャリアを積んでいないとああはいかない。

それを隠しているようにも見受けられるし、そうでもないように感じる。

マスターの前歴は依然として不詳だ。


少しずつゆっくりと 『ジュエリーの歴史6000年』を学ぼう 『エジプト文明とジュエリー』第5回

2022年08月27日 | 日記

少しずつゆっくりと

『ジュエリーの歴史6000年』を学ぼう

 

『エジプト文明とジュエリー』第5回

 

 

 

◎ 

19王朝のラメセス2世は67年の在位中常時500人を越える女性を後宮囲い、

100人を超える子をなし、7人の女性を妃にしたと云われていますが、

その中にクレオパトラやネフェルティティと並び歴史上の美女とされているネフェルタリがいました。

彼女はヌビアの王女アイーダの生まれ変わりと云われています。

ネフェルタリを祀るアブシンベル小神殿が

ヌビアの方角を向いているというのも頷けますし、

このような伝説もヌビアが金の豊富な産出国であったが故の事かも知れません。

その後アッシリアが侵入し、紀元前525年にペルシアのカンビュセス王によって征服され、エジプトはペルシアの属州になりますが、

それまでの2000年間エジプトの美術様式にほとんど変化が見られないというのも大きな特徴です。

そして私たちが通常使っているブローチを除いた装身具類はすべてこの2000年間に形成されているのです。

エジプトの装身具で特徴的なのは、他のオリエント諸国が殆どゴールド、或は色石を使っても単色で使っているのに比べ、

実に多彩複雑に色石を組み合わせ、豪華に仕上げている事です。

ここまで色彩豊かな装身具は現代に通じるものがあり、私たちが大いに参考にする必要がありそうです。


ますぶちStyle・パイプの煙 悠々として急げno.222 『人生はこれからだ・・・vol.17』

2022年08月26日 | 日記

ますぶちStyle・パイプの煙

悠々として急げno.222

 

『人生はこれからだ・・・vol.17』

 

 

 

これらの本は『JAMの本棚』でも紹介していますが、ふとした時に本棚から引き出してページをパラパラとめくります。

彼ら先輩も悩みは同じであり、実践していることも私たちと変わりはありません。

でもちょっとだけ言っていることの重みが違うかなあ。

私も今年後期高齢者の仲間入りをしました。

先日鳥羽のミキモト真珠島で6年振りのセミナーを行いましたが、たった2日間の旅が精神的なだるさを伴い、1ヶ月が経つのにもう一つパワーが出ません。

定期的に行う予定の「ジュエリーの歴史セミナー」もテーマは決まっていますが、日程調整の段階で戸惑っています。

元々ズボラな性格ですから、掛け声は勇ましいのですが、いざ決定という段階で躊躇してしまっています。

まぁしかし、人間年老いてくると色気は無くなるし、やりたいことの10分の1もできなくなってくる。

外に出掛けるのが億劫になる、と言った具合にどうにもならない時があります。

そんな時は焦らず、じっくりと。

おっとこれはジュエリーの歴史セミナーのキャッチフレーズでした(笑)。

昔で言えばとっくに隠居の身分ですから、老後の嗜みを淡々とやっていけるだけでも有難いと思わなければいけません。

人並みの生活を維持しながら、自分の好きなことが好きなだけやれる、これって本当に幸せではないでしょうか。