南会津の前沢を訪れた。ここではL字形の曲り家が集まって独特の景観をつくっている。明治に大火があって集落が焼けたとき、新潟から来た大工の集団がこうした意匠を取り入れたのだという。
国民の多くがサラリーマン化する前の日本の住宅は作業場や厩を兼ねた併用住宅だった。養蚕がカネになれば蚕部屋をつくり、藍ならば瓶を土間に埋めた。木工製品ならば土間にムシロを敷いて加工作業をしただろう。刃物や農作業や運搬に馬が必要ならば厩をつくった。
南会津は豪雪地帯である。外に牛馬を出しておくのはかわいそうだという優しい気持ちから、ここの住民は牛馬を曲り家のなかに入れた。もちろん今ではそうした家は残っていないだろう。かつての厩も作業場もリフォームされて人の部屋になっているだろう。
住宅は時代とともに求められるものが変わり、リフォームによって形を変えていく。しかし長持ちする住宅ならば、何代も前からの思い出や生活のあとがずっと遺されているのである。そういう長持ちする住宅を、いいなあと私はおもうのである。
南会津町HPより
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