
紀尾井/明日への扉14/小川恭子(ヴァイオリン)
Kioi Up & Coming Artist 14/Kyoko Ogawa, Violin
2016年12月6日(火)19:00~ 紀尾井ホール 1階 1列 11番 2,000(セット券)
ヴァイオリン:小川恭子
ビアノ:江口 玲
【曲目】
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品100
J.S.バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004より)
ラヴェル:ツィガーヌ
プロコフィエフ:5つのメロディ 作品35bis
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18
《アンコール》
ブラームス:F.A.E.ソナタより「スケルツォ」
パガニーニ:カンタービレ ニ長調 作品17
このところ公私にわたって少々忙しく、かといってコンサートの数はあまり減っていないので・・・・ブログで詳細なレビューほ書く時間がないのが現状。従って、いつものように個々の曲目について詳細に述べるのは、時間が許してくれそうもない。だから、大変申し訳ないことだが、ごくごく簡単に、コンサートを概観するに留めたい。
紀尾井ホールが主催する「明日への扉」シリーズは、若手の有望な音楽家に一級のホールでリサイタルを開くというチャンスを与えるものだ。これまでも多くの優秀な演奏家達が通って来た道である。
今日の主役はヴァイオリンの小川恭子さん。昨年2015年の「第84回 日本音楽コンクール」のヴァイオリン部門で第1位となり、同時に岩谷賞(聴衆賞)、レウカディア賞、鷲見賞、黒柳賞、E.ナカミチ賞、全部門の最優秀賞である増沢賞を総ナメしたのは記憶に新しい。その前年は4位入賞に留まったので、確実に進化しているのは間違いない。今年にはロシアの「ノヴォシビルスク国際コンクール」でも優勝している。
本人が自由に曲目を選んだというプログラムは、ヴァイオリン音楽を好きな人なら誰でも知っている名曲ばかりだった。アンコールの2曲を含めても、テーマ性はなく、あくまで「好きな曲」を集めました、という感じである。しかも技巧・解釈・表現・感性など、どの方向から見てもかなりの本格的な曲が揃っている。ある意味では、自信の表れと取ることもできそうである。
さて演奏の方はというと、スコアを真摯に読み解き、全般的に丁寧な演奏で端正に仕上げていた。良い意味で優等生的な演奏である。あまり個性的ではないのかもしれないが、その生真面目ともいえる演奏スタイルには好感が持てる。一方で、日本音楽コンクールで優勝した時のような、全身全霊で打ち込んだような発揮度はあまり感じられなかった。もちろんコンクールの時のように主張ばかりが強い演奏というのも、聴いていてあまり心が安まることがないので、今日の小川さんのような優しいというか、癒されるというか、そういったタイプの演奏もまたひとつの方向性としては良いものである。端正、と書いたが、別の見方をすると、ダイナミックレンジがやや狭く、音量も大きい方ではない。だからアグレッシブで発揮度の高い演奏を好む聴き手の方々にとっては、少々もの足りなく感じたかもしれない。確かに昨年の日コンの時はもっと主張が強かったように思う。ピアノの江口玲さんも、ダイナミックレンジのあまり広くない小川さんの演奏に合わせて、抑制的で節度を保った演奏に終始していた。今日は紀尾井ホールという中規模のコンサートホールでのリサイタルであったわけだが、全体の端正なまとまり方は、どちらかといえばサロン向けのイメージであったかも。小さめのサロンで演奏者を囲んで室内楽としての演奏であったなら、非常に心地よい音楽であっただろう。大きなコンサートホールではもう少しテンションを上げた方が、聴き手に情感が伝わりやすいような気がした。演奏会場によって、もっと大胆に演奏スタイルを変えていくことなども今後の課題かもしれない。

今日は初の本格的なリサイタルということもあって、緊張感もあったのかもしれない。また桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業して現在は同研究科に籍を置いて研鑽中とのことで、演奏活動の他、けっこう忙しいらしく、準備時間があまりなかったようにも思えた。もっともっと弾き込んで、曲の持つイメージを大きく膨らませて欲しいところだ。もっとも、例えばシュトラウスのヴァイオリン・ソナタは私の最も好きな曲のひとつでもあるので、誰が演奏したとしても採点が厳しく(?)なってしまいがち。その辺を割り引いて考えれば、もっと素晴らしい演奏ができる実力があることは間違いないので、今後の演奏にも目を光らせていきたいと思う。
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Kioi Up & Coming Artist 14/Kyoko Ogawa, Violin
2016年12月6日(火)19:00~ 紀尾井ホール 1階 1列 11番 2,000(セット券)
ヴァイオリン:小川恭子
ビアノ:江口 玲
【曲目】
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品100
J.S.バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004より)
ラヴェル:ツィガーヌ
プロコフィエフ:5つのメロディ 作品35bis
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18
《アンコール》
ブラームス:F.A.E.ソナタより「スケルツォ」
パガニーニ:カンタービレ ニ長調 作品17
このところ公私にわたって少々忙しく、かといってコンサートの数はあまり減っていないので・・・・ブログで詳細なレビューほ書く時間がないのが現状。従って、いつものように個々の曲目について詳細に述べるのは、時間が許してくれそうもない。だから、大変申し訳ないことだが、ごくごく簡単に、コンサートを概観するに留めたい。
紀尾井ホールが主催する「明日への扉」シリーズは、若手の有望な音楽家に一級のホールでリサイタルを開くというチャンスを与えるものだ。これまでも多くの優秀な演奏家達が通って来た道である。
今日の主役はヴァイオリンの小川恭子さん。昨年2015年の「第84回 日本音楽コンクール」のヴァイオリン部門で第1位となり、同時に岩谷賞(聴衆賞)、レウカディア賞、鷲見賞、黒柳賞、E.ナカミチ賞、全部門の最優秀賞である増沢賞を総ナメしたのは記憶に新しい。その前年は4位入賞に留まったので、確実に進化しているのは間違いない。今年にはロシアの「ノヴォシビルスク国際コンクール」でも優勝している。
本人が自由に曲目を選んだというプログラムは、ヴァイオリン音楽を好きな人なら誰でも知っている名曲ばかりだった。アンコールの2曲を含めても、テーマ性はなく、あくまで「好きな曲」を集めました、という感じである。しかも技巧・解釈・表現・感性など、どの方向から見てもかなりの本格的な曲が揃っている。ある意味では、自信の表れと取ることもできそうである。
さて演奏の方はというと、スコアを真摯に読み解き、全般的に丁寧な演奏で端正に仕上げていた。良い意味で優等生的な演奏である。あまり個性的ではないのかもしれないが、その生真面目ともいえる演奏スタイルには好感が持てる。一方で、日本音楽コンクールで優勝した時のような、全身全霊で打ち込んだような発揮度はあまり感じられなかった。もちろんコンクールの時のように主張ばかりが強い演奏というのも、聴いていてあまり心が安まることがないので、今日の小川さんのような優しいというか、癒されるというか、そういったタイプの演奏もまたひとつの方向性としては良いものである。端正、と書いたが、別の見方をすると、ダイナミックレンジがやや狭く、音量も大きい方ではない。だからアグレッシブで発揮度の高い演奏を好む聴き手の方々にとっては、少々もの足りなく感じたかもしれない。確かに昨年の日コンの時はもっと主張が強かったように思う。ピアノの江口玲さんも、ダイナミックレンジのあまり広くない小川さんの演奏に合わせて、抑制的で節度を保った演奏に終始していた。今日は紀尾井ホールという中規模のコンサートホールでのリサイタルであったわけだが、全体の端正なまとまり方は、どちらかといえばサロン向けのイメージであったかも。小さめのサロンで演奏者を囲んで室内楽としての演奏であったなら、非常に心地よい音楽であっただろう。大きなコンサートホールではもう少しテンションを上げた方が、聴き手に情感が伝わりやすいような気がした。演奏会場によって、もっと大胆に演奏スタイルを変えていくことなども今後の課題かもしれない。

今日は初の本格的なリサイタルということもあって、緊張感もあったのかもしれない。また桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業して現在は同研究科に籍を置いて研鑽中とのことで、演奏活動の他、けっこう忙しいらしく、準備時間があまりなかったようにも思えた。もっともっと弾き込んで、曲の持つイメージを大きく膨らませて欲しいところだ。もっとも、例えばシュトラウスのヴァイオリン・ソナタは私の最も好きな曲のひとつでもあるので、誰が演奏したとしても採点が厳しく(?)なってしまいがち。その辺を割り引いて考えれば、もっと素晴らしい演奏ができる実力があることは間違いないので、今後の演奏にも目を光らせていきたいと思う。
