
東京フィルハーモニー交響楽団 第108回 東京オペラシティ定期シリーズ
2017年3月13日(月)19:00〜 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 3列 17番 5,355円(会員割引)
指 揮:アンドレア・バッティストーニ
ピアノ:松田華音*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:三浦章宏
【曲目】
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18*
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
東京フィルハーモニー交響楽団の「第108回 東京オペラシティ定期シリーズ」を聴く。2016/2017シーズンも今回で最後となる。今月のマエストロは、東京フィル首席指揮者のアンドレア・バッティストーニさん。昨日3/12にオーチャードホールで本日と同プログラムを振っている。
ゲスト・ソリストは、ただ今売り出し中の松田華音さん。若干20歳にして、東京フィルの定期シリーズのソリストに抜擢されることになった。

プログラムの前半は、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。華音さんは小柄でとても可愛らしく、見た目はどこかのお嬢様かお姫様のようだが、ピアニズムはけっこう骨太で力強い。幼少の頃からのロシア育ちということで、毎日聴いて育った音楽が小さな身体から溢れ出している。もちろん技巧的にもかなり高度なレベルのものを持っている。押し出しが強いだけでなく、弱音時や、主題がオーケストラ側にあるときの伴奏ピアノなどの細やかなニュアンスに彩られたフレージングなどにも、非凡なものを感じる。
抒情的で感傷的なラフマニノフならではのロマンティックな世界の描き方は、1本芯が通っているような剛直さを内に隠しつつ、旋律を艶めかしく歌わせる。こうした雰囲気はロシアのピアニズムを継承しているといえる。同時に主題を弾くときの自由度というか、微妙なテンポの揺らぎや右手と左手のズレなどが表現力に深みを出し、旋律を豊かに歌わせている。
また、とくに今日はピアノの真下で聴いていたので、音質やオーケストラのバランスについてはコメントを控えるが、オーケストラの影に隠れて普段あまりよくは聞こえないような部分でも、彼女のピアノは力感とニュアンスによるしっかりとした造形を持っていることは分かる。
とにかく、華音さんについては、見た目の雰囲気に騙されては(?)いけない。若干20歳。でもアイドル系のピアニストなんかじゃない、ロシアのピアニズムを正統に継承する本格派なのである。

後半はチャイコフスキーの交響曲「悲愴」。コチラの方はもうバッティストーニさんが本領発揮の爆演である。イタリア人の指揮者が振るチャイコフスキーってどうなのだろうと思われがち。確かに、ロシアの荒涼たる大地といった空気感のようなものは・・・・あまり感じられない。音楽全体がもっと人間的で、熱い血がたぎっているような情感が前面に出ている演奏である。
どこからそんな感じが生まれてくるのかと思えば、それはやはりオペラだろう。バッティストーニさんの指揮では、ひとつひとつの主題やフレーズが、人間が呼吸しているような歌わせ方をする。押しては引き、引いては押す感じ。旋律が息遣いを感じるように歌う。だから人間味に彩られてくるのだ。純音楽の最終総合型である交響曲という分野において、器楽的な緻密さや造形を求めず、人間の情念・情感を熱いタッチで描き出す。その描き方は濃厚で、感情をオモテに出す国の音楽になっていた。
同時にいえることは東京フィルの演奏の実に素晴らしいこと。オペラをやらせたら日本で一番のオーケストラならではの演奏だ。イタリア・オペラの歌手の歌唱に合わせた対応力のように、バッティストーニさんの歌謡的な旋律やフレーズの描き方に見事に対応している。もともと持っている濃厚な音色の管楽器群と透明なアンサンブルの弦楽のバランスの良さがあるが、バッティストーニさんの「濃い」指揮にも「濃い」演奏で応えている。
というわけで、バッティストーニさんの「悲愴」はあまりロシアっぽくはないが、情熱的で濃い色彩感に彩られていて(イタリアっぽい?)、これはこれで素晴らしい。かなりBravo!な演奏だと思った。
やはりバッティストーニさんはオペラの人。彼が振るとロシアの音楽もイタリア・オペラのように歌い出す。ピアニスト出身のロシア人、ミハイル・プレトニョフさん(特別客演指揮者)の器楽的でクールな指揮とはまったく性格が異なるが、どちらも東京フィルから素晴らしい演奏を引き出すことに変わりはない。次シーズン(2017/2018シーズン)は5月からはじまるが、サントリー定期、東京オペラシティ定期、そしてオーチャード定期の3つのシリーズはバッティストーニさんとプレトニョフさん、それに名誉音楽監督のチョン・ミョンフンさんの3人でほとんど大部分の公演を行う。この3人の時の東京フィルはいつもスゴイ。来期も目が離せなくなりそうだ。
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2017年3月13日(月)19:00〜 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 3列 17番 5,355円(会員割引)
指 揮:アンドレア・バッティストーニ
ピアノ:松田華音*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:三浦章宏
【曲目】
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18*
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
東京フィルハーモニー交響楽団の「第108回 東京オペラシティ定期シリーズ」を聴く。2016/2017シーズンも今回で最後となる。今月のマエストロは、東京フィル首席指揮者のアンドレア・バッティストーニさん。昨日3/12にオーチャードホールで本日と同プログラムを振っている。
ゲスト・ソリストは、ただ今売り出し中の松田華音さん。若干20歳にして、東京フィルの定期シリーズのソリストに抜擢されることになった。

プログラムの前半は、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」。華音さんは小柄でとても可愛らしく、見た目はどこかのお嬢様かお姫様のようだが、ピアニズムはけっこう骨太で力強い。幼少の頃からのロシア育ちということで、毎日聴いて育った音楽が小さな身体から溢れ出している。もちろん技巧的にもかなり高度なレベルのものを持っている。押し出しが強いだけでなく、弱音時や、主題がオーケストラ側にあるときの伴奏ピアノなどの細やかなニュアンスに彩られたフレージングなどにも、非凡なものを感じる。
抒情的で感傷的なラフマニノフならではのロマンティックな世界の描き方は、1本芯が通っているような剛直さを内に隠しつつ、旋律を艶めかしく歌わせる。こうした雰囲気はロシアのピアニズムを継承しているといえる。同時に主題を弾くときの自由度というか、微妙なテンポの揺らぎや右手と左手のズレなどが表現力に深みを出し、旋律を豊かに歌わせている。
また、とくに今日はピアノの真下で聴いていたので、音質やオーケストラのバランスについてはコメントを控えるが、オーケストラの影に隠れて普段あまりよくは聞こえないような部分でも、彼女のピアノは力感とニュアンスによるしっかりとした造形を持っていることは分かる。
とにかく、華音さんについては、見た目の雰囲気に騙されては(?)いけない。若干20歳。でもアイドル系のピアニストなんかじゃない、ロシアのピアニズムを正統に継承する本格派なのである。

後半はチャイコフスキーの交響曲「悲愴」。コチラの方はもうバッティストーニさんが本領発揮の爆演である。イタリア人の指揮者が振るチャイコフスキーってどうなのだろうと思われがち。確かに、ロシアの荒涼たる大地といった空気感のようなものは・・・・あまり感じられない。音楽全体がもっと人間的で、熱い血がたぎっているような情感が前面に出ている演奏である。
どこからそんな感じが生まれてくるのかと思えば、それはやはりオペラだろう。バッティストーニさんの指揮では、ひとつひとつの主題やフレーズが、人間が呼吸しているような歌わせ方をする。押しては引き、引いては押す感じ。旋律が息遣いを感じるように歌う。だから人間味に彩られてくるのだ。純音楽の最終総合型である交響曲という分野において、器楽的な緻密さや造形を求めず、人間の情念・情感を熱いタッチで描き出す。その描き方は濃厚で、感情をオモテに出す国の音楽になっていた。
同時にいえることは東京フィルの演奏の実に素晴らしいこと。オペラをやらせたら日本で一番のオーケストラならではの演奏だ。イタリア・オペラの歌手の歌唱に合わせた対応力のように、バッティストーニさんの歌謡的な旋律やフレーズの描き方に見事に対応している。もともと持っている濃厚な音色の管楽器群と透明なアンサンブルの弦楽のバランスの良さがあるが、バッティストーニさんの「濃い」指揮にも「濃い」演奏で応えている。
というわけで、バッティストーニさんの「悲愴」はあまりロシアっぽくはないが、情熱的で濃い色彩感に彩られていて(イタリアっぽい?)、これはこれで素晴らしい。かなりBravo!な演奏だと思った。
やはりバッティストーニさんはオペラの人。彼が振るとロシアの音楽もイタリア・オペラのように歌い出す。ピアニスト出身のロシア人、ミハイル・プレトニョフさん(特別客演指揮者)の器楽的でクールな指揮とはまったく性格が異なるが、どちらも東京フィルから素晴らしい演奏を引き出すことに変わりはない。次シーズン(2017/2018シーズン)は5月からはじまるが、サントリー定期、東京オペラシティ定期、そしてオーチャード定期の3つのシリーズはバッティストーニさんとプレトニョフさん、それに名誉音楽監督のチョン・ミョンフンさんの3人でほとんど大部分の公演を行う。この3人の時の東京フィルはいつもスゴイ。来期も目が離せなくなりそうだ。

この公演、私も参りました。
松田さんは期待通りの力強くかつしなやかな音で、おっしゃるとおり、ロシア・ピアニズムを感じさせる堂々たる演奏でしたね。
冒頭部分をアルペジオ風に弾いたのが印象的で、ラフマニノフによくマッチしていたと思います。
昨年暮れに読響とチャイコのコンチェルトを弾かれていましたが、これもオケに負けない非常に立派な演奏でした。
はやくコンチェルトの録音も聴いてみたいです。
一方の悲愴ですが、バッティストーニさん、これはちょっとやり過ぎな感じで、若いと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、悲愴はもう少し清らかな?曲のような気がします。
とはいえ、彼のありあまる情熱と才能がいかんなく発揮された一夜だったと思います。
今後も大いに期待、ですね。
いつもありがとうございます。
華音さんの読響とのチャイコフスキーは先日「読響シンフォニックライブ」で放送がありましたが、コバケンさんのテンポの遅さにピアノが足を引っ張られているように感じました。その点、バッティストーニさんの方が溌剌としていて、さらに抒情的に感じました。
「悲愴」の方のあの濃厚な感じはバッティストーニさんの個性がギラギラしていましたから、多分他のどんな曲でもあんな感じになるんじゃないかな、って感じます。
こういう個性的な演奏は好みの別れる所かもしれませんが、私は好きですね。
今後ともよろしくお願いいたします。