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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/21(木)東京フィル/オペラシティ定期/森麻季を迎えて井上道義のマーラー交響曲第4番

2016年01月21日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団/第98回東京オペラシティ定期シリーズ

2016年1月21日(木)19:00~ 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 4列(2列目)14番 5,355円(会員割引)
指 揮:井上道義
ソプラノ:森 麻季*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:三浦章宏
【曲目】
モーツァルト:交響曲 第33番 変ロ長調 K.319
マーラー:交響曲 第4番 ト長調*

 東京フィルハーモニー交響楽団の定期シリーズは年間8回なので、けっこう間が空いてしまうことがある。前回は2015年10月だったので、3ヶ月ぶりのオペラシティ定期となった。今回の指揮者は、井上道義さん。今年70歳になる。一昨年表記で休養した時期があったが、今はすっかり元気になり、溌剌とした指揮ぶりを見せてくれたことは、嬉しい限りである。

 前半はモーツァルトの「交響曲 第33番」。編成をぐっと小さくして、指揮台も置かずに室内オーケストラ風の演奏となった。この曲では、オーボエ、ファゴット、ホルンが各2と弦楽5部のみである。井上さんの指揮は、テンポ感にキレ味があり、瞬発力があってメリハリが効いている。だから、演奏は古典的な優雅さが漂うものではなく 、言ってみれば現代的な瑞々しいものであった。第1楽章は躍動的で疾走感があり若々しい。第2楽章は緩徐楽章だがAndante modaratoのソナタ形式なので、それほど穏やかな雰囲気ではない。東京フィルのアンサンブルはとても美しいが、色彩的には濃厚なイメージで、抒情性が豊かであった。第3楽章はメヌエット。宮廷風の典雅な曲想というよりは、純音楽的な緊密なものだ。むしろトリオ部の方が優雅な曲想になる。やや速めのテンポで低弦を響かせるとけっこう重厚な音楽になる。第4楽章は軽快で楽しげな主題が弾む。井上さんのスピード感のあるリズム運びで、楽曲が明るく躍動的だ。オーボエとホルンが華やかな彩りを添えていた。薫風が吹き抜けるような、春めいた演奏であった。

 後半はマーラーの「交響曲 第4番」。ほぼ3管編成の管楽器群と多様な打楽器に16型の弦楽5部を加えると、東京オペラシティコンサートホールのステージはいっぱいになる。コンサートマスターの三浦章宏さんの前には第2楽章で使うスコルダトゥーラ(調弦が異なる)ヴァイオリンが置かれている。そのためかどうかは分からないが、第4楽章に登場するソプラノの森 麻季さんの立ち位置は指揮者の右側(上手側)であった。私の席位置は2列目でコンサートマスターの正面。通常ソリストの正面になるので、今日はちょっと残念だった。演奏の模様は正式に多チャンネルで録音していたので、後日、NHK-FMで放送があるのだろう。
 第1楽章はシャシシャンシャンという鈴の音で始まるちょっと不可思議な世界。井上さんの指揮では、歌謡的な主題を自然体で、比較的サラリと歌わせて行く。それでも東京フィルの濃厚なサウンドでは、十分に濃い演奏になる。澄んだ弦楽のアンサンブルや木管のねっとりした質感で描かれるマーラーの世界は意外に明るい。2度訪れるクライマックスではティンパニが炸裂すると幅の狭いこのホールでは音の行き場がなくなりエネルギーが溢れてしまう。手に持っていたコートなどが共振して震えていた。終盤のホルンのソロなどは艶のあるサウンドで上手い。
 第2楽章では三浦さんが2挺目のヴァイオリンで調子のはずれたような奇妙な旋律を、奇妙な音色で演奏されていく。大きな爆発を見ない楽章なので淡々と進んでいくが、各楽器に割り振られるパッセージがそれぞれ濃厚に歌われるので、全体の質感が高く、素晴らしい演奏が続いた。
 第3楽章は変奏曲形式の緩徐楽章。マーラー独特の突然現れる天国的な美しい旋律。ヴァイオリンが息を潜めるように切々と歌い、ヴィオラが内声部を厚く埋めていく。ゆったりとリズムを刻む低弦のピツィカートが落ち着いた土台を創り出している。それにしてもマーラーの生み出す緩徐楽章のヴァイオリンは何故これほど美しいのか。他の作曲家にはないものだ。変奏を続けて行く内に訪れるクライマックスではティンパニが轟き金管が炸裂する。あまりの音量差にちょっとたじろいでしまうくらいの迫力だ。最後はハープの分散和音に天国的なヴァイオリンの調べが乗り、極めて美しく優しい音に包まれると幸せ名気分になる。
 第4楽章が始まると、森 麻季さんが上手側の扉火に静々と登場して位置に付く。この最終楽章は交響曲というよりはオーケストラ伴奏の歌曲のように佇まいだ。途中に小さな山場があるだけで、オーケストラは最後まで爆発しないのである。麻季さんは完全暗譜で、いつもと同じ、天国的な清らかな声で、優しく歌う。この曲の場合は技巧的な歌唱ではなく表現力が重要になることはいうまでもないが、麻季さんの繊細でしっとりとしたニュアンスに満ちた歌唱は、なかなか見事なものであった。麻季さんがマーラーを歌うのを効いたのは初めてかもしれないが、アクのない清らかな歌唱であるがゆえに、マーラーの内面にくすぶっているものが浄化されていくような、清々しさを感じた。素敵な歌唱であった。同時に東京フィルのサウンドも濃厚だが澄んでいて、救われる思いであった。素晴らしい演奏だったと思う。

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