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ぐーたら専業主婦の引きこもりブログです(笑)

【宝塚】花總まりのカルメン ~激情より~

2011-09-28 20:09:30 | 宝塚歌劇
花總まりさん…
以下敬称略させて頂き「ハナちゃん」と呼びますが、宝塚歌劇始まって以来、
史上最長の、娘役トップ在歴12年

『あかねさす紫の花』の額田王、『JFK』のジャクリーヌや
『仮面のロマネスク』のメルトゥイユ侯爵夫人、『エリザベート』のエリザベート、
『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネット、
『鳳凰伝』のトゥーランドット、『ファントム』のクリスティーヌ、
『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラ…数々の大役を務めて来た彼女ですが、
この『カルメン』はそれまでの彼女の上品なイメージで出来るのか?と
一抹の不安がありましたが、それを見事にはねのける名演技でした
カルメンが憑依しているんじゃないかと思いました
それにハナちゃんのカルメンは、スペイン人に見える

春の祭りに現れた魅惑的なジプシー女達…その中でもハナちゃんカルメンの放つ
圧倒的な存在感…トップ娘役ここに有
『エリザベート』の次作でカルメン、よくぞここまで変貌を遂げたものだなと
当時ひたすら感嘆ナマでハナちゃんカルメンを観られて感動でした。
ホセに「燃え立つ火のような情熱的な目で男を誘う
あの女は何者なのだ。近付いたら火傷する」と言わしめるほどの魔性
ホセに連行される時、ホセを誘惑して何とか逃げようとするロープの振付は神
手を拘束されているカルメンの方がホセを翻弄。何か企んでいそうな笑みがまた魅力


見る者を魅了せずにはいられない渾身のフラメンコ。クラブリーリャス・パスティアにて。
ハナちゃんダンス苦手なのに頑張ったんだろうなぁ…。振付はスペイン舞踊家の蘭このみ氏。
確か「スターの小部屋」ではこのフラメンコについて
「大変なことになってしまいました…」と呟いていたように記憶しています。
フラメンコギターの旋律も哀愁が漂っていて素敵です。

このフラメンコの後に闘牛士のエスカミリオに会うのですが、この時はまだ
ホセに夢中だったカルメンなので、エスカミリオに猛アタックされても、
「マタドール、カルメンは思い通りにはなりません」と軽くあしらい、
ちょっぴり興味を持つ程度。
カードゲームでズルをしてエスカミリオに勝利するも、彼にはズルがバレていた。
カルメン;「初めてだわ。イカサマを見抜かれたのは」
メリメ;「そして、あなたという女もね…」
カルメン、意味深な笑みを浮かべ衣装を脱ぎながら(?)退場。これも演出??

そして、宝塚でここまでやって良いのか?と思ってしまう問題のラブシーン。
カルメンの激情がホセの運命を狂わせます。ホセとカルメンとのダンスでは
完全にカルメンがリードしていてホセを弄んでいるように見えるのは私だけ?
柴田侑宏氏の脚本がまた素晴らしい。
カルメン;「軍隊、連隊、兵隊!それが何よ!私と軍隊とどっちが大切なの!!?」から始まり、
「ふふ、やっぱりね、分かってたんだ。アタイとアンタは住む世界が違うんだって。
バカだったわ、アタイが。」
「アタイとアンタは、違う夢を見ているんだよ。」…火のように怒ったかと思えば
急に冷静に「犬と狼」論を展開。
そうかと思えば「規則、規律、そればっかり!!ねぇ、アンタに愛は必要ないの!?」
「アンタの愛をもっと感じていたいんだよ!!」と
子どものようにせがむ…なんと「押し」と「引き」が上手いことか…
こんな怒鳴り声も出せるのね、ハナちゃん…。


そしてカード占い。ホセとの未来を占っても大凶だったらしい。
最悪な未来を受け入れ、覚悟したカルメン。厳しい表情。

夫のガルシアが刑務所から帰って、ホセにはサラッと「アタイの亭主さ」とカミングアウト
ここ、何気に高度な演技力が必要とされると思うのです。
その後ホセに呼び止められ「どういうことだ、どういうつもりなんだ!!」と問いただされた時にも
「どうって?  …ああ、亭主だってこと?仕方ないだろ。向こうと先に会ったんだから。」の
セリフと表情がこれまた、この演技が最良だと思わせるぐらい絶妙なんです
「アンタとアタイの関係はまた別よ。アンタはアタイのたった一人の恋人それで不満なのかい?」と
笑顔で言うあたりがいかにもカルメンらしい。不満に決まってるやん…

そしてここはエスカミリオとの浮気場面→ホセ・メリメ・カルメン・ミカエラの四重奏へ。
「二人(ホセとカルメン本人)の運命はどうせ決まってるんだ。アタイはしたいようにする。
それがカルメンなの。」と悟りきったような表情。


浮気相手・闘牛士エスカミリオが敗北して死に、
ホセから「アメリカへ行こう。新しい土地へ行ってやり直そう」と言われるも、
「アタイは行かない」と頑として譲らないカルメン。ここのセリフがまた素晴らしいのです。
ホセ;「俺について来る気はないのか。お前は本当にあの闘牛に心を移してしまったのか!!」
カルメン;「一時(いっとき)はね。でも彼は死んだわ。恋は終わったのよ。」
ホセ;「じゃあなぜ俺について来れない。俺が行こうと言っているんだぞ!」
カルメン;「亭主の言いつけに従えって言うの!!!?」
ホセ;「……そうは言っていない。ただお前は俺から心が離れてしまったのか、と聞いているんだ」
カルメン;「……そうかも知れない。  …そうでないかも知れない。ただアタイはこうして
無理矢理連れて行かれるのが嫌なんだよ!!!!」

ホセは切ない表情で「♪すれ違う心 どうして戻せる?追いかけても追いかけても幻♪
♪俺のため投げ出した心 真実なの 偽りなの それとも
♪」と囁くように歌います。

辛そうに、懇願するように、また涙声の姿月さん演じるホセと、
これまた目に涙を浮かべて自由を叫ぶハナちゃんカルメン。この二人せめぎ合いの演技には
言葉を失ってしまいます。
カルメン;「カルメンはどこまでも自由なカルメンなんだ!!心までは縛られない。…殺されても」
ホセ;「♪お前にお前に魅せられて お前をお前を愛してる…!!♪」
ホセの訴えかけも虚しくカルメンは冷め切った表情でその場を離れようとし、
拳銃で打たれて花びらが散るように倒れ込み、最期に
「アタイの心は、空気のように自由でいたかったんだ…ホセ…」と言葉を残し絶命。

美しく妖艶で、素晴らしいカルメンでした。