サンデーたかひろ

絵描き・ながさわたかひろの制作実況 “from Machida, Tokyo”

『愛の菊地成孔』:TARO賞展出品作品

2023年01月15日 | 愛の肖像画

(2019年5月1日了)

 ジャズミュージシャンであり、文筆家でもある菊地成孔さんがパーソナリティを務めるラジオ番組
「菊地成孔の粋な夜電波」が終了して三ヶ月が過ぎ、三冊目となる番組本が刊行された2019年4月2日、
東京は渋谷区道玄坂の本屋“BOOK LAB TOKYO”でトーク&サイン会が催されました。

 トーク終了後、ドキドキのサイン会で、勇気を出して「描かせて下さい!」すると「いいですよ」とあっさり。ヤッタ〜!
じつは、その数日前、南青山のブルーノートで催された菊地さん率いる楽団〈ペペ・トルメント・アスカラール〉のライブでも
そのチャンスを窺っており、でもやっぱり、次もあると思うとダメで、怖気付いて「今日はヤメとこう」ってなる。
その点、サイン会は、たとえ数秒かもしれないけれど、そこに並びさえすれば1対1になれます。
そのとき一言伝えられれば、動き出すこともある。そこがいい。

 本の見返しを開き、今まさにサインしようとする菊地さんをパチリ。
カメラを構える僕を一瞥する菊地さんの姿をそのままに描きました。A3サイズのボードに白と黒のアクリル画です。

 さて、2019年5月1日、つまり令和初日。雨。描いた絵を抱えて菊地さんの個人事務所〈ビュロー菊地〉へ。
部屋に通され、待つこと1分かそこらで菊地さん登場。そのお姿を目にした瞬間、頭の中が真っ白に。
とにかく絵を渡すこと、あとは絵が語ってくれるはず…
が、「なんだ、ビックリ。もっとグリグリ描くのかと思ってた」と菊地さん。ガーン。
それって良い意味?それとも悪い意味?…もちろん後者でしょう。泣
サイン会の後、マネージャーさんにお渡しした拙著『に・褒められたくて』をご覧いただけたようで、
版画によるこのシリーズと今回のアクリル画では、そのアプローチが違うために戸惑われたご様子。
まずはそこのところ、きちんとお伝えしておくべきでした。

 新シリーズである『愛の肖像画』は、せっかく憧れの人と対面しても言葉が出ない、
ややもすると手汗ビッチョリ(なので握手できない)、そんな自分に帰りしな嫌気がさすことは分かっているのだから、
ここはどうにか頑張って、一枚でも写真を撮らせていただき、もう一度平常心で同じシチュエーションに挑むこと、
つまり描くこと、描きながら相手としっかり向き合い、
そうして再現した“その場面”を見てもらうことで自分の思いを伝えることを目指しています。
ダメッ子でも愛を謳う方法はあるし、それを汲んでもらうことだってできる。
そのことを証明するため、まずは恥をかいても、失敗しても、諦めず繰り返すこと。
その行為を第三者に共感をもって受けとめてもらうことができたとしたら、
そのとき初めて“作品”と呼べるものになるんじゃないか、と。

 手探りで模索中ゆえ、まだうまく伝わらないこともあれど、それは致し方なし。
何作かまとまったときにようやく見えてくるのかもしれないし、
そのとき晴れて笑い合えればいいじゃないかと自分を納得させ、
「この絵をどう受けとめてもらえたか、一言いただけませんか?」とだけお願いし、何か書き込んでもらう。
たとえどんな言葉であっても、憧れの菊地さんと、こうして交流できているということが嬉しい。

 最後にサインを入れてもらえたとき「アッ!」と声が出てしまい、なぜって大型書店に平積みされるサイン本の内、
何冊かに一冊は楷書で書かれた“あたり”が差し込まれていると聞いていたので。
アタフタしつつそのことを伝えると「あーなるほどね、いいよ、もちろん」と、右にもう一つ、
“あたり”サインを加えていただけたのでした。菊地さんの、2つのサインが並ぶ、令和初日に完成した『愛の菊地成孔』です。

菊地さん、作品がまとまったら、またじっくり見て下さい。
それまでに、いろいろ考えて実践していきますから〜!

 


 

第26回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展の出品作品です。
会期までに作品テキストを小出しに更新していきます。
会期は、2月18日(土)〜4月16日(日)
場所は、川崎市岡本太郎美術館
です。

ぜひ見に来て下さい!

 

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