サンデーたかひろ

絵描き・ながさわたかひろの制作実況 “from Machida, Tokyo”

カーライに褒められたくて・完結篇

2009年11月23日 | Dusan Kallay
板橋区立美術館で開催中の「ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち」展、開館30周年記念だそうで。

…早速、行ってきました。
だって、カーライさんとカミラさんのお二人が揃って来日される、っていうから!
あの、あまりに酷だったスロバキア旅行から持ち越しになっている「カーライに褒められたくて」を完結させるチャンスです。
http://blog.goo.ne.jp/boosawa/c/63e5f9172d43ee0be2ef1109234c25b7

美術館には前もって作品意図を説明しに伺いました。
「初日の講演会の後、時間があれば。お約束は出来ませんが…」という、お返事。
「分っかりました。宜しくお願いします!」と。うん、それで充分です。

で、当日。会期初日、講演会後。
ご自宅までお伺いし、作品も渡してる。ましてや事件(事故です!)まで起こしてる。
よもや「Who are you?」は無いだろうと思っていましたが、さにあらず。
どうやら覚えていないご様子…

あら~
正直、これは痛い。寂しい。泣きそうです。でも、でもね、(涙をのんで)そりゃそうかも。
カーライさんの下には、世界各地から僕みたいな輩が大勢訪れるんだろうし。そうだね。いちいち覚えちゃいられないよ。
いや、しかし一所懸命描いたんだけどなぁ…
自分の小ささ、知ったです…

で、コメントですけどね。
何だか無理言ってお願いした感じの中、

「Very nice」

ベリーナイス、と…
 
小っさくね…
フー、どうぞ、どうぞ、笑ってやって下さい。


「DEATH (TRUE) & REBIRTH」
カミラさんに至っては、「コメントはちょっと…」って。
いや、違うの。その場がサイン会みたいになっちゃってね。後ろに長い列がね、皆さん、図録もって。
そりゃね、そうですよ。
いつかの沙知代さんの言葉、「アンタ、あとにしなさい!」が思い出され…
http://blog.goo.ne.jp/boosawa/e/0edd83c6d553e902ae6e91056f6b6fd8

何れにせよ、作品は我の「想い」程にモノを語らず、ということでしょう。
甘いんだな。もっと精進しなきゃ。「褒められる」どころか、むしろ迷惑かけちゃってる。
いや、でも、しかし、言ったらコレは2年前の作品ですから。
紛失事件以来、傷心旅行から帰国して、じっくりと「素振り」を繰り返してきましたから。
最近の作品は、もうちょっと、少しは、いや分かんないけど…
その辺は、また改めてご報告しますが。
それにしても今回は、めげました…
フ~、ではまた。

(板橋の「ドゥシャン・カーライ展」とても良かったです。カーライさんの作品がこれだけまとまったかたちで紹介されるなんて!板橋区立美術館の方々に感謝しなきゃね。必見ですよ!)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新・カーライに褒められたくて

2008年05月25日 | Dusan Kallay
ヨルク・シュマイサーさんを描いた「DEATH & REBIRTH」は、3版刷りでした。
そのうちの1枚を使って、再度「死と新生」を描き直した修正版、それがこれです。

タイトルは、当然「DEATH (TRUE) & REBIRTH」。
一場の変わりに僕自身を入れ、カーライさんと、その奥さんのカミーラさんを描きました。
スロバキア訪問の顛末記です。

さて、これをどうしようか…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続続続続 カーライに褒められたくて

2008年03月22日 | Dusan Kallay
3/11(火)晴れの日の出来事。

こちらに来て3週間。結局、カーライさんには三度お会いする事になりました。
一度目は、ご自宅で。
二度目は、作品を無くしてしまった翌々日、大学にて。
そして今日。

二度目にお会いした際、「帰国する前にもう一度会いしましょう」と言っていただきました。
本当に嬉しかったです。
お会いしたところで「日本に帰って出直します」とぐらいしか言えないんです。
でも「この日」のために「何か手応えを得て戻ってこなければならないんだ」という思いで旅を続けることが出来ました。

こちらで協力していただいた石田さんを含め、迷惑も顧みず、随分とお世話になりました。
これは結局、作品で返すほかないことです。
流浪の旅はもう充分。お金も使い果たし、あとは帰って早く作品に取り掛からなきゃな…
早朝、オブソニー桟橋からドナウ川を見つめながら考えていました。

いつものように大統領官邸前で石田さんを待ち、改めて御挨拶。学校へ向かいました。
 お世話様です!の石田奈々子さんです。

こちらでは、決められた曜日に担当の先生が部屋を廻り、学生を個別に指導します。
学生はその時間に合わせて登校し、作品の進行状況や方向性、自身の考えなどを伝え、その場でディスカッションするという具合でしょうか。
共に作り上げていくという感じは、緊張感があってなかなかイイなぁって思いました。

ひとしきり学生の作品を見終えたカーライさんから話しかけられます。
「もう2週間経ってしまいましたか?」
「はい。何だかいろいろ勉強させてもらった2週間でした…
 フーッ」

そして、なんと!また!
一度無くしたのに、また! 
カーライさんから作品を手渡されたのです。

「どうぞ、このまま作り続けて下さい」
と言葉を掛けていただき、そしてちょっと考えてから、こう書き添えてくれました。

Drzim palce!! (両手を握ってるよ=成功を祈っています、という意味だそうです)

 (嗚呼、涙涙…)
今回の訪問の全てが詰まってます。


「カーライに褒められたくて」そんなわけでまだまだ続きます…
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続続続・カーライに褒められたくて

2008年03月16日 | Dusan Kallay
2/26(火)晴れ

ブラチスラヴァ美術大学へ向かう。学校は今日が長期の休み明け、初日とのこと。
さぞや、学生で溢れかえっているであろうと思いきや、さにあらず。
「こっちの人はノンビリしてるの」だそうで。

興味津々、版画工房を覗く。

作業してる人はまだ居なかった。残念。


そして、カーライさんに作品を紛失してしまったことを伝える。
心配させるだけなのではないかという向きもあるが、やはりこのまま帰るわけにもいかず。

「Oh!オーッ、オォォ…」

凄く心配されて…
肩を抱かれて「気の毒に 気の毒に」と何度も。
僕、36歳。情けない…
 ここに何しにきたのさ。
 迷惑掛けるために、わざわざ来たか…

「ここは日本じゃないんだよ」と言われました。
「おそらく見つかることはないでしょう」と。

それだけじゃない。
「私が受け取った作品を持ち帰りなさい」と、
「前と同じようにコメントを書きますよ」と、
「私には帰国してから、また送ってくれればいい」と。

…(泣)

でも、そりゃ、そりゃぁ出来ないぜ!ホントに何をしに来たのか分からなくなってしまう!

「これも運命です!試練です。僕は試されているんです。まだまだ足りないよオマエはということです!」

利己主義? 自分が楽になりたいだけじゃないのかって?
そうかもしれません。でもそう思うしかなかった。

ご自宅へ伺った際、カミーラさんと1枚づつ僕の絵を持って「写真を撮って」って、そして写した写真があります。
これを、これから描こうと思います。
それを再びお渡ししに、いいいぃ、行きますっ!
また来ます!
そういうことでしょう…

「カーライ先生、もう一度、もう一度来ても宜しいでしょうか?」
「もちろん!」

次回作、決定!

  カミーラさんの作品前にて


夕方、バスで(もう列車には乗らない!って決めて)プラハへ移動。
約5時間で途中一度だけ停車しました。その時行ったトイレでは、すでにスロバキアコルナ(SK)が使えなかった。
じゃぁ、ユーロは?って聞いたら、首を振られた。
「これしかないんだもん」と、SK硬貨を見せると一番大きな10SKを取られた。
「オイ!レートでいったら倍以上じゃないか」なんて言っても後の祭り。オバさん、笑ってたよ。
だいたいどこもかしこもお金をとるから嫌になる。
トイレの入り口には常にオバさんが待ってるんだ。用を足すにもお金が掛かるなんて…
揉まれてる揉まれてる。僕は今、大人の階段昇ってるんだ。そう言い聞かせるしかない。

夜遅く、プラハ到着。
バスターミナル付近のユースホステル「Apple」へ。 
6bedのドミトリーは、340チェココルナ(czk)。市民会館そばの一等地だもんね。
明日はもっと安いところを探そう…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続続・カーライに褒められたくて

2008年03月16日 | Dusan Kallay
2/21 にウィーン入りし、ベルヴェデーレ[接吻]とセセッシオン[ベートーヴェンフリーズ]を廻った後、
2/22 スロバキアの首都ブラチスラヴァへ向かいました。バスで1時間ぐらい。ウィーンからはとても近いです。
15時、大統領官邸前でブラチスラヴァ美術大学に在籍されている石田さんと待ち合わせ、いよいよドゥシャン・カーライ氏宅へ向かいました。
ブラチスラヴァの郊外にあるご自宅まで、客待ちしていたタクシーを利用したのですが、これがボッタくりだったみたいで。
(帰りにカーライさんに呼んでいただいた無線タクシーは、料金が半額以下の値段で済みましたから。まぁ、それはいいとして…)

タクシーから降りるとすぐに玄関のドアが開き、カーライさんが奥さんであり画家のカミーラさんと共に出迎えてくれました。
温かい心遣い。これだけでもう、もう!

カーライさんのご自宅は玄関を入った瞬間から、お二人の世界へと誘われます。
壁には二人の小品が所狭しと掛けられており、訪問者はススーっとその世界に引き込まれていきます。
濃厚な展示空間のために、暫し見入ってしまい、もうすでにフラフラです。
そうした中、リビングへ通されたのですが、今度はドローイングや油彩も含めた大きめの作品が並んでおり、
そこにいると、まるで作品に包まれている感じなんです。何だか目の前がグワングワン揺れてきました。
…幸せです。絵にはそういう力(効力)があるんだな。

階上のお二人のアトリエにも案内していただき(描きかけの新作を版の状態で見てしまう…ウゥ)、
お二人の作品世界に着いて語らい(と言ってもこれは通訳してくれた石田さんのお陰、感謝感謝)、再びリビングへ。
そして、いよいよ僕の作品をお渡します。
(このために来たんだもんね…)
カルトンから作品を取り出すその手が震えます。
まずは「ちてしゃん」、そして「カーライに褒められたくて」の順に。

カーライさんの作品を見たあとです。「ホンモノ」に囲まれた、その部屋のド真ん中です!
でも臆することはないんだぜ、オレよ。
だってこの絵は、自分の精一杯を注ぎ込んだものなんだから。自分にそう言い聞かせました。

じっくり、そしてしっかりと、時間を掛けて、隅々まで、ひとつひとつ確認しながら見ていかれます。
最後は、ルーペまでも持ち出して…
 (ドキドキ、バクバク…)



やがて、硬直した僕を笑顔で見やり、手を差し伸べられ…
「excellent!」

…聞き違いか? 今、確かそう言ってなかったか?
英語で言うとは思えないが、まぁいい、この際だ。好きに解釈させてくれ。

エクセレント! エクセレント! エ~クセ レンットゥ ナガサワ!

褒めていただけて、ますよね?


サインとそしてその横に「君に最高の評価を」とAの文字を書き加えてくれました。
感激です!
学生時代、「優」とかA評価とは、あまりイイお付き合いが出来ませんでしたからね、ええ。


…と、夢のような至福の時間はすぐに過ぎ去り、気付けば随分と長居をしてしまいました。
帰り際カーライさんから僕へ「プレゼントがあります」と…、なんですと!ありますと、ととっとは!

なんとアトリエに置いてあった新作の銅版画を…頂戴してしまいました!
うおっ!
嗚呼! ああっ!アアア… 何という!

Mr.カーライ、そしてMrs.カミーラ、ありがとうございます。





そう。このまますぐに帰国すれば、万歳三唱で終われたでしょう…

翌日の夜、プラハ行きの夜行列車に乗るため、ブラティスラヴァ中央駅で列車の到着を待っていました。
時刻は深夜0時、ちょっと疲れていたのかもしれません…

あれ? カバンがない

僕の、そしてカーライさんから頂いた作品を入れた「黒いカバン」。
「シュヴァンクマイエルに褒められたくて」が入った「黒いカバン」。
全ての作品が入った「黒いカバン」が消えてしまいました。

えっ? 何処へ? ホント、どごえ~!

…その日のプラハ行きは取りやめ。
何だか事の次第をよく理解できず、駅構内の交番に行けどなかなか取り合ってもらえず、そうこうするうちに夜が明けて
警官に言われるまま、大使館へ電話すれど、
「現金、パスポートでない限り、こちらではどうすることもできない」と、警察署へ行くように即され…
でも説明されたところに行けども、その警察署がどうにもこうにも見つからず…
街中ぐるぐる廻って、やっとの思いで見つけた小さな交番にすがるしかなく、しかしそこでは「駅警察へ行け」と…
「オイ!駅の交番で大使館へ行けって言われて、その大使館で警察行けって言うから、ココに来てるんじゃないか」って!
「ヤパンを馬鹿にすんなよ」って!

しかし「大丈夫だ。今、連絡したから駅へ向かえ」って、そう言われ…
(何だ? オレ、何かを試されてでもいるのだろうか?)
駅に戻ったら、今度は確かに取り合ってくれて、紛失届けを作成、ただそれだけなんですが…

結局、「黒いカバン」が戻ることはなく、
とにかく、事態が飲み込めてくると共に、目の前が真っ暗になってきたのでした。

24日まで、4日間の出来事です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする