サンデーたかひろ

絵描き・ながさわたかひろの制作実況 “from Machida, Tokyo”

『都築さんに褒められたくて』その3

2016年07月17日 | 都築響一

7月1日、金曜日のこと。
渋谷・アツコバルーで開催中の『神は局部に宿る』都築響一 presents エロトピア・ジャパン展、
その地下のライブハウス・サラヴァ東京 に参じました。( ↑ )
この日は関連イベントとして『都築響一 presents エロトピアの夜』が催されるからです。
18:30 OPEN/19:30 START
とのこと。
新作「都築響一に褒められたくて」を、お渡しするならココしかない!とばかり、
前回、額装したものと、シートのままのもの、2つを携えて。

例によって今回もアポなしです。
叱られることは覚悟の上、だからこそ作品の強度が試されます。
でも、きっと大丈夫。
絵を見ていただけたら納得してもらえる…筈!

とは言え、いきなり「どうぞ!」というわけにはいかないので、
一度開店前の早い時間に訪れて、その旨お店の方にお伝えしました。
すると「イベント前は慌ただしいので難しい。終了後なら時間がとれるかもしれません」との答え。
「とりあえず、こういう人が来たということは、お伝えしておきますね」と。

ありがとうございます!

来場整列順に入場とのこと。ならばと先頭で待つことに。
そして定刻の18時30分、オープン。
支払いを済ませ、ステージ前の席に着こうとすると、なんとそこにイベント準備中の都築さんが!

勢い…

「あっ、都築さん!先日、新宿で描かせてくださいとお願いした、ナガサワです!」
「えっ?あ〜どうもどうも。いらっしゃい」
「ハイ!あ、あの、あの作品が仕上がったので持ってきました。お時間あれば後ほど見てもらいたいのですが…」
「あ〜ありがとう。今でもいいですよ〜この隣りが控え室だから、上がってきて〜」と!

「ハイッ、失礼しますッ!」

そして、控え室 ___

「お渡しするなら今日がベストだろうと思って…」
すると都築さん、
「もう、ツイッターで見ちゃいましたよォ〜」と。

「うわわわ!」

途中経過を報告するのも善し悪しだな〜と思った次第。
やはり作り手は地下に籠り、黙々と制作すべきなのか…
溜め込んで、溜め込んで、展覧会でブワ〜ッと! その方が面白いか…

そうかも。次回は、そうしよう…

いや今回も!

というわけで急展開…

都築響一 × ながさわたかひろ トークショー開催!

なんとなんと、憧れの都築さんとトークすることになりました〜
まさかまさか、こんなことになるなんて!パチパチパチ…てか、ホントにできるの?ホントに?うわわ〜

「都築響一に褒められたくて」は、都築さんのコメント入りで、しっかり完成しております。

このトークショーでお披露目します!

2016年8月2日(火) 19:00~ 
渋谷・HMV&BOOKS TOKYO 6Fイベントスペースにて
入場無料

です。

人生、ときどきイイことあり。

皆さま、是非ぜひ、お越し下さいませ!

 

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『都築さんに褒められたくて』その3

2016年07月03日 | 都築響一

「都築さんに褒められたくて」の・つづき。

背景に手を加える。
人物を黒ニスでマスキングし、アクアチントを施す。

 

腐食後、インクを詰めて刷ってみると、

こんな感じ。

うん。完成は近い!
都築さんのシルエットがしっかり見えるよう、アクアチント面を磨く。
勢いよく、だけど気持ちは拝みながら。

シュッ、シュッ、シュッ、どうだ〜ッ!

画面が「できたよ」と言っている。
都築さんが「待ってるよ」と言っている …ような気がする。

 完成!

パチパチパチパチ…

仕上げ処理を施し、本刷りは2枚。

画面サイズ:36×29.5cm
紙サイズ:54×39cm

 

さて、この大きさの銅版画を裸で渡すわけにはいかない。
なんたって所詮は紙っぺら、しっかりした額で作品を支えてもらわなくちゃだ。

ここは目黒の名うて、小林額縁製作所の力をお借りすることにしよう。
電話で小林さんに連絡すると「とりあえず見せてくれ」と。
翌日出向き、そして作品意図を説明する。

「分かりました。やらせてもらいましょう」と力強いお答え。宜しくお願いします!

 

そして後日、受け取りに行く。ドキドキ…

ジャ〜ン!

この仕上がり。流石です。小林さん、ありがとうございます!

…さぁ、やるだけやった。あとは都築さんご本人に委ねるのみ。
大丈夫。気持ちはしっかり伝わるはずだ。

次回、都築さんに会いに行く!

 

(つづく)

 

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『都築さんに褒められたくて』その2

2016年06月26日 | 都築響一

前回、凶悪犯のごとき形相で終わった「都築響一さんに褒められたくて」です。
エッチングは刷ってみるまで分からないから恐い。
日常的に描いていれば感覚的に分かりそうなものだが、ここ2年ぐらい離れていたからか、
自分で描きながらも絵の状態が分からないまま手を動かすことになった。自業自得です…
前回刷り上がった極道顔に手を入れながら温和な都築さんに近づけていくことに。

背景にも手を入れておきたい。
都築さんの著書を読み返し、そこからチョイスしたキャラクターを描くことにした。
ほとんどは『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』からのものだ。

我ながらヘタクソだが、それは仕方ない。頑張るしかない!

ここからアクアチントを併用。
トーンを載せたいところ以外を黒ニスで覆う。

アクアチントとは、地金が露出した部分に粉末状にすり潰した松脂を振りかけ、熱を加えて定着、
そのまま腐食液に入れるとトーンが載る、という仕組み。

腐食後、黒ニスを剥がし、インクを詰めて刷ってみると…

こんな感じ。

紙ヤスリで磨きをかけて濃淡を演出すると…

こんな感じ。…ムムム、まだ目が違うかな。

思いが足りないのかもしれない。著書を読み返しながら、同じ工程を繰り返す。

アクアチントして、

 ヤスリをかける。

おっ、近づいた!

遠い存在だった都築さんが、ようやく歩み寄ってきてくれた。思いが通じた!あともう少しだ。
行きつ戻りつしながら、少しずつ手繰り寄せる。

つ、都築さんだ!

もうちょっと、もうちょっとで完成です。

 


///////////////

 


そんななか始まった、渋谷アツコバルーで開催中の展覧会『神は局部に宿る 都築響一 presents エロトピア・ジャパン』。早速、行ってきました。

今は亡き、鳥羽国際秘宝館・SF未来館のインスタレーションが再現されています。

これまでにも何度か見てきた等身大マヌカンのジオラマ。「また会えたね」という気分になるから不思議。
最初の出会いは前述した都築さんの写真集『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で、まだ僕が学生のときだった。
その後、秘宝館は閉館、その一部を都築さんが引き取り、横浜トリエンナーレで “アート作品” として展示された。
鳥羽国際秘宝館のことは、都築さんによってこれまで何度か記事にされてきたが、
巻頭を飾った『現代美術場外乱闘』の序文にこう記してある。

 “(前略)
 売れっ子でも一流でもオシャレでもない君が、ほんとに食べたいもの、ほんとに着たいもの、ほんとに愛したいアート。
 それはどこかほかの場所にあるはずだ。
 美術館の床でもなく、ギャラリーの壁でも、大学の教室の黒板でもなく。
 すごく意外で、たぶん、すごく近くに。
 これからそれを、いっしょに探しに行こう。”


悩める僕らに “アート” を示し続けてくれる都築さん。受けた影響は計り知れない。

今回の展示では、ラブドールに触れることもできる。初めての経験に奮えました。ドキドキ…

 

〜7/31まで!

 

(つづく)

 

※ 『に・褒められたくて 版画家・ながさわたかひろの挑戦』編集室 屋上)発売中です!


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『都築響一さんに褒められたくて』

2016年06月05日 | 都築響一

絶賛!…ということもなく、粛々と発売中の『に・褒められたくて 版画家・ながさわたかひろの挑戦』
本屋の片隅に置いてある(はず?)なので是非ご覧いただきたく。

さて、新作 “都築響一に褒められたくて” では、久々に銅版画に挑戦しています。
最初の描画を終えました。
エッチングという技法です。
更の銅板に、アスファルトと蜜蝋を主原料とするグランドという防腐剤を塗り、
鉄筆を使ってグランドを剥がすように描きおこしていきます。
そのまま腐食液に浸けると、グランドが剥がれた部分のみが腐食されて溝になり、
そこにインクを詰めて紙に刷る、というのがその行程。

細い線の集積によって描ききらなければならず、なかなか骨が折れる作業なるも、
その間はずっと相手に思いを巡らせるわけで、とても重要な時間です。
楽じゃないのは、ここでは黒いグランドに対して描画したところが白くなるので、
見た目はネガポジが逆転してるってこと。
これって“慣れ”が必要で、しばらく遠ざかってるとその感覚が掴めなくなるみたい。
自分で描きながらも、その絵の状態が分からなくって。トホホ…
でも何年かぶりに挑戦のエッチングなので、これは仕方ないこと。
下手な進め方でも、これはこれで熟練者にはできない描き方でもあるだろうし、
ポジティブに受けとめることにしよう。
絵は、何よりその“気持ち”が大事なのだ。

都築さんの顔を描き終え、というか一度どんな状態なのか確認したくなって描画を中断、
儀式として、氏の『TOKYO STYLE』(1993)の上に置き、一晩寝かせてから製版することに。

 (←見た目は、こんな感じ)

腐食の途中で一度引き上げ、もう少し描画を加えて、再び腐食する。
こうすることで二段階の溝による線の強弱が生まれる。

腐食を終え、グランドを剥がし、インクを詰めて刷ってみると…

 trial-2

オ~

まだまだ、あの涼しげな都築さんの表情には至っていないけど、息は吹き込めたようだ。
まぁ、イイ感じ。

次は背景にも手を入れるつもり。

 

(つづく)

 

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新作。

2016年05月22日 | 都築響一

時間があるかぎり描け!
これが、ここ7年ぐらいの僕の日常でした。
その結果、昨年は目標だったリーグ優勝を経験し、その軌跡として「プロ野球画報2015」を上梓することができました。
これで一つの作品を終え、…っていうか気持ちの中で終わってないからいけない。
そこで、Jリーグならどうだろう?と取り組み始めたわけですが、やっぱり根っこは野球小僧。
一本化できずに、今度はロッテの試合を観ている。
今季は浪人生活のつもりで、ちょこちょこっとメモ程度に描こうと思っていました。
本筋は、FC東京。週1~2試合と小平練習場通い、それを描く。

ところが、プロ野球は毎日試合があるわけで。
ロッテのチーム状況とファンの動向が分かってくると、案の定ズブズブとハマり始め、いつしか目が離せなくなってくる。
そうこうするうちに小平練習場への足が遠のく。ウチから自転車で10分ぐらいなのに!

4月、週末はサッカーを優先し、ロッテは録画で見ていました。
しかし、そのうち逆転し始める。
サッカーも面白い。選手も、ポジションも分かってきた。戦い方や動き、見る視点も変わってきた。
しかし、観ることと描くことが今イチ連動せず、未だどう描いていいか分からない。
基本的に、サッカーはどこかひとつのシーンを切り取るということでは成立しないみたい。
さぁ、本当ならここからが勝負。ならばどう取り組むかということを考え、試行錯誤しながらその方法論をみつけていくべき。
ところが、プロ野球がそうさせてくれません。何しろ毎日試合がある。
選手と特徴が分かるようになり、ロッテファンの応援に体が反応するようになってきた。

もっと野球が見たい!

サッカーも野球も、っていうと毎日追われるように見ては描きを繰り返すだけで、ほとんど思考停止に陥ってきちゃって。
それで絵のクオリティが上がるのならまだいいのだけれど、何だかどんどん下がっているように感じられ…
端的に言って、画面に覇気がない。何のために描いているのか分からなくなってきた。

5月に入り、サッカーを描くのをちょっとやめてみました。
そしたら連敗していたFC東京が勝ち始めた。以降、まだ負けてない!
新チームの戦い方ができ始めているということですが、
ボク的には「描かない方がいいんじゃん」と。観ることだけを楽しもう!と。言い訳ですけど。

さて、サッカーを描かないと決めたら、週に1~2日、その分だけ他のことができるようになりました。
すると、街へ繰り出すようになる。
何しろ映画好きだし、観劇、寄席、ライブ等イベントごとに行きたくてたまらない。
そして、今年2冊目となる『に・褒められたくて』が出版され、それについて考えることが多くなります。


ーーーーーーーーーーーーーーー


5/14、神保町の特殊古書店「マニタ書房」の店主・とみさわ昭仁さんと都築響一さんのトークライブに行ってきました。
かたや「無限の本棚」、かたや「圏外編集者」。
今年読んだ本(そんなに読んでないけど)の中でも抜きん出て身につまされた2冊、その著者のトークライブ。
新宿5丁目の路地を入ったところの雑居ビル2階の《Cafe Live Wire》にて。
とみさわさんには「プロ野球画報2015」を、都築さんには『に・褒められたくて』をお渡しするつもり。
すでに都築さんには「プロ野球画報2015」をお渡ししています。3/29、文禄堂高円寺店で。
雑誌「ヨレヨレ」の編集長・鹿子裕文さんとのトークセッションを見に行ったときです。
一番まえでしっかり見ておきたかったので、その日は早い時間から書店内で待機していました。
といって、単に立ち読みしていただけですが、ふと隣りに目をやると、なんと!
都築さんも立ち読み、というか本を物色されてて。
思わず「あっ!」と声が漏れ、その声に都築さんが振り向き、目が合う。
アワアアワしつつも、頭ん中は高速回転し、この何分か後には都築さんのすぐ前の席に座って話を聞こうとしているわけだし、
ならばいま、そ知らぬフリで普通の客を装い、あとあと余計なことを考えては気まずくなる自分の姿が目に見えてる。
いま話しかけなきゃ!と…

「あ、都築さん、こんにちわ。今日、お話聞きに来ました。ボク、絵描きです。
 野球の絵とか描いてて。スワローズの絵なんですけど。一試合一枚がボクのプレーで。
 6年描き続けて去年優勝したんです。それを本にしたんです。あのォ、受け取ってください!」

すると都築さん、

「え~いただけるんですか~ありがとうございます~」と。受け取っていただけて。しかも、
「これ、村上春樹さんは知ってるのかな~?」と。
「いや、まさか」
「え?渡した方がいいですよ~」
「いやいや、そうそう会える人じゃないですし…」
「じゃあ私からお渡ししますよ。ここでも売ってるのかな?」と。

エッ、エ~~~!!!

「いや、あ、それならもう一冊お渡しします!」と、じつはコレ、鹿子さんにお渡ししようと用意していた分だったのですが…
鹿子さんにはあとで自分で買って渡せばいいやと思ったのですが、残念ながら文禄堂高円寺店に在庫はなく…
取り扱いしてないのかもしれません。しっかり営業しなきゃな…
でも、こんな嬉しいやりとりがあって。最後に、こう付け加えました。

「来月もう一冊、本を出しますので、また持ってきます!」

それが『に・褒められたくて 版画家・ながさわたかひろの挑戦』で、それを持って出向いたのがこの日なのでした。

さて、「圏外編集者」と「に・褒められたくて」には共通点があって。
どちらもデザインが佐藤亜沙美さん(サトウサンカイ)、一緒なんです。イエ~イ!

「デザインは佐藤さんにやってもらったんです」
「あっ、そうなんだ~」

これが話のとっかかりになります。何もないと、また僕はアワアワしてしまうから。
そして今、この機を逃してはいけない。

「あの…都築さん、都築さんを、都築さんを描かせてほしいんです!」
「え~本当ですか~いいですよ。よろしくお願いします~」

 やった~!!!

じつはこれには伏線があって。
昨年末、「平野甲賀に褒められたくて」を完成すべく、平野さんに会いに小豆島へ向かった折り、
高松空港と高松築港を結ぶバスの中、なんと!出発間際に都築さんが乗ってこられて。
“うわっ、都築響一だ!”
おそらくは羽田から同じ便だったのだろう、なんという偶然。
でも、満員に近い4列シートの車中、臆して声をかけることできず…
「バスを下りた時にしよう、そうしよう」なんて、都築さんも高松築港で下りるとばかり思い込み。
ところが、途中、高松市内で先に下りられてしまい…
いや、自分もそこで下りればよかったのですが、それもできず…
だって平野さんに会いにきた旅先で、都築さんと会えたから「ファンです!」とかって、
それはちょっと失礼なような気が…って、やっぱ言い訳ですけど。

これって今の状況、FC東京もロッテもってのはどうなのよってことにも通じるのですが…

とにかく「平野さんに褒められたくて」が完成したら、そしたら改めて都築さんに会いに行こう!と、そのとき自分に言い聞かせて。
そのリベンジ戦なのです。

ともかく、OKをもらい、お写真を撮らせてもらうことができました。
都築さん、ありがとうございます!

さぁ、次は『都築響一に褒められたくて』だ!

 

左から、見きれてるけどカメラを構える僕、お客さんにサイン中の とみさわ昭仁さん、右が都築響一さん


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