ぼんさい塾

ぼんさいノートと補遺に関する素材や注釈です.ミスが多いので初稿から1週間を経た重要な修正のみ最終更新日を残しています.

信号の空間 (7)

2011-05-14 16:26:05 | 暮らし
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         sys.pdf の [#11]

[#11] で信号の線形空間を考えたのは,第3章の信号処理の主要部分が線形だからです.線形空間(ベクトル空間)の定義は [1-6] や sys.pdf (@11) を見てください.x : R → R の集合に対して [#11] のように x1 + x2 や a x1 を定めれば,定義の条件を満たすことが容易に確かめられます.丁寧にかけば,x3 = x1 + x2 とは

  ∀t∈R ,   x3(t) = x1(t) + x2(t)

ということです.関数解析はフーリエ級数展開(による熱伝導方程式の解法)から始まったと言われています.単位ベクトルは正弦波です.三角関数は測量やモータに限らず,工学の多くの分野に応用されています.信号処理で考える空間は主として [1-9] のヒルベルト空間になります.

付録(@12&)の標本化定理の説明を修正しました.F は第3章で定義するフーリエ変換の作用素です.作用素を用いた表現 (Sτx)(n) = x(nτ) は ∀n∈Z, y(n) = x(nτ) で定められる関数 y : Z → R を Sτx で表わすという意味です --- Sτx, QδSτx 等に y, w 等を用いると sys.pdf 内で同じ記号が多くの意味で使われることになるので,なるべく避けたい.[#14]で y(n) を用いたのも第3章で x(t) を使いたいためです(^^;).


信号の空間 (6)

2011-05-13 14:36:02 | 暮らし
sys.pdf
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         sys.pdf の [#17]

sys.pdf (#17)の「(因果的で出力と状態が1対1の)」は意味の分からない人は無視してくださいというつもりで括弧で囲みましたが,「因果的」を使わないように表現を修正しました.「状態」の意味は第5章で説明しますが,「出力と状態が1対1」なので,とりあえず出力を状態だと思って読んでください.[1-43] の

  さらに離散マルコフ過程の場合は Y のかわりに状態空間の一点 y を用いれば十分であり、その場合は推移確率は行列となる。

の具体例が [#17] の行列です.この行列の定常状態では,Pr(Yn+1=a1) = 0.2, Pr(Yn+1=a1 | Yn=a1) = 0.5 です.本格的に学びたい人は [1-44] 等を見てください.

蛇足: 因果的な回路とは入力前に出力が現れない回路で,[1-44] の「過去」「未来」等の用語はこれに関連しています.「出力と状態が1対1」という断り書きは異なる状態で同じ値を出力とする情報源も考えられるためです.


信号の空間 (5)

2011-05-11 19:31:09 | 暮らし
sys.pdf
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               sys.pdf の (#15&)

sys.pdf では各章 2.0 ~ 2.5頁しか割り当てていないので,割愛事項だけでなく舌足らずの表現も多いので,忘れないうちに補足説明を行います.ここでは (#14) の確率変数のについて述べます.[1-23]を復習(部分的に引用)すると

  (1)標本空間: 空集合でない集合ならなんでも標本空間としてよい。「Ω からひとつの元 ω が選ばれるが、どの元が選ばれたのか分からない」
  (2)事象: 標本空間の部分集合のうち特別に選ばれたものを事象と呼ぶ事象とする部分集合は勝手に決めてよいが、すべての事象を集めた集合 F は可算加法族になっている必要がある。可算加法族の大きさは標本空間を観察する目の細かさを表している。
  (3)確率測度: 各事象に対して 0 以上 1 以下の数を対応させる関数を確率測度といい P と書き、事象 A の起こる確率は P(A) となる。P も勝手に決めていい関数であるが、確率測度の公理を満たすように定める必要がある。
  (4)確率変数: Ω 上で定義された実数値関数で、F 可測であるものを確率変数と呼ぶ。

と書かれていますが,[1-24]では

  公理主義的な確率論においては、d次元ベクトル値確率変数の確率分布とは、その確率変数の引き起こす像測度のことである。この測度は d次元ユークリッド空間上の確率測度であり、ユークリッド空間の部分集合に対して、確率変数の値がその集合に入る確率を与える関数となる。

となっているように,「Ω 上で定義された実数値関数」の「実数値関数」は各要素の値が実数値をとるベクトル値の関数と考えていい(確率分布のグラフを描ける)と思います.Ω からひとつの元 y を選んで,(y(n), y(n+1)) に対応する (Yn, Yn+1) を確率変数とするというのが sys.pdf での考え方です.

蛇足: Ω からひとつの元 y を選んで Y = ∫R y(t)dt を確率変数にする等,確率分布のグラフを考えたい(グラフを描ける)量を自由に選んで確率変数にできると思います(OK?)


sys.pdf

2011-05-09 21:32:41 | 暮らし

sys.pdf の第1章「信号の空間」を upload しました.割愛事項が多いので第2章を考えながら,随時 問や補遺 を付加していきます.

ある分野の学習をある地域の観光旅行に譬えると,ぼんさいノートは観光案内の地図,補遺は観光スポットの説明に相当します.記念写真に相当するのは自分で解いた教科書・参考書の問題です.パンフレットを見ただけでは旅行した気にはなれません.パンフレットを見ながら旅行すれば,後日パンフレットを見て旅行を思い出せます---勿論,記念写真には敵いません.