「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

細見美術館の雪佳展

2007年12月21日 | みやびの世界

 神坂雪佳の展覧会が開催されていることを、雪月花さんに教えていただいていましたが、なんとなく、腰が上がらずに日を過ごしてしまいました。(会期は9月22日から12月16日と長期でした。)

 奈良の妹に、京都に出かける折、細見美術館に寄って、雪佳の図録があれば送って欲しいと、わがままな頼みごとをしていました。
 会期も終わり近くの14日に、「みやこめっせ」で開催の京料理展示大会に併せて行ってくれました。毎年、京の有名料亭の料理作品が一堂に集められる豪華な催しで、特設のお食事処や、京野菜の買い物もできるのだそうで、楽しみにして出かけているようです。

 昨日、今年59回の正倉院展の図録と一緒に「琳派を愉しむ 細見コレクションの名品を通して」と題した図録が届けられました。これは開館以来のシリーズ、琳派の展覧会の総括といったもので、光悦から雪佳に至るまでの、本流の琳派作家の作品を豊富な館蔵品を使って、流れで示したガイドブック風の図録です。初めて目にする作家や、作品の豪華を愉しんでいます。
 神坂雪佳展には、図録は作られていなかったようでした。

 「雪佳の魅力―近代琳派の誕生―」と題した出品リストをみて、どうして出かけるのを躊躇ったのかと、後悔しました。細見のコレクションを中心に、個人所蔵の30点余を含めて95点もの作品が出ていました。
 細見コレクションの雪佳は有名ですが、京都国立近代美術館、京都市美術館の所蔵品などもふくまれています。清水六兵衛の陶器のための下絵図案をはじめとしたデザインは、漆工芸、染織、家具に至るまでの多様な活動が網羅されています。

 「百々世草」を通してしか知らない雪佳ですが、京の琳派を手本に日本の装飾芸術に鮮やかな色遣いと、大胆なデザインを持ち込んで、近代の琳派と称された多方面の活躍がリストから窺われます。「蝶千種」に森英恵の原点をみたと妹も感想をのべていました。

 雪佳展のチラシの解説文の最後に
「光琳を「趣味の革命者」と捉え、その姿勢に共感した雪佳、一人の画家として展覧会等での評価を得ることよりも、自分の好きなもの、美しいもので身の回りを飾ることを大切にしていました。そうした雪佳の姿は芸術をことさら高尚なものとして見るのではなく、日常的な美の世界を楽しむことを私たちに教えてくれているように思えてなりません。それこそが雪佳のめざした美の世界といえるでしょう。」
と学芸員 福井麻純さんは結んでおられます。



神坂雪佳展チラシより



図録 琳派を愉しむ 表紙