「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

器選び

2005年05月16日 | 遊びと楽しみ

 料理は慣れれば、ある程度までなら、だれでも平均値そこそこには到達できます。そこから先は盛り付けのセンスと、器が差になります。
 テレビの料理番組では、食材の分量と作り方といった、いわゆるレシピについては丁寧に解説してくれますが、器選びと盛り付けに関しては省略されることが多いように思います。
 日本料理は、よく言われるように「器半分」、眼で味わう部分が働きます。ときに芸術品と思える一皿もあります。
 食器の好みはそれこそ千差万別ですが、デパートなどで器をみて歩くうちには、いいものとそうでないものは、何となく判ってくるようです。これは値段だけの問題ではありません。季節感を色や模様に反映させて食器棚の器を選ぶのはささやかな楽しみです。
 作家物の贅沢な器は縁がありませんが、なんでもない皿や小鉢でも充分に雰囲気を演出できます。
 今の季節、しばしば登場するのが庭の楓の若葉や、花をつけた令法(りょうぶ)や一輪の小さな花々です。和菓子の皿にも敷いて、添えて楽しみます。
 昔から、私たちの先祖が伝えてきた演出に南天の葉や笹、檜の葉の利用がありました。山茶花の開きかけの花付の小枝を折って程よい箸置きに使う工夫など、中国の古典でいう四つのたしなみの「琴棋詩酒」のうち、酒のたしなみにあたるのでしょう。
 コンクリートで固められた現代の生活環境だからこそ心豊かに暮らすための嗜みなのではないでしょうか。
  
写真は今の季節の令法の花穂