「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

空木の咲く季節

2005年05月07日 | 歌びとたち
   雨上がりを待っての草取りに下り立った庭の斜面に、藪空木がいつの間にかいっぱい花をつけていました。
 暦の上では立夏を過ぎているのですから当たり前かと納得し,
  春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香具山
の持統帝は、白い衣に季節の到来をご覧になったのですが、私は黒味がかった蘇芳色の藪空木に夏の季節の訪れを知ることでした。
「うつぎ」といえば、卯の花の方が通りがよく、ホトトギスと取り合わせて小学唱歌をはじめ、古くから多くの詩歌に親しまれています。
卯の花の咲く月立ちぬほととぎす来鳴き響(とよ)めよ含みたりとも (万 18-4066)
 これは今頃の季節を詠ったものでしょう。
奥の細道では、曽良は「卯の花をかざしに関の晴れ着かな」の句を残し、子規にも「押しあうて又卯の花の咲きこぼれ」の句があります。榊 莫山は好んで箱根空木を書画にしていました。