写真家・小林伸一郎 オフィシャルブログ

写真集、写真展のお知らせ、日々の出来事など綴っていきます。

最高裁判決【勝訴】 2012年2月22日

2012年02月22日 | インポート

株式会社スタジオライズ 小林伸一郎

写真著作権等に関する損害賠償請求事件 最高裁判所判決(勝訴)のお知らせ

平成24年2月16日、写真著作権等に関する損害賠償等請求事件について、上告人兼申立人 丸田祥三氏の上告及び上告受理申立てに対し、上告を棄却する、本件を上告審として受理しないとの判決が最高裁判所第一小法廷にて言い渡されました。

【訴訟概要】 

原審        知的財産高等裁判所平成23年(ネ)第10010号損害 賠償等請求事件

上告日   平成23年5月26日

上告人兼申立人     丸田祥三

被上告人兼相手方  小林伸一郎

事件名 平成23年(オ)第1447号 平成23年(受)第1625号

【原審における請求内容】 

1.写真集増製・頒布の差止め

2.写真集の当該写真部分の廃棄

3.著作権侵害による損害賠償請求(28万7117円)

4.氏名表示権侵害による慰謝料請求(200万円)

5.名誉毀損による慰謝料請求(100万円)

6.不法行為(※1)による損害賠償請求(300万円)

7.謝罪広告

丸田祥三氏の主張

・丸田氏に依拠して写真を撮影、出版、頒布し、小林の写真集に丸田氏の氏名を表示しなかった。

・著作権関連写真5枚及び一般不法行為関連8枚の写真の撮影・発表によって、丸田氏の権利(名も無き廃墟を発見、最初に美を酌み取り作品写真として世に出すことによって得られる商業利益)が侵害された。(※1)

・写真集「亡骸劇場」の巻末インタビューにおいて、小林が掲載写真の解説をしたことが丸田氏の名誉毀損にあたる。

【一審・二審・最高裁判所の判断】

原審知的財産権高等裁判所の判決は、翻案権の対象と指摘された5枚の写真すべてについて、そもそも丸田氏が撮影した廃墟写真から自らが主張する創作的特徴、効果を感じ取ることができない。互いの写真5枚それぞれから受ける印象が大きく異なるとの理由で翻案権侵害の主張は棄却。翻案物といえない以上、複製権、譲渡権、氏名表示権に関して検討するまでもなく侵害行為に該当しない。不法行為の主張に関しては、廃墟を被写体とする写真を撮影すること自体は、何人も制約を受けるものではないというべきであり、廃墟写真について被写体となった廃墟を最初に被写体として発見し取り上げたと根拠もなく主張する原告に生ずる営業上の利益は法的保護に値しないとの理由で棄却。また、写真集「亡骸劇場」巻末インタビューにおいて、廃墟写真の先駆者のような発言をしたことにより名誉が毀損されたとしての慰謝料請求は、そのようなことを述べてはおらず、また書かれていないため一切認められず、丸田氏及び丸田氏の作品の誹謗中傷すらしていないとの理由で棄却。丸田氏が小林に対して侵害行為と主張している内容は、社会的にまったく違法なものに当たるものではなく、本件訴訟で問題とされた写真はいずれも小林が独自のテーマと視点から撮影した写真であり、判決理由中で、写真表現の精神性、両者の写真技術の差異も含めて、まったく異なる写真表現であるという理由で、一審、東京地方裁判所、二審、知的財産高等裁判所は丸田氏の請求をすべて退け、丸田氏がこれに対して上告及び上告受理申立てをしましたが、最高裁判所は、丸田氏の主張する上告理由は法律上認められた上告理由に該当せず、上告を受理すべきものとも認めないとして、いずれも斥けました。これにより知的財産権高等裁判所の判決が確定しました。

【小林伸一郎の見解】

私は1980年代から鉱山、廃工場に残された廃墟撮影をする一方、東京湾岸や建設途中の建物、橋、ダム、道路ができる景観を撮り続け発表してきました。すなわち私にとって「完成に向かう建造物」及び「朽ち果て廃墟になる光景」の両者は生涯追い求めるテーマであり、現代日本の風景を複合的切り口で表現する一つが「廃墟」です。風景写真のひとつである廃墟は、写真が発明された当時から世界中で撮影されてきたモチーフです。そして、一度でも誰かが撮影、発表した場合は事後の撮影、発表が制限されるという丸田氏の主張がまかり通れば、他者によって既に撮影されている場所でも、誰もが表現上の工夫をして、さらに新しい写真をうみだそうというアーティストはもちろん、写真家を志す若者、全国の写真愛好家のインセンティブが失われ、写真表現が著しく萎縮することになったでしょう。

今回の訴訟は、そもそも論争にならない主張を丸田氏が法廷に持ち込み、何ら立証できぬまま訴訟を続けたものであり、その行為はあまりにも理不尽であり不当訴訟であったと考えます。当然のことですが裁判所は丸田氏の写真と私の写真はまったく異なるものと判断し、丸田氏の請求は何一つ受け入れられず、一審、二審、最高裁とすべて棄却されました。また、丸田氏は訴訟以前から今日に至るまで、私、及び出版社、新聞社、関係企業、そして写真界までも度重なる非難、誹謗中傷、審理の内容とはまったく異なる根拠のない発言を公の場で繰り返しており、かかる名誉毀損・信用毀損行為は、一般常識から大きく逸脱した不法行為に該当すると思います。丸田氏の発言に類似するウェブサイトの内容も大変遺憾です。これまでは係争中であったため、まずは審理されている内容に対応すべきであると考え、あえて静観してきましたが、今後は、いわれのない誹謗中傷に対しては、法的措置を視野に入れて毅然と対応していく所存です。

以上


廃墟写真著作権訴訟 最高裁判決(勝訴)小林伸一郎コメント

2012年02月22日 | 著作権訴訟

平成24年2月16日、廃墟写真著作権等に関する損害賠償等請求事件について、上告人兼申立人丸田祥三氏の上告及び上告受理申し立てに対して、上告を棄却する、本件を上告審として受理しないとの判決が最高裁判所第一小法廷にて言い渡されました。

私は、1980年代から鉱山、廃工場に残された廃墟撮影をする一方、東京湾岸や建設途中の建物、橋、ダム、道路ができる景観を撮り続け発表してきました。すなわち私にとって「完成に向かう建造物」及び「朽ち果て廃墟になる光景」の両者は生涯追い求めるテーマであり、現代日本の風景を複合的切り口で表現する一つが「廃墟」です。

風景写真のひとつである廃墟は、写真が発明された当時から世界中で撮影されてきたモチーフです。そして、一度でも誰かが撮影、発表した場合は事後の撮影、発表が制限されるという丸田氏の主張がまかり通れば、他者によって既に撮影されている場所でも、誰もが表現上の工夫をして、さらに新しい写真をうみだそうというアーティストはもちろん、写真家を志す若者、全国の写真愛好家のインセンティブが失われ、写真表現が著しく萎縮することになったでしょう。

今回の訴訟は、そもそも論争にならない主張を丸田氏が法廷に持ち込み、何ら立証できぬまま訴訟を続けたものであり、その行為はあまりにも理不尽であり不当訴訟であったと考えます。当然のことですが裁判所は丸田氏の写真と私の写真はまったく異なるものと判断し、丸田氏の請求は何一つ受け入れられず、一審、二審、最高裁とすべて棄却されました。

また、丸田氏は訴訟以前から今日に至るまで、私、及び出版社、新聞社、関係企業、そして写真界までも度重なる非難、誹謗中傷、審理の内容とはまったく異なる根拠のない発言を公の場で繰り返しており、かかる名誉毀損・信用毀損行為は、一般常識から大きく逸脱した不法行為に該当すると思います。丸田氏の発言に類似するウェブサイトの内容も大変遺憾です。これまでは係争中であったため、まずは審理されている内容に対応すべきであると考え、あえて静観してきましたが、今後は、いわれのない誹謗中傷に対しては、法的措置を視野に入れて毅然と対応していく所存です。

小林伸一郎

訴訟概要→詳細