Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

復習のためのV

2006年10月10日 | アラン・ムーア関連
『Vフォー・ヴェンデッタ』が、いつの間にかレンタル開始に。
春に映画館で見てますが、内容をおさらいしようと借りてきました。
公開日の前日が原作コミックの発売日で、当日買ってきた本を夜中に
一気読みしたのが懐かしい…というほど昔の話じゃないですけど。

映画版は原作を大筋でなぞっているものの、やはり長さと表現力の点で
多くの部分がこぼれ落ちてしまってます。
原作は複数のエピソードを並行して進めつつ、最後にはそれらが収束し
Vの狙い通りのクライマックスへと突き進んでいくという流れですが
この複雑な構成を2時間の映画で実現するのはやはり無理でした。

ヒューゴ・ウィービング演じるVの長広舌は英語がダメな私の耳にも心地よく、
Vで始まる単語を並べた自己紹介も面白いのですが、原作コミックよりも
ロマンチストなキャラに描かれている点が気になります。
人間的な甘さ、弱さという部分が強調されたせいで、Vの持つ非人間性や
悪魔的完璧主義という「超人ぶり」が薄まってしまったのは残念。
本来のVはもっと恐ろしい復讐者であり、その怒りは権力者だけでなく
彼らを進んで選び、少数者の弾圧に対し見て見ぬふりをする一般大衆にも
向けられているのです。

映画版のように民衆のパワーを安易に善とみなすシナリオは、やはり甘すぎ。
これでは原作者アラン・ムーアのお気に召さなかったのもうなずけます。
もっとハードな「V様」を見たい人は、ぜひ原作コミックをお読みいただきたい。

これを本気で映像化するなら、やっぱり連続ドラマでやるべきですね。
評価の高い作品が連発している今なら、監督と俳優さえ間違えなければ
なかなかいい作品になりそうな気がします。

まあ一番重要なのはシナリオですけど、それはムーア本人が書くって事で。
でもアメリカのTVじゃ絶対放送できないだろうな。
ここは風刺番組の本家、英BBCの奮起を期待したいところですが
今のイギリスにはもはやそういう気概は無さそうです。
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