Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

日本よ、これが海外オタクの底力だ!巨大ロボットvs怪獣映画『パシフィック・リム』

2013年08月11日 | 映画
『ヘルボーイ』や『パンズ・ラビリンス』といったホラー系ファンタジーで知られる
ギレルモ・デル・トロ監督が、その趣味嗜好を大爆発させた怪獣ロボット活劇映画
『パシフィック・リム』を観てきました。



さすがは生粋のオタクであるデル・トロ監督、この手の映画が好きなファンの気持ちを
恐ろしいほどよくわかってらっしゃる!と脱帽する内容に、もうお腹一杯です~。

派手な映像に個性的なロボ、生々しい怪獣の描写など、見どころはいろいろありますが
個人的にグッときたのは、目の前に巨大なものがある!という感覚を満喫させてくれる
ケレン味たっぷりの演出ですねー。

とにかく大きなバケモノが地面を踏みしだき、ビルをぶっ壊し、それを迎え撃つ巨大ロボが
敵を殴り、蹴り、締め上げ、そして切り裂く!
そうした巨大な存在同士による肉弾戦が、かつてないなめらかな動きと重量感を両立した形で
これでもかとばかりに描かれるわけですから、怪獣や巨大ロボットと共に育ってきた世代には
感無量というか、なんともいえない気持ちよさがありました。

自動型やAI制御ではなく「あくまで人が乗って操縦する」というところも、極めて重要。
やはり巨大ロボットは人間が乗って動かすことに、最大のロマンがあるわけですよ!
操縦方法がパイロットの動きをトレースする古風な仕組みだったり、攻撃を繰り出すときに
パイロットが絶叫する「お約束」も、きちんと抑えてあります。
(『トップをねらえ!』を溺愛する私にとっては、最高に燃えるシチュエーションでした。)
こういうのって、観る側にも操縦感覚や気分の高揚を伝える上でも重要な演出なんですよね。
そこを外さずに盛り込んでくれるのが、プロのオタクであるこの監督らしいところです(笑)。

リアルな映像は3Dによる効果が大きいのですが、それだけでなく、パーツのアップとか
アオリによるパースのつけ方など、日本のアニメを参考にしたと思われるレイアウトや
カメラワークが随所に見られ、新鮮な映像の中に懐かしい感じもあったりして。

しかし、アニメで見たままの映像がリアルな3Dで、眼前にドーンと出現する時代が来るとは・・・。
これは日本アニメもうかうかしてられないかもしれません。

劇中曲についても、日本の特撮で流れるような重厚な曲調のものが多く使われており、
3D映像の持つ巨大感をさらに引き立ててくれます。
ある意味、日本の特撮映像に慣れている人も「安心して」観られる作品だと思います。

さて、こんな映画を作ったデル・トロ監督に影響を与えた作品について、イギリスの映画雑誌への
監督自身の寄稿文を要約したまとめ記事「日本文化の影響を語るギレルモ・デル・トロ監督」が
実に要領よく紹介しています。

これを読むと、日本の特撮やアニメ以外にも、サンダーバードやメキシカンプロレス(ルチャ・リブレ)など、
子供時代に触れた様々なエンターテインメントから影響を受けてますが、これって日本での同世代にあたる
60年代前半の特撮映画やアニメ関係者と、かなり似通った経験なんですよね。
いわば、太平洋を挟んでほとんど同時期に「純粋培養された第1世代のオタク」が誕生していたわけで、
いわゆる「クール・ジャパン」と評される文化の担い手は、決して日本だけにいるのではないんですな。

そんなデル・トロ監督、当初は日本のメカデザイナーを招いて共同作業をしたいと考えていたようですが、
震災後の混乱や動揺を心配して今回は断念した・・・とのコメントが、先に触れた寄稿文にありました。
イェーガーのデザインについては、もっと洗練されたものを希望するファンの声もあるようですので、
今後も同様の巨大ロボ作品を作る機会があるとすれば、次こそ日本のスタッフを招いて欲しいものです。

日本の特撮ファンが大好きな細かい設定に触れないのはいかにも海外作品っぽいし、シナリオ面では
説明不足かつ荒っぽさも目立ちます。
また、なにかと自己犠牲を尊ぶ姿勢にも疑問を感じるところはありますが、多少のアラには目をつぶって、
ついに実現したハリウッド製巨大ロボ特撮の迫力を、ぜひ体験して欲しいと思います。

特に映画ファンと特撮ファンは、タイトルロールの最後まで必ず見届けること。
あの愛にあふれた献辞を目にしたら、少しくらいの不満なんて水に流せると思いますよ。
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