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Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

劇中でトランスフォーマーという言葉が出るのは一度だけ

2007年09月21日 | 映画
公開当初はどんなものやらと心配していた実写映画の『トランスフォーマー』、
原作は知らないしオモチャも持っていないしでずっと様子見の状態でしたが、
姫鷲さんshamonさんなどの辛口筋(笑)からもそれなりに好評のようですし、
気が付けば劇場公開も終了間際。ということで、ついに見に行っちゃいました。

なるほど、これは確かにおもしろいですわ。なんといっても出し惜しみがない。
メカの変形や戦闘場面もてんこ盛りですが、そこにギャグ満載のマシンガントークと
甘酸っぱい恋愛ゲーム、さらに家族愛や友情まで盛り込んでしまう欲張った構成と
それらをきっちりとまとめて見せた腕前には、アメリカ娯楽映画の持つ余裕と底力を
見せつけられた思いです。
まあ数々のハリウッド製映画からおいしい場面だけを寄せ集めた感じもするけれど、
その臆面のなさもサービス精神の顕れと思えば、大して気にもなりません。
むしろ製作サイドの自己満足や単なるキャラ頼みの映画にならなくてよかったかなと。
既視感があってオリジナリティには欠けるけど、面白さには保証つきという辺りには、
TVアニメ『天元突破グレンラガン』にも通じるものがありますね。

本作の目玉はメカアクションと戦闘の激しさですが、私にはむしろ主人公のサムを巡る
エピソードの数々が面白かったです。
玩具発の原作を万人向けの映画にするにあたり、こどもがオモチャを欲しがる気持ちを
ティーンエイジャーが初めて車を欲しがる気持ちに置き換えたのは、見事な発想です。
これなら見る年齢層が玩具のターゲット層と異なっても、十分共感を得られますからね。
ヘタレのわりには口が達者で、年相応にHなことで頭が一杯というサムのキャラクターも
どこにでもいそうな高校生という感じで親しみやすかったです。
そういえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティもこんな感じだったかも。

彼の愛車・バンブルビーの見せる「人間くさい」挙動の数々も魅力的でした。
サムよりも女の子の扱いに長けてたり、ボロ車と言われると同型車の最新モデルに
外見をチェンジしてみたり。
声が出せない代わりに態度で示すという姿には、妙な健気さを感じてしまいました。
車内に吊られていたハチ型芳香剤に‘BEE-OTCH’と書かれてたのもご愛嬌。
バイオテックならぬビーオテックとは、バンブルビーらしいシャレだなぁと思っていたら
実はこのアイテム、ホントに実在する商品らしい。
ネットショッピングで探せば国内の取り扱いもあるようですが、どうせなら劇場あたりで
売ってくれればよかったのにねぇ。だったら私も買ってたな、きっと。

物語の背景も巧みに練られていて、技術立国としてのアメリカの歴史は北極で発掘された
機械生命体の研究に支えられていたとか、フーバーダムの建設はその秘匿が目的だとか、
意外にシリアスな設定がされていてちょっとビックリ。
身近な機械へ擬態する異星人や機械生命の進化と人類との共存など、SF的なアイデアも
それなりにうまく生かされています。
まあこれらは『エイリアン』や『ターミネーター』それに『遊星からの物体X』といった、名だたる
先行作品の数々から学んだものでしょうけど。
SFXの迫力は言わずもがなですが、変形シーンよりも巨大メカの殴り合いにこそその本領を
感じさせるのは『キング・コング』や『ジュラシック・パーク』を生んだ国ならでは。
米軍がそれなりに強いのもアメリカ映画のお約束で、カタールで痛い目に会わされた大尉も
リターンマッチではしっかり借りを返してます。

終盤で延々と続く戦闘シーンは迫力満点とはいえこの手の映画の定番なので、私は見ていて
少々疲れました。人によってはあれでも「まだまだ足りない!」と言うかも知れないけど。
ちなみにサムのお母さんが映画のラストで言った「危なくなったら政府が教えてくれるわよ、
「隠れろ!(Duck and Cover)」って。」というセリフですが、これは1950年代にアメリカ政府が
核爆弾に対する防衛法として国民に広めた「被って隠れろ」というキャンペーンに引っ掛けた
ブラックジョークだと思われます。(内容は映画『アトミック・カフェ』などを参照のこと。)
核兵器相手にこんなことしても無意味なのは今ではわかりきった事。それだけ政府の話ってのは
うさんくさいんだよとほのめかしてるワケですな。こういう辛口のジョークは大好きです。

作品のスケールに比べて中身が軽いのも、お客を楽しませようという姿勢が徹底しているのも
ハリウッド作品ならではの持ち味といえるかも。
自己犠牲精神を煽るフレーズが若干気に食わないけど、全体的に見れば比較的ニュートラルな、
まとまりのよい娯楽作だと思います。ド派手なSFXと適度なおバカギャグを堪能できました。

それとあとから知ったんですが、メガ様の声はヒューゴ・ウィービングが担当してたんですね。
V様以降は顔出しのない仕事が続いて、あの濃い顔だちが好きな私にはちょっと心配(笑)。
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6 コメント

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TB感謝です^^ (shamon)
2007-09-21 21:56:31
惜しげもなくオモチャ箱をひっくり返して見せてくれた、って感じの映画でしたね(^^)。
終盤のバトルはだれたけれど楽しく見られました。
「四十歳の○貞男」云々
ヲイヲイ、でしたけど。
ご家族連れの方は説明に困ったんじゃないかな。

>お客を楽しませようという姿勢が徹底しているのも
ここがハリウッド映画の立派な所ですよね。
たとえ元ネタがジャパニメーションであろうと
しっかりと娯楽として作ってしまう。
すぐにTVの映画化に走る日本映画界も見習って欲しいです。
返信する
返信が早くてビックリです(笑 (青の零号)
2007-09-21 22:38:46
shamonさん、高速のコメント&TB返しありがとうございます。
あまりに早くてちょっとビビリました(笑)。
そちらの評価が悪くなかったのも見に行った理由なので、
shamonさんには感謝です。

ああいうのを見せられると、資本と映画作りのノウハウが
豊富なアメリカ映画って、やはり強いなと思います。
良くも悪くもアメリカ風味たっぷりの映画なのですが、
その雰囲気さえも演出の要素としてしまうしたたかさは
ハリウッドという文化に共通のものかもしれません。
同じ原作を日本で映画化しても、あの味は出ないでしょう。

>「四十歳の○貞男」云々
そこを振ってくるとは、shamonさんもツワモノですな(^^;。
私はむしろサムの母親が彼の部屋に乗り込んできた時の
リキの入った下ネタ披露が楽しかったです。
ものわかりのいい母親像を見せようとしてヤリ過ぎてしまう
母心、気持ちはわかるけど空回りもいいところですよね。
ま、あのシーンの後に家族の強い団結を見せるあたりに、
演出の巧みさが感じられるわけですが。

>ここがハリウッド映画の立派な所ですよね。
この原作はまずオモチャありきなんですが、作るからには
キチンと映画にしようという姿勢は立派ですよね。
IGも実写をやるならこのレベルの映像を…ゲフンゲフン。
返信する
そーいえば (shamon)
2007-09-21 23:00:29
「BLOOD THE LAST VAMPIRE」って来年実写が公開でしたっけ?まあ作るのはIGじゃないけど。

>IGも実写をやるならこのレベルの映像を…ゲフンゲフン。

ふはは(^^;。
「立喰師列伝」借りてこようかな~。

そういえば「真・女立喰師列伝」の神山監督の声の吹替えは傀儡廻さんだった気が・・・。
返信する
BLOODはねぇ… (青の零号)
2007-09-21 23:46:42
フランス資本ですからねぇ…どのくらいのものになるのやら。
チョン・ジヒョンってカワイイけど、小夜のイメージとは
ちょっと違うんじゃないでしょうか。

>「立喰師列伝」借りてこようかな~。
私、あれはあれで好きですけどね。
ただしあの作り方自体がネタでもある、という前提の上においてですが。
IG健全論(笑)の証拠として見るには、ちょっとマニア向けだと
言わざるを得ませんね。

そういえば押井作品のギャグについての言及って、目にした記憶が
ないんですけど、一体どういう作品に影響を受けてるのでしょう?
個人的にすごく気になってるので、ご存知ならお知らせください。
返信する
CGはさすがに高予算映画 (姫鷲)
2007-09-22 10:02:56
こんにちは。姫鷲です。
私は辛口というよりは、ぼやいてるだけですよ。ぼやきの姫鷲・・・いや、ボヤッキー?(笑)

>お客を楽しませようという姿勢が徹底している
邦画(特にアニメ)は利益重視の「商品」色が強いですからねぇ。元々が楽屋オチ作品というものでもない限りなかなか「遊び心」は見られません。
最近はマンガ→ドラマ→映画という具合に、明らかに利益の見込めるもので手堅い商売をするのが主流になってきてますし。

>自己犠牲精神を煽るフレーズ
まぁそこがアメリカなのでw
日本の作品も最近でこそ「皆生き残れ」的になってきてますけど、昔は「俺の屍を越えてゆけ」でしたからねぇ。・・・なんか久しぶりに「俺屍」やりたくなってきたなあ(笑)
返信する
日本だと映画ってもうからないんでしょうね (青の零号)
2007-09-22 20:22:15
ボヤ様こと姫鷲さん、コメント&TBありがとうございます。
私にはとても参考になってるんで、そう自分を卑下しないでください(笑)。

>邦画(特にアニメ)は利益重視の「商品」色が強いですからねぇ。
映画単体での売り上げはそんなに期待できないんでしょうね。
アニメに限らず、配役で売ろうという傾向は加速する一方ですし。
まあ某GR(ジャイアントロボじゃないですよ)のように
主役が原作ファンでお金出して作っちゃったという映画も
存在するので、ハリウッドだから万事OKというわけにも
いかないですよねぇ。

>なんか久しぶりに「俺屍」やりたくなってきたなあ(笑)
これはやったことないんですよ~。
さすがに今からPSのゲームを探し出してプレイするってのも
どうなのかなぁという感じでして。
もうPS用のメモカも持ってませんしねぇ。
返信する

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