goo blog サービス終了のお知らせ 

Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

もう一度『時かけ』について語りたい

2007年07月02日 | アニメ
いろいろあって久しぶりの更新。皆様お元気でしたか?私はいまひとつです(^^;。

『時かけ』限定版DVDをようやく鑑賞しました。
特典DVDはまだ見てません。(というか、いろいろあって見られる目途が立たない。)
生フィルムは52分44秒あたり?の「学校の前庭へタイムリープ後、ポーズを決める」
というシーンでした。真琴の絵、ちっさ~(涙)。

さて改めて見直してみると、初見でさわやかさが強く印象付けられるこの作品も、
実は結構明暗があるのだということがよくわかります。
画面構成の明暗と同様に、学園生活にも明暗があるわけで、それがいじめだったり
受験だったり友人とのすれ違いだったりするわけですよ。
そのへんをきちんと描いておきながら、最後にすっきりとした終わり方へと持っていけたのは、
筋運びの巧みさゆえですかね。
まあ一部の問題はオミットされてるとも言えますが、真琴本人とその周辺については
折り合いがついたわけだし、それで十分だと思います。
少なくとも、今のところは・・・。

・・・と思わせぶりな書き方をしたのは、以前の記事で触れた「白梅ニ椿菊図」に絡む
私なりの「読み」を、ここで少し詳しく書こうと思うからです。
DVD発売からかなり経ったし、もう独断で好き勝手書いてもいいかなってことで。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

さて、「時をかける少女」という作品において、その背後に「死」、そしてこれによる
(主観的な)時間の流れの停止、という視点があるのは明らかでしょう。
この「個人的な死」を「世界の死」と結びつけるアイテムこそ「白梅ニ椿菊図」なのだと
私は解釈しています。
個人の死が不意に襲ってくるように、世界も突然に滅ぶかもしれない。そしてその予兆は
日々の暮らしの中に密かに現れているのかもしれない。自転車のブレーキが壊れるように。
真琴の狭い日常も、実はより大きな世界の出来事の縮図だと見てよいでしょう。
そこを押し付けがましく描かず、匂わせる程度に留めたところ。
そこが『時かけ』という作品の底の深さ、巧みさなのだと私は思うのです。

千昭は自らの立場上、未来の姿を真琴にはっきりと明かすことができない。
でもなんとなしにそれを語らずにはいられないほど、彼(彼ら)は追いつめられている。
その閉塞感、未来への希望のなさが、彼らを過去へと向かわせているのかもしれません。
バカだけど賢明な真琴は、千昭の示唆する未来像を敏感に察知している。
だから彼女は、物語のラスト近くで千昭に向かって語りかけるのですな。
「あの絵、未来に帰って見てね。もう、無くなったり、燃えたりしない。」と。
どうやってそれを成し遂げるかはわからないけど、彼女がそう語ったことできっと
世界は変わったんですよ。その時点で新しい物語が始まったのです。
紺野真琴と、そして世界にとっての新たな物語が。
その意味も含めて、ラストにもう一度『時をかける少女』というタイトルが提示されたのだと、
私は信じています。

大げさに、そしていかにもSF的に言えば、これは「紺野真琴が死なないことによって、
世界が救われる物語」という読み方になるのでしょう。
でもそういう風には描かない、そして感じさせないところが、奥寺脚本のうまさであり、
そして奥ゆかしさと言えるんじゃないでしょうか。
世界を背負い込むんじゃなくて、自分の生き方を通じて世界を変えていくという形。
そのスタンスのとり方が、今の時代における「リアルな在り方」なのだと思うのです。
因果律うんぬんを前面に押し出さないことで、変にジャンル内に押し込められることも
回避できたのだと思いますし。
テーマの大きさや展開の巧みさでは(初代の)『トップをねらえ!』も互角だと思いますが、
あっちは意匠面で徹底的に「SFとオタク風味」を前面に打ち出す戦略をとっているため、
そこが世間一般との壁になってしまっているとも言えます。
手法としては『時かけ』のほうが、より文学/芸術チック(いわゆる「映画寄り」)な感じ。
(そのあたりの違いについては、誰か目の利く人にきちんと語って欲しいものです。)

最後は脱線しましたが、私にとっての『時かけ』は、見えてない部分の大きさや重さもまた、
見えてる部分と等価かそれ以上の比率を占めてると思わせる作品です。
他の人の見方を縛るつもりじゃなくて、「話のスケールが小さい」「時間SFとしては弱い」
という意見には、ちょっと異論があるということを述べたかったまでです。

ところで、千昭の「未来で待ってる」発言について。
ストレートに考えれば「絵を」待ってるということなんでしょうけど、彼が来た未来を
ずっと近い時代・・・例えば20年先とすれば、本当に待ってる可能性もありますよね。
その時真琴は37~8歳。今回の芳山和子とだいたい同じくらいの年齢ですな。
深町君を待ち続ける和子と、未来の真琴をオーバーラップさせて想像してみてください。
そこに千昭が現れたら。そして「ずっと待ってたぜ」と、真琴に言ってくれたとしたら・・・。
これってちょっとドキドキしませんか?
コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 何はともあれ「受胎告知」 | トップ | 奇跡の降臨が連発!『ゴーレ... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
オカエリナサイ (姫鷲)
2007-07-02 22:39:45
お久しぶりです。姫鷲です。
・・・とコメントしてみたものの、『時かけ』はまだ見てなかったり(汗)Pinkyはしっかり注文したんですけどね(苦笑)

・・・ということで、スンマセン、ご挨拶だけ。
(^^;)
返信する
おひさっ! (shamon)
2007-07-02 22:57:47
復活したんですね、よかった~。
荒巻のワイン、我が家に着きましたよ~(笑)。
名前のところに入れておきます。

>これってちょっとドキドキしませんか?
するする^^。
珠玉の一言でしたね。脚本の奥寺さんに拍手
返信する
いやはや、お久しぶりです。 (青の零号)
2007-07-03 00:06:31
毎年、年度のアタマはキツいんですけどね~。
今年は例年以上にきびしくて。
おまけに今は古傷まで痛んでまして、ブランクが思いっきり
空いてしまいました。
まあぼつぼつですが、今は書けるときに書いてこうという感じで
やってきますので、気長にお付き合い願います。

>姫鷲さま
10万HIT&4周年、おめでとうございます。
あいかわらずの散在ぶり、楽しみに拝見してますよ(^^;。

電撃大王を買ったら、よつばリボルテックの第一報が
載ってました。
あれは絶対「買い」ですね。他のキャラはともかく。
昔フロクについてきた「浅井版よつば」と比べるのも
一興だと思います。

Pinkyは私も注文しました。もちろん両タイプとも。
勢い余って真琴がAQUOSケータイを持ってるテレカまで
買っちゃいましたけどね(^^;。

>shamonさま
荒巻がもらったワインって、ラフィットでしたか。
そちらも相変わらず豪快な買いっぷりで、なんとも
うらやましい限りです(笑)。
5大シャトーは一度飲んでみたいなぁと思いつつ、
小心者につき買えません。
もちろんカネもないですが、自宅で熟成させるのは
環境的に無理です。なんせ置き場がないもん。

『時かけ』については、今回書きたかったところが
書けたので、自分としては一段落ですね。
でもこの作品、まだまだ見るとこあるんじゃない?という
気もしますけど。
そんな問いかけも含めて、参考にしてもらえたら幸いです。
返信する
復活祝いに置き土産 (朝比奈薫)
2007-07-05 22:49:19
 お仕事お疲れ様です。

 私も時かけはDVD本編すら見る時間取れなくて放置状態になってたりしてます…。(姫鷲さん、連絡入れられなくてすみません…今仕事で萎びれているんでス…)

 雑誌フリースタイルに細田監督のロングインタビューが掲載されていて凄い読みごたえがありました(氷川さんのインタビューが的を得ていて読みやすいのもありますが)

 あと、春日司令経由の情報ですが、時かけが今月21日フジテレビで地上波放映ですってよ。うぅ…この調子だと、テレビ放映も見れなさそうだ…。
返信する
早い、早いよ、スレッガーさん! (姫鷲)
2007-07-06 01:44:03
こんにちはー。姫鷲です。
「時かけ」、もう地上波に乗るんですか・・・。
最近は映画をTVで放送するまでの期間が短くなってるようですが、これはちょっと早すぎますよねぇ。何か理由でもあるんでしょうか・・・?
早くやってくれる分には有難いんですがね。快く思わない人もいるでしょうね。

>朝比奈さん
お預かりしていることについては一向に構いませんのでお気になさらずに。落ち着いてからで。
返信する
タイミングとしてはベストかな (青の零号)
2007-07-08 13:00:52
朝比奈さん、どうもご無沙汰です。
せっかくのメールに返信できなくてすいません。
なにしろ最近まで、出歩くどころかPCも見てなかったもんで。
くたびれてるモノ同士ではありますが、なんとか潰れずに
生きていきましょう(^^;。

>時かけ
姫鷲さんの言うとおり、確かに早すぎる気もしますが
それはこの作品が予想を上回るヒットになったからで
一般的な夏アニメと考えると、1年後にはTV放映が
既定路線という気もします。

『時かけ』の場合は夏に見たほうが臨場感が出るので
タイミングとしては最高でしょう。
前日には大林版の『時かけ』も放映されるそうですし
両作品を見比べられるというのはおいしすぎます。
(でも個人的には『さびしんぼう』との比較のほうが
 興味深いんですけどね。)

フジといえば、同じ2006年の夏に公開した大作アニメ
『ブレイブ・ストーリー』のほうは、1年も経たずに
TVで流しちゃいましたね。いやはや。
返信する

コメントを投稿