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Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

アニメの要は「レイアウト」にあり

2008年09月18日 | アニメ
東京都現代美術館で今月後半まで開催中の「スタジオジブリ・レイアウト展」を、
ようやく見てきました。
チケットが日時指定なので、空いた日にポンと見に行くというわけにもいかず
なんだかんだで9月まで延び延びに。終わっちゃう前に行けてよかったです。

朝イチのチケットを事前に購入して当日美術館に行ってみると、入口周辺に
なぜか人だかりが。
まさか入場待ちか?と思ったら、指定時間より早く来たか当日券待ちの人みたい。
館内には列や人だかりもなく、これは楽勝と思ったのですが・・・。
いざ会場に入ると、壁沿いにはびっしりと人の列が。なんだこりゃ?

どうも前で列止めてる連中がいて、しかもレイアウトきちんと見てるわけでもなく
仲間内でくだらねーアニメ談義をしています。しかも大声で。
こういう奴らも客とはいえ、仮にもここは美術館、最低限のマナーは守るべき。
スタッフもさっさと注意しろ!と思いつつ後ろに貼りつき、プレッシャーをかけて
半ば実力行使でどかしました。

しょっぱなからイヤなこともありましたが、展示自体はさすがに一級品ぞろい。
第1部「スタジオジブリ作品のレイアウト」では、トップクラフト時代の作品
『風の谷のナウシカ』から『ゲド戦記』までのレイアウトがずらりと並びます。
(『崖の上のポニョ』だけは、大トリとして第2部のラストに展示。)

単に原図として見るだけでも楽しいし、ナマのタッチやアタリのつけかたなど
描き手の個性が表れていておもしろいんですが、私がレイアウトを見る上で
特に魅力を感じたのは、動きに関する指示の部分でした。

たとえば、『風の谷のナウシカ』OPのメーヴェ飛行を描いたレイアウト。


右からINしてくるメーヴェとその影、それと一緒に流れる雲の落とす影の動きが
絵と言葉によって一枚の図中に指示されています。
全部の中身が理解できなくても、このレイアウトの情報からイメージを広げれば、
見る人が自分の脳内に「滑空するメーヴェ」のシーンを再現できるわけ。
スタッフはここからさらに情報を読み取りつつ、動画に起こしていくんだろうなぁ。

絵コンテがアニメ全体の設計図だとすれば、レイアウトはいわば現場指示書。
これの良し悪しがシーンの完成度を左右するということが、よくわかります。
例えるならアニメーションの卵かな。アニメとしてはまだ生まれていないけど
中をのぞくと羽もクチバシもそろっていて、そのシーンに必要な要素の全部が
備わってるという状態。
今回のレイアウト展では、その中身をのぞいたような気分が味わえます。

個別の作品をあげるとキリがないのではしょりますが、『ナウシカ』の分量が
それなりにあったのはうれしかったなぁ。
逆に会場全体で3枚しかない『魔女の宅急便』や、同じく3枚しかなかった
『On Your Mark』の少なさにはヘコんだけど。
あと、監督によって空間設計に好みがあるらしいのもおもしろかったです。
私見ですけど、宮崎駿監督は高さや奥行きを重視した空間を多用するのに比べ
高畑勲監督はワイド画面を意識した俯瞰や横長の画面作りが多い気がしますね。
ちなみに『ゲド戦記』のレイアウトは宮崎父の作品にかなり近い感じですが、
あれはスタッフが被ってるからか、それとも息子さんが影響を受けてるのか?
う~む、やはり誰がどのレイアウトを描いたか知りたかったですね。

第2部では「レイアウトシステムの始まり」として、この仕組みを導入した頃に
手がけられた作品たちが登場します。
『ハイジ』や『アン』もいいけど、やはりここは『未来少年コナン』につきる!
燃える街、ロケット小屋、泳ぐコナンに、縛られるラナ(^^;。
展示数は少ないけど、宮崎アニメのエッセンスがここに凝縮されています。
あとはギガントかファルコがあれば最高なのに・・・。

という飛行メカファンのうっぷんをわずかながら癒してくれるのは、TV版の
ルパン三世第2シリーズ「死の翼アルバトロス」のレイアウトです。
うぉ、アルバトロスカッコええなぁ・・・と思いながら見とれていると、後から来た
脳天気そうなカップルが二人声を合わせて「あ~、カリオストロの城だ!」
そしてその後から来る人たちも一様に「カリ城」「カリ城」を連発。
はぁ・・・君たちの期待はわかった。でもここに「カリ城」はありませんから。

それにしても、冒頭に書いた客も含めて来場者のマナーの悪いこと。
展示物そっちのけでアニメを見た時の感想を述べ合うオタク、キャラの好みを
黄色い声で力説する腐女子、出所が怪しいウンチクを披露しあうマニアなどを
会場のあちこちで見かけました。もうやかましいやら気が散るやら。
今回はめずらしく音声ガイドを借りましたが、ガイド以上に雑音避けとして
役立ってくれました。(展示構成の田中さんと三好さんの解説もよかったけど)
可能なら各作品のBGMをipodなどに入れて、鑑賞中はそれを聞きながら回るのが
一番いい見方かもしれません。周りもうるさいし、たぶん怒られないのでは?

第2部の最後を飾るのは最新作『崖の上のポニョ』。
いやいや、ポニョもいいけどやっぱり「リサママ」でしょ!
レイアウトには愛車のリサカーも登場、劇中での激走がよみがえります。

地下の展示室ではレイアウトと実際にアニメ化された映像を並べることで
レイアウトがどう映像に反映されているかを見比べることができます。
メーヴェの発進シーンも迫力満点ですが、レイアウトの真価を見せたのは
『魔女宅』のキキがホウキに乗って街角を曲がる「回り込み」のシーン。
レイアウト上にキキの位置が百箇所ほど指定されており、回り込むにつれて
画面上のどこをどういう線に沿って動いていくかが一目瞭然です。
このレイアウトはカタログに載ってないんだよな~、残念。

出口の近くにはジブリ展恒例の写真撮影コーナー、そして特設ショップ。
でも商品の主力はトトロとポニョなので、ナウシカ命の私にはあまり関係なし。
ということで、まずは原寸大レイアウトのナウシカをチョイス。

そんな目をしないでくれ、オレまで悲しくなってくる。


・・・さらに『海が聞こえる』の里伽子のレイアウトも買ってしまいました。

キミ、その表情と胸元の無防備さは天然?それともねらってやってるの?

実は『海が聞こえる』って結構好き。「ヒリヒリした高校時代の思い出」って
ジブリっぽくない話なのが逆に魅力的です。望月さんが一番ノってた頃だし。

図録も当然購入。しかし山口晃さんが解説を寄稿してるのには驚きましたね。

最後に『母をたずねて三千里』のレイアウトに書いてあった「今日の標語」。

「レイアウト そのままやると 失敗す」
「信ずるな たとえ天下の レイアウトでも(字あまり)」

う~む、いろんな意味で勉強になりますなぁ。
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