Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

『ボーンシェイカー』読み始めました

2012年05月09日 | SF・FT
久しぶりに本屋をのぞいてみたら、ハヤカワ文庫SFの新刊コーナーにシェリー・プリーストの
『ボーンシェイカー ~ぜんまい仕掛けの都市~』が1冊だけ置いてあったので、とっさに購入。

実はゾンビ小説ってそんなに好きじゃないんだけど、海の向こう側で評判がいいのは聞いてたし、
改変世界でドリルメカと封鎖都市が出てくる冒険モノとくれば、とりあえず手にとってしまうのが
奇想SFファンのたしなみというものですからね。

で、だいたい100ページばかり読み進んだところですが、うーん。
思ってたほど盛り上がらないというか、自分の期待してた話と違う方向に進んでる気がする。

そもそもタイトルになってるドリルメカがほとんど出てこないとか、序盤で続く生活描写が
いやに長ったらしくて爽快感に欠けるのも、イマイチな理由ではあります。
でも一番気に食わないのは、ドリルで街を壊滅させたと世間に非難される父の汚名を晴らそうと
ゾンビの巣窟にもぐりこむジーク少年の無謀っぷりにも、それをを心配して追いかけるヒロインの
ブライア母さんにも、まったく共感を覚えないというところですね。

特にイラつくのは、ブライアがことあるごとに息子への母性愛と、彼女の父や夫に関する苦い記憶を
くどくどと自分語りするところ。
というか、ブライアのそういう内面をしつこく描写するところに、作者の女性としての自己主張が
透けて見える気がして、冒険活劇として気楽に読めません。

話の展開にいちいち父への反発と夫への怒りが絡んでくるあたり、まるで父権主義へのあてつけを
冒険小説仕立てにしたような印象もあります。
おまけに、そのあてつけも社会への問題提起というよりは、多分に私情がらみというめんどくささ。

私が考えるフェミニズム/ジェンダー小説のおもしろさは、既存の社会や価値観を揺るがすような
新たな視点を提示してくれることにありますが、この作品にはそこまでの深みが感じられないので
そっちの筋から読んだとしても、あんまり楽しめそうにないしなぁ。

・・・などといったん引っかかってしまうと、この物語の発端となった大事件として回想される
「制御できなくなったドリルメカが街を破壊し、その後に取り返しのつかない災厄を撒き散らす」
という挿話も、つまりは男性原理への批判そのものじゃないの?と勘ぐりたくなっちゃいます。

ストレートな冒険活劇にしてはなんだか息が詰まるし、かといって作中に鋭い風刺や問題提起も
感じられないので、このままだとつかみどころのないまま読み進めることになりそう。
この先、息子探し以外のテーマが話の中心に据えられる展開になれば、また印象が変わる可能性も
ありますけどねぇ。

Shan Jiang氏の描いた表紙は、文句なしにカッコいいんですが・・・。
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