Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

幻の傑作アクション映画『ブラック・サンデー』

2011年03月07日 | 映画
全国各地の劇場で1年にわたって名作の数々を上映する「午前十時の映画祭」。
その中でも目玉作品のひとつであり、製作当時に日本での劇場公開がお蔵入りになったといういわくつきの
アクション・サスペンス映画『ブラック・サンデー』を見てきました。



・・・時は1970年代。テロリスト集団「黒い九月」は、年明けにアメリカ国内での大規模なテロを計画し、
すでに下準備を終えていた。
しかしこのアジトをイスラエルの特殊部隊が急襲。居合わせたテロリストのほとんどを殺害してアジトを
爆破するが、このときに隊長のカバコフが見逃した女こそ、この事件の首謀者であるダーリアであった。

作戦中に押収した犯行声明テープから新年のテロを察知したカバコフは、部下とともにアメリカ国内で活動を開始。
そして同じころ、ダーリアもアメリカに入国し、現地協力者である退役軍人のランダーと接触していた。
かつては軍の飛行船パイロットとして活躍し、叙勲もされたランダーだが、飛行機の登場によって活躍の場を
奪われたあげく、ベトナム戦争では捕虜体験で精神に傷を負い、帰国後は妻子にも逃げられるというありさま。
転落した英雄は、自分から全てを奪った国家に対する憎悪を募らせており、そこをダーリアにつけこまれたのだ。

やがてテロ用の物資が到着し、二人は警察やカバコフたちの目をかいくぐって着々と準備を進める一方、
荷を運んだ船長やカバコフの部下を殺害する。
自らも負傷したカバコフだが、部下の死によって犯人への憎悪を強め、脅迫やぎりぎりの外交取引といった
強硬手段で情報を入手し、ダーリアと接触したテロリストを追い詰める。
しかしテロ計画自体は予定通り実行に移され、ランダーは新年の恒例行事であるスーパーボウルの中継を行う
飛行船に乗り込んでいた。

アクシデントを装って基地に戻った飛行船に、ボートに偽装した爆弾を取り付けるダーリア。
この爆弾をスーパーボウル会場の上空で爆発させれば、600キロのプラスチック爆薬によって発射された
22万本のダーツの矢が、場内の8万人を一瞬で蜂の巣にする。
これがランダーの暖めてきた、アメリカに対する壮絶な復讐計画だったのだ。
会場へと接近する飛行船と、ヘリコプターでそれを追うカバコフ。
ランダーたちの悲願は成就するのか?カバコフは大量殺戮を阻止できるのか?

そして巨大な飛行船が、ついに8万人の頭上へと姿を現した・・・。


製作当時に世界的な問題となっていた「イスラエル・パレスチナ問題に関係するテロ活動」をテーマにした
映画ですが、内容的にはその後にアメリカで発生した数々のテロ事件をも思わせるところがあり、いま見ると
別な意味でのリアリティをひしひしと感じさせます。
話の組み立てはやや荒っぽいですが、山あり谷ありのサスペンスとアクションでぐいぐい引っ張るところに、
名匠ジョン・フランケンハイマー監督の豪腕が光ります。

そしてなんといっても強烈な印象を残すのは、前代未聞とも言うべき残虐な大量殺傷計画!
なにしろ“超大型の対人志向性地雷を、8万人の頭上で爆発させる”という作戦ですから、その惨状たるや・・・。
そんな非道な爆弾を思いついたことを、まるで自らの優秀さの証明するかのように自慢するランダーの狂気と、
様々な障害にもかかわらずテロを実行しようとするダーリアの執念にはぞっとしますが、これも元をただせば
イスラエルと、その後ろ盾となっているアメリカの行動が招いた結果であり、アメリカ軍人として、あるいは
パレスチナ難民として二人が味わった悲劇と苦悩の深さの裏返しにもなっています。
短いながら作中でもこの点についての指摘がされていて、単なる勧善懲悪に終わらないのもいいところです。

さすがに時代的な古さは否めない『ブラック・サンデー』ですが、テロとカウンターテロを描いた映画としては
非常によくできていて、今でも高く評価されるのもうなずけます。
同種のテーマを扱った『攻殻機動隊』や『東のエデン』それに『コードギアス』といったアニメを見る上でも、
大いに参考になると思います。

なお、「午前十時の映画祭」は地域によって上映作品・上映時期が異なります。
『ブラック・サンデー』は府中と横浜での上映が終了していますが、海老名では3/11(金)まで上映。
その後各地で順次上映されますので、公式サイトで確認してください。
この機会に幻の名作を、ぜひ劇場で!

なお、かなり先の話になりますが、六本木では2012年の1/7(土)~1/13(金)の上映が予定されてます・・・って、
劇中のテロ事件とまるっきり同じ時期じゃないか、なんかやだなぁ(^^;。

ちなみに今回の作品リストには『ミツバチのささやき』も入ってたんですが、本国でのニュープリント製作が
大幅に遅れたため、残念ながら上映中止に。
『マイマイ新子と千年の魔法』とも関係する作品だけに、メディア芸術祭受賞後の早い時期に見たかった・・・
という悔しさはありますが、今後のニュープリントでの上映&DVD発売を期待しましょう。

きっとそのころには『マイマイ新子と千年の魔法』のブルーレイディスクも出ている・・・といいなぁ(笑)。
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