私が住む県には『動物の愛護及び管理に関する条例』という
なんとも時代錯誤も甚だしい条例がある。
この条例によるとその目的は、
「動物による人の生命,身体及び財産に対する危害を防止する」
とある。
「動物の愛護」というよりむしろ「動物の管理」のための条例といえる。
注目すべきはその中で「特定犬」という名称で危険な犬が指定されて
いることだ。特定犬とは次のいずれかの要件を満たす犬を指す。
アにある「規則で定める犬種に属する犬」とは具体的には次の8つだ。
①秋田犬 ②紀州犬 ③土佐犬 ④ジャーマン・シェパード
⑤ドーベルマン ⑥グレートデン ⑦セントバーナード
⑧アメリカン・スタッフォードシャー・テリア (アメリカン・ピット・ブル・テリア)
イにある「人に危害を加えるおそれのある」体高及び体長とは、
「体高60cm以上、かつ体長70cm以上の犬」を指す。
したがって、アフガンハウンド、ボルゾイ、アイリッシュウルフハウンド
といった犬も特定犬ということになる。
さらにウにあるように、危なそうな犬だと判断すれば、どんな犬でも
特定犬というレッテルを貼ることができる。
さらに特定犬を飼うにあたっては「飼い犬を逃げるおそれがなく,かつ,
人に危害を加えることのない」ように「おりの中で飼養すること」が義務
づけられている。
さらにそのおりの構造についても、詳細に決められている。
①上下四方が囲まれていること。
②十分な強度を持っていること。
③人に危害を加えられない構造になっていること。
この条例には「特定動物」という言葉で、ライオン,とら,ひよう,くま,
ぞう,わになどに対する規則を定めている。ライオンやとらなどと同列
に特定犬が扱われているのだ。
『動物の愛護及び管理に関する条例』に見られる基本的な発想は、
特定犬という危険犬種を、頑丈なおりに閉じ込めておけば、人々の
安全は守られるというきわめて単純で誤った考え方だ。
そもそも特定犬として認定した根拠が、曖昧であり全く理解できない。
選ばれている犬種は、闘犬、猟犬、使役犬などに分類されている犬
たちだ。イをみると、大きな体型の犬は危険だということらしい。
そもそも『危険犬種』という概念そのものがナンセンスである。
犬種によって一律に犬の性格や行動が決まるわけではない。
犬種とは、人間が犬に求める一つの理想の姿に他ならない。
人間の欲望の数だけ、犬種があるといってよい。
その犬の性格や行動は、ブリーダーがその犬に何を求めるか
によって決まってくる。アメリカンピットブルは、アンダーグラウン
の闘犬としてブリーディングされたため、凶暴な性格の固体が生
まれ「危険な犬」というレッテルが貼られてしまった。
その昔、ピットブルは「Nanny Dog(子守り犬)というニックネームで
な犬種」と考えられていたという。「大草原の小さな家」のインガルス
家の愛犬もピットブルであったと言われている。(カニング亜紀)
もともと危険な犬が存在するのではなく、危険な犬を作るのは
いつも人間なのだ。ブリーダーに限らず、飼い主も自分の犬を
危険な状態の犬に作り上げていることがある。
飼い主が食事や運動といった基本的な世話を怠ると、犬は大きな
ストレスを抱えてしまう。幼犬のうちから、他の人や犬と交流させ
社会化をはからないと、成犬になってからから犬や人とトラブルを
引き起こす可能性が非常に大きくなる。
犬が人を噛む事件を本当に減らそうと思うのなら、犬を人から
隔離するのではなく、人と犬が安心して暮らせる社会を構築す
るよい方法を考えることだ。
飼い主に対する働きかけは、犬を管理することを強調するよりも、
犬のしつけ方などの啓蒙活動をした方がよほど効果がある。
街中にドッグランがあれば、犬は運動ができストレスを発散すること
ができるし、多くの人が犬を知る良い機会となる。
そろそろ『動物の愛護及び管理に関する条例』を新しい視点に立って
改正したらどうだろうか。
↑↑↑のバナーをクリックしてもらうと励みになります!