オイラは、ボイラ 寒がりボイラ

6月から9月まで迄の4か月間は、失業状態ですが、冬期間はボイラーマンとして出身高校を暖めています。

動物園で、素顔の彩夏を知る。

2017年03月17日 08時50分04秒 | 北のポエム・北海道発のエッセー
 横浜の金沢動物園は、草食動物が中心の動物園のようであった。
広い敷地にたくさんの羊、カモシカ、ヤギ、牛などが放牧されていた。彩夏のお目当てのキリンは2頭の子供キリンを入れて
全部で4頭いて、首を長くして草を食べていた。ちょうどお客の近くに餌を置いているのでキリンの捕食している顔が、間直で見れた。
確かに、彩夏の言うようにキリンは愛くるしい顔をしており、ずっと見ていても飽きない。いつも人だかりが出来る場所だった。
ほかにはカンガルーやコアラなども見ることが出来た。以前テレビで、北海道の釧路にいる丹頂鶴を見たことがあったが、生で丹頂鶴も
見る事が出来た。そもそも美也は、動物園や水族館は好きでは、なかった。子供の時に小学校の見学旅行で行って以来であった。
しかし、カップルの初デートの場所には絶好な所だと、この時感じた。入園料も安く、二人で時間を楽しく過ごせて、動物というアイテムで、
カップルがより親密になり、接近しやすい環境だ。知れず知れずに、美也と彩夏の距離が縮まっていくのが判った。

 動物園は金沢自然公園内にあり、少し外れるとバーベキューが楽しめるエリヤがあったりして、静かな場所もたくさんあった。
二人は、公園内を歩きながら、色々な話をした。彩夏は、鎌倉生まれの鎌倉育ちで父親が銀行員で、家が鎌倉駅から少し離れた
源氏山公園付近にあると言っていた。鎌倉高校を出てから東京でアパレルの店員を2年ぐらいした後、田舎が恋しくて家に戻り、
今は、江ノ島のカフェで働いているとの事だ。家からバスと江ノ電で通っていると言っていた。

 美也が北海道の高校を3月に卒業してフェリーに乗り、あてもなく東京を目指し、浦安の工場に就職が決まった話をすると、彩夏は、すごく
驚き、尊敬の眼差しで美也を見入った。「そういえば、美也君、少しなまってるね、フゥフフ」と笑った。「そう?結構気にして標準語
使うようにしてるんだけどね。」「わかるわよ、こっちの人じゃないアクセント使う時があるもの。」美也は少し彩夏との距離が生じたと
感じた。まだ、東京人に成りきれていない自分に少し落ち込んだのだ。それを察した彩夏は、「美也君、北海道のクマってすごく大きいって
ほんとなの?」「私、テレビで見たんだけど、川で魚を捕ってる姿がメチャ大きかったよ。」と聞いてきた。美也は、自慢げに話し出した。
「ヒグマは大きいよ。立ち上がると2~3mあり、体重は300~500Kgもあるんだよ。特に川で鮭を捕って食べているヒグマは、
メチャクチャ太っているんだ。」「本州のクマはツキノワグマで、胸に白い三日月の様な模様があるよね。」彩夏は驚いた。「北海道の人って
クマに詳しいんだねぇ。」美也は自慢げな表情を見せた。中学3年の夏休みの自由研究でヒグマの生態について調べたのを覚えていたのだ。
「ねえねえ、北海道のお話をもっと聞かせてぇ。」と彩夏は甘えるようにせがんだ。その様子が、とても23歳になろうとする女性には
見えなかった。明らかに自分より、年下の女の子を演出しているように感じる美也であった。

 彩夏は、昼食に美味しそうなサンドイッチをたくさん作ってきた。
公園の人のいない一角のベンチに座り、「私、料理はあまりしないんだけど、サンドイッチだけは得意なの。」「たくさん食べてね。」と
彩夏は包みを広げ、美也に言った。彩りがすごく綺麗である。ハムサンドを1つ摘んで食べた美也は、「旨い、これジューシーな味。」
と叫んだ。ニコニコしながら喜びを隠せなかった彩夏は、「へへへえ~、私もたべょ~と」と再び、年下の女の子を演じたのだった。
 
 昼食後、「美也君、これからドライブしようか。」と彩夏が言ってきた。「いいよ。別に。」と美也は言った。美也はペーパードライバー
なので、彩夏に主導権を任せた。「それじゃ、油壺なんかどうかな?」と彩夏が提案した。「俺、よくわからないから任せるよ。」と
美也は言った。油壺までは一般道を走り、綺麗な海岸線を通り、絶景の連続だった。油壺マリーナには、大きなヨットや超豪華なクルーザー
が停泊してあった。「私の夢はねえ~、将来、こんなクルーザーで沖縄の島巡りをしたいの。」「宝くじが当ったら、真っ先にクルーザーを
買うわ。」「そして優雅な毎日を過ごし、時々停泊した港で、バイトして稼ぎ生活していくの、自由気ままでいいでしょう。」と少女の
ような目を輝かせて、美也に訴えるように話した。彩夏にこんな一面があることに、驚かされて美也は、ただ頷くだけだった。
30分位、油壺でクルーザーや海を眺めた後、彩夏は高速道に乗り、JR横浜駅まで送ってくれた。まだ4時半過ぎだが今夜、家族の用事
があり、車が必要で早く帰らなければならないらしい。「今度又、逢おうね。連絡待ってるわよ。」「今日はすごく楽しかったわ、さようなら。」
と言い残して、彩夏は帰っていった。JRとメトロで浦安まで帰ってきた美也は、ホワイト餃子浦安駅前店で餃子定食を食べながら、今日一日で、
素顔の彩夏を、少し知り得たような気がした。





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