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台湾食材 BETHESDA KASHIWA

美味しい台湾食材をはじめ何だかんだ日々のこと書き綴ります。
クリスチャンファミリー

斉々哈爾陸病への径 「哀しき夕陽、原作 能瀬敏夫」より

2021-08-11 08:41:36 | 祈り
 斉々哈爾陸病への径 「哀しき夕陽、原作 能瀬敏夫」より 演習が終わると、私と浄土は同じ東安の師団司令部に転属した。その宿舎は燃えるように咲き誇るカンナの側に半分土に埋もれて並んでいた。 司令部はいわば軍の管理部門なので、私らが想像する軍隊とは異質な、会社のオフィスのような感じであった。何よりも驚いたことに、ピチピチと若い純粋の日本女性が数名立ち働いていたことである。彼女らは直接日本からはるばる応募して渡満したり、現地で厳選の上採用されたお嬢さん達なのだが、このように緊迫した情勢の中に、現に日本女性が働いていることに不思議な安堵感を覚えた。 大陸では九月の声を聞くと急に空気が冷え冷えとする。突然転属命令が下った。私と浄土、その他二名の計四名であったが、私と浄土は行く先が同じ黒竜江省の斉々哈璽であった。私は斉々哈璽陸軍病院の経理科、浄土は同じ斉々哈璽の通信隊の主計であった。同じ斉々哈璽なのでほっとしたが、実は地理的には随分離れているらしかった。 私らは常日頃どんな命令にも対応できる体制を整えていたから、別に動揺もなく早速出発の準備を始めた。折角この地にも、ここの仕事にも慣れ始め、特にタイピストと称する日本人女性の勤務する司令部には大いに未練があったのだが、北満の古都斉々哈璽、そしてそれが陸軍病院と聞くと、一日も早く赴任してみたい気にもなった。私達は翌日二人揃って各上官に申告し、同僚にも軽く挨拶をして斉々哈璽行きの列車に乗った。初めて乗る民間の列車には煙草の煙が充満し、中国語の甲高い会話が飛び交い、衣服に染み付いたにんにく臭と共に喧騒が車内に渦を巻いていた。 浄土君が赴任する通信隊は斉々哈璽の街からは大分外れにあるらしく、兵隊が駅まで出迎えているとのことであった 。私が赴任する陸軍病院は駅の直ぐ近くだと、庶務係が簡単な地図を書いてくれた。      斉々哈璽に着いたのは陽が落ちたあとのどんよりと薄い明るさのころであった。斉々哈璽駅は当時の満州では珍しく近代的ながっしりと風格のある建物で、駅前は広場と云うよりも、それから前方は全て広々として、広野の中心を道路が通っているといった感じであった。それでも広場の更に外側には、この広場を守るように街路樹が立ち並び、その街路樹の向こう側に巨大な煙突が見えた。どうもあれが私が目指す目的の病院らしい。 駅前で浄土君は出迎えの兵隊の案内で汚れた幌の馬車に乗った。私は見上げるように彼の手を握り「元気でなぁ」と力を込めると、その手を通して彼の温もりが伝わってきた、御者の「チョッ」という掛け声に馬は一瞬首を振り、やがてがらがらと動き出した。これが最後になるかも知れないと漠然と思った。 私は気持ちを切り替えると雑嚢から地図を出し、それを頼りに病院に向かった。客を乗せて走る馬車や洋車がひっきりなしに埃を巻き上げる、その「ヤッ チョッ」と、甲高い掛け声が乾いた空気に交錯して、何か別世界を歩いているような気分であった。 暫く進むと右側に樹木が並び、その向こう側に営門らしき形がみえ、更にその後ろから覆い被さるように巨大な煙突が見えて来た。近寄ると、営門には「斉々哈璽陸軍病院」と墨痕鮮やかに書かれていた。 衛兵の案内で本部に向かった。本部の玄関前に夾竹桃が爛漫と咲き乱れていた。玄関を入ると廊下は、見事に磨かれて前方と左右に続き、奥の暗がりに白衣姿の看護婦の行き交う様子が見えて、正に病院であることを実感した。 庶務科長石田大尉に挨拶をすると、早速経理科に案内してくれた。経理科長は工藤少尉、その下に荒井五一郎准尉、吉原、石塚の両軍曹、そして他に軍属、兵、看護婦ら数名が助手として勤務していた。工藤少尉は「院長閣下に申告するように」と、院長室に案内した。 「斉々哈璽陸軍病院勤務を命ぜられ只今到着しました」  院長井上文夫は白髪頭の好々爺だが、柔和な顔が一瞬きっとなり、私を一瞥すると直ぐ元の優しさに戻り「ご苦労、ご苦労、宜しく頼むよ」と言われた。  当時斉々哈璽陸軍病院には、院長以下軍医、薬剤、衛生、経理、療工の将校、下士官、兵のほか陸軍看護婦、日赤救護班のほか炊事場、温室、洗濯場、ボイラー室等に多くの中国人や朝鮮人が勤務していたから、職員だけでも相当の大所帯であった。  病院の裏になだらかな小高い丘があり、その上り詰めたあたりにブランコと二、三の木製のベンチが置かれていた。そして、時には散策する患者の白衣姿や、それを支える看護婦の姿も見え隠れした。  私は夕暮れ時よくこの丘にのぼった。周囲が遥か稜線まで一望に見渡せたし、この丘を囲む密集した満人の生活音が、犬の遠吠え、鉄工所の金属音、子供の泣き声なども入り混じって地を這うように聞こえてきた。  やがて数ヶ月が過ぎると、看護婦の表徴である白衣が、くすんだ緑色に変色することになる。裏山に大きな鉄鍋を持ち出して、終日白衣を雑草で煮込んだのである。清潔な看護婦の表徴白衣は、たちまち複雑な汚れた緑色に変色した。口の悪い患者等が言う 「白衣の天使が緑の鬼になった」 しかも裾長の清潔な白衣は見るからにヤボッたいモンペ姿に変った。従って日常生活の中でも徐々に戦争の機が熟しつつあるのを実感した。 ところが、そんな中にもささやかな少女心は活きているらしく、染色を逃れた純白の帽子を隠し持った少女らは、休日などに婦長の目をかすめては持ち出して密かに懐かしんでいたのである。 (シベリアへの抑留、極寒の地での凍土と病いとの戦い。生き抜いた者達へ渡された 「帰国の途」という切符とは・・・チチハル陸軍病院経理勤務、そして終戦。ハルピン への移動・・・、病院開設・・・。傷病兵、難民で施設はあふれ、修羅場と化した。 「哀しき夕陽、原作 能瀬敏夫」)
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葦のかご教会水曜讃美祈禱会(2021年7月21日)能瀬熙至兄弟
https://www.youtube.com/watch?v=_M4MP_KELdI/
 
 
【賛美】主の計画の中で
Seekers (Within Your Plan
주님의 계획속에서
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【賛美】いつもいつまでも
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【賛美】あなたが共に
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【賛美】善き力にわれ囲まれ
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항상영원히까지
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