ある日のこと
今日はバニラと二人きり 散歩にでも行こうかなぁ
「バニラちゃん 散歩行く?」
アヘアヘして胴輪を着けさせます ハイ 装備OK!
黒光りのバニラは黒皮のハーネスが良く似合う
(実はこれが4本目 最近はよく噛み切ってくれます)
私もしたくします お気に入りの帽子もかぶり
さぁ お出かけ
裏道を通って 少し離れた山へ行ってみましょう
最初から グイグイ引っ張ります
小声で「バニラ ゆっくりね ゆっくり・・・」
それでも 彼女は アヘアヘ ハーハー
息遣いも荒く赤い舌を出し進みます
この喜びようはナニ?そんなにもうれしいの?
ハイハイわたしもうれしいわ でも ゆっくりね
その時 その時はゆっくりになるのに
すぐに力が入ってしまいます
でも 山道になれば自然にゆっくりなるはず
と思いきや まだ元気 一気に山を登ります
遠くにワンちゃんを見つけました
「バニラ お友達よ」
ところがそのご主人は私に手で合図します
右 or 左?
こちらも動作で答えると 逃げるように他の道を選びます
「バニラちゃんは 怖くないわよ 失礼ねっ!」
それでも 「待て!」とか「ゆっくり!」とか言いながら
時々 イチゴを食べさせながら上を目指し登ります
その前に引き返せばよかったのかもしれません
私達はその後 下る道を見つけ下山したのです
その速かったこと 加速に加速がついて
周りの景色も目に入りません
一気に下山させられました
ずいぶん遠くに来てしまいました
それからが不安です
タクシーを呼ぼうかしら 電話もつながりません
それでも平らなトコに出てきたことだし
バニラも もう疲れたことでしょう
きっと ゆっくり歩くはず
普通のわんちゃんのように歩こうね
ところが 彼女は興奮のきわみ
血の気の多いバニラは前にもまして私をグイグイ
引っ張ります
私もだんだん声が大きくなります
「ゆっくりね」
「ゆっくりよ!」
「ゆっくりしなさいっ!」
「バニラ待てっ!」
「バニラ いちご!」
と叫びながら 引きずられて移動します
右手で電柱とか ポールとか ガードレールとかに
つかまりながら進みます
やっとたどり着いたその国道1号線の歩道は
人も大勢歩いています
興奮しているバニラは その人々に飛びつきます
それを止めながら
水溜りに飛び込び 寝転ぶこの子を
ひっぱりながら くわえた菓子袋を取り上げ
つぶれてしまったイチゴであやしながら進みます
会う人毎に「元気のいい犬だこと」
「黒光りして、きれいにしているね」
私はもう疲れはてて
ニコニコ、ハーハー うなずくだけ
とにかく家にたどり着きたい
その間 1時間20分二人で家に倒れこみ
恥ずかしくカッコ悪い散歩の幕は閉じました
でも そのころだって夫はまだ 勘違いしてやみませんでした
このこは まだ子供
そのうち 劇的な変化があらわれ立派なレディになると・・・
6歳まで「ちゃんちゃ」でした