うちらのひとりごと。

酒と映画をこよなく愛する、多趣味な男(ことら)ときまぐれ女(こじか)のブログです。

永遠の0

2013-12-31 02:15:00 | 映画
※当ブログは基本的にネタバレありで書いてるので注意してください。



「低空より敵機接近!」
「ゼロだ!」
無数の銃弾をものともせず、更に加速し敵空母に迫る零戦21型…

こんなシーンから始まる「永遠の0」。
予備知識は全くなく、原作も読んでなかったので、似た題材を扱った「俺は、君のためにこそ死ににいく」くらいの作品に思ってました。
ところが、まぁ、「やられた~」でしたね。
映画でここまで泣いたこと無いっていうくらいの涙腺爆発映画でした。
…まぁ、歳喰ったせいもあるかもしれないけど…。

純粋な戦争映画ではなく、特攻隊賛美でも零戦賛美でもなんでもなく、かといって、決してお涙頂戴映画でもなく。
特攻によって命を落とした宮部久蔵という人物を巡る、当時の人々、現代まで生き残った人々、その子孫達の壮大なヒューマンドラマでした。
基本的には現代(2004年)を中心に話が進むので、感情移入もしやすかったかもしれません。


祖母のお葬式の日、祖父の、普段では考えられないような号泣振りを怪訝に思った健太郎は、祖父が血縁関係になく、本当の祖父が居ることを知ります。
その名は宮部久蔵。
特攻により還らぬ人となった宮部のことを調べ始めるものの、伝え聞く人物像は「海軍一の臆病者」などネガティブなものばかりだったのでした…。


宮部は、「お国のために命を賭する」とする日本海軍にあって、「絶対に生き延びる」という考えを持った希有な存在。
「私一人が死んだところで、国にとっては大したことではありません。ですが、私の家族は、私が死ぬと路頭に迷ってしまうのです。」
妻との約束…「必ず生きて還ります。たとえ死んでも、必ず還ります。」
この言葉がすごく深いんですよね…。

宮部はかなり優秀なパイロットでもあったので、新兵の教官も勤めていました。
ところがその時はすでに戦況がかなり悪く、空戦の訓練ではなく特攻の訓練のみ。
若い教え子達を死なせたくない宮部は、どんなに優秀であっても「可」を出しません。(ここでもいいエピソードがあるんだけど省略)
物語後半、配置換えがあり、宮部は特攻機の直掩(護衛)の任務に就くことに。
それまで守ってきた教え子達が次々と死んでいく…自分は何も出来ずに見守っているだけ…それでも家族のために生きて還らなければならない。
次第に、自分の命はたくさんの若い教え子達の犠牲の上に成り立っていると考えるようになり、だんだん心が折れていきます。

宮部の心に触れた人たち…その人達は今でも宮部への想いを抱いて生きています。
なにがなんでも生き延びる努力をしろと教えられた井崎。
「可」を出さない宮部に不信感を抱いたものの、訓練で死んだ仲間の誇りを守った宮部に尊敬の念を抱いた武田。
自信過剰だったものの、模擬空戦で叩きのめされ、それ以降「宮部を殺すまでは死ねない」と考え、生き延びた景浦。
そして大石…。

自分が殺すはずだった宮部が特攻に志願し、景浦は激昂します。
ならば最期まで見届けてやる。
宮部に近付く敵機が居れば、機体をぶつけてでも守ってやる。
ところが景浦の機体はエンジントラブルを起こし、宮部を見失ってしまうのでした。
その景浦がずっと抱いていた疑念…「何故宮部は自機の52型ではなく、21型に乗って出撃したのか。」
そして、その21型のパイロットこそ、健太郎の祖父である大石だったのでした…。

宮部は過去に大石に救われています。
また、「もし生き延びることが出来たら、なんでもいいから人の役に立つ仕事がしたい。」と語っていました。
おそらく宮部は、大石に未来を見たのでしょう。
自機のエンジンの不調を見抜いた宮部は、大石に機体を交換して欲しいと頼みます。
「この21型は、私が最初に搭乗した機体なのです。最後はこの機体で出撃したい。私の最後のわがままを聞いてくれませんか?」と。

自らが生き延びる可能性があったのに、それを分かっていながら手放した。
その考えは本人にしか分かりません。
もちろん家族のことを忘れた訳ではないでしょう。
その場から逃げたかった訳でもないでしょう。
ただ、目の前で若い命が散っていく…それでも自分は生き延びている…その状況は耐え難かったのだと思います。

52型は途中でエンジントラブルを起こし、大石は生き延びました。
機体には「妻と娘を救ってやってください。」という宮部からのメモが…。
戦後、大石は宮部の妻である松乃を探し、生活資金を援助するのでした。
最初は心を閉ざし、拒絶していた松乃でしたが、次第に心を開きます。
その時、宮部の約束「死んでも必ず還ります。」を理解するのでした。

宮部自身がそこまで考えていたかは分かりませんが、結果として、宮部の心に触れた人たちは、宮部の家族を守っています。
それが「死んでも必ず還ります。」という約束になっているんですね。

大石は語ります。
「我々だけが特別なのではない。あの時代、どこの家族にも物語があった。」
この作品自体はフィクションでしょうけども、よく似たお話は無数にあったそうです。原作者によると。
平穏無事に過ごせるということが、いかにありがたいことか、改めて考えさせられました。
宮部の言葉
「その時日本は、どんな国になっているでしょうね…。」
今の日本が、宮部と言わず、戦中に日本のために戦った人々が夢見た日本であるかどうかは分かりません。
ただ、原作者の下記の言葉はとても心に響きました。
「仕事で辛いことがあっても、ちゃんと家に帰れる。すると、家族の顔を見られる。
このことがどれほど恵まれた幸せなことか。宮部久蔵はそのことだけを望んで生きてきて、それを叶えられなかった男ですから。」



「低空より敵機接近!」
「ゼロだ!」
無数の銃弾をものともせず、更に加速し敵空母に迫る零戦21型。
米国の新兵器である近接信管付きの銃弾が全て誤作動し、まったく意味をなさない。
「奴は弱点を知っているのか?!」
「そんな訳あるか!さっさと撃ち落とせ!」
狼狽する米兵。
ついに被弾する零戦。
その瞬間急上昇し、背面から敵空母に向かって急降下。
艦体中央に向かって真っ直ぐ突進する零戦。
コクピットの宮部の表情は、怒っているような、悲しんでいるような、喜んでいるような…。
そして笑みすら浮かべて…



…まさか最期の特攻を映像化しているとは思いませんでした。
戦闘シーンで泣いたのなんて初めてだわ…。
もぉ、「あかんあかんあかーんっ!」って感じで。



ことらとこじかで激論になった事柄がひとつありまして。
こじか「それぐらい分かるやろ~。」
ことら「いやいや、竹野内のルーツのCM分からんくらいやから、絶対分からんって。」
なにかと言うと、戦後に松乃と清子を助けた「血まみれの刀の様な物を持った人」。
これが誰かが分かるかどうかというお話です。
劇中「その刀は人の血を吸ってるぞ。」って台詞ありましたよね。
ということは…?

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