オータムリーフの部屋

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ヒマラヤ 運命の山

2011-08-07 | 映画

 

 

世界的登山家、ラインホルト・メスナーの1970年のナンガ・パルバート登攀を、メスナー自身の原作を元に再現した映画「ヒマラヤ 運命の山」を見てきた。ナンガ・パルバートはヒマラヤ山脈西側のパキスタンにある峰。高さは世界第9位だが世界最大の標高差4500mのルパール壁がある。実際にナンガ・パルバートでロケをした高山の映像は、細部までくっきりと見え、迫力満点。
 山岳映画としては事実を基に製作した「運命を分けたザイル」、「アイガー北壁」、ガストン・レビュファ主演の記録映画「星にのばされたザイル」などが印象深い。特に「運命を分けたザイル」は基になった事実自体が想像を絶する奇跡に近いものだったので、臨場感溢れる感動の映画に仕上がっている。「星にのばされたザイル」も長身のガストンのクライミングの身のこなしが美しい映像と相まって山岳ファンでなくても魅了されるだろう。
それらに比べて、「ヒマラヤ」は遠征隊を率いるヘルリヒコッファー博士とメスナーの確執がテーマで、人間臭いライバル意識や名誉欲も持ち込まれて、すがすがしい映画とは言いがたい。
 
もともと傲慢でアクの強そうなメスナーをチームに入れたのが間違いだし、メスナーも逆らってばかりで自己中過ぎる。彼はその後、軽装備、単独で登るメスナースタイルを編み出し、それが現在の登攀スタイルの主流になった。協調性や謙虚さが要求される従来の登山スタイルにはもっともふさわしくない人物だ。
 メスナーの原作を基にしているから、ヘルリヒコッファー博士に批判的なのは仕方がないにしても、メスナー兄弟の遭難、そして弟の死は彼ら自身の暴走により、起こるべくして起こった悲劇だろう。
その後の裁判で弟の死の責任を問われたということだが、どんな罪状になるのだろう?
遺棄?、過失致死?自分にも死の危険が迫っていたのだから、責任云々の話ではないように思うのだが・・・・
その後メスナーはナンガ・パルバートに弟を探して登り続け、単独登頂も果たした。弟ギュンターの遺体は35年後、発見された。

メスナー氏の言葉
「どんな悲惨なことがあっても人は立ち上がれる。そんなポジティブなメッセージを伝えたかった」
「登山をやめても、弟は生き返らない。自然は怖いが、(人間に)悪意を持っているわけではない」
「山は山であり、山でしかない。山を理想化したり、矮小化したりするのは間違いだ。そこは感情が持ち込まれる場所ではない」
 大災害に見舞われた日本へのまなざしも鋭い。
「自然は失敗をしない。失敗するのはいつも人間です」
 だが、こうも続ける。
 「失敗から学び、自分の力を強くすることで、私は夢を実現してきました」
 69年にアルプス・アイガー北壁を世界最短記録(当時)で登頂。86年には人類初の8000メートル峰14座完全登頂を果たした。南極大陸やゴビ砂漠を歩いて横断するなど、最小限の装備で多くの冒険を成功させている。現在66歳。


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