オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

ぽっぽや 浅田次郎

2011-04-10 | 映画
 

二度目の視聴だ。
一度目はピンとこなかった。今回はブログを書こうと思って、気合を入れて見た。

主人公の男は不器用で仕事にクソ真面目すぎる。娘や女房の死に目にも立ち会わないで駅長をやってる。一体なんで駅長の仕事がそんなに大切なんだ?
そんなかっこ悪い男を大好きな健さんが演じているのがまた気に食わない。完全なミスキャスティングだね。

融通の利かない、真面目だけがとり得の愛すべき男にぴったりの俳優は?
娘とのメルヘンチックな絡みもあるのでいい男でなければならないし・・・・
やはり健さんかなあ・・・・・江利チエミのテネシーワルツが流れる。映画にこだわってテレビドラマには出演しなかった健さん。やはり健さんのために作った映画なのかな?

乙松のぽっぽや人生は戦後の日本人が歩み続けた道筋でもある。焼け跡から立ち上がって、日本復興のためにがむしゃらに働いた日本人。高度成長の時期、猛烈会社人間はエコノミックアニマルと言われて世界に飛び出して行った。
凄まじいインフレや炭鉱廃坑、合理化、組合つぶし、石油ショック、国鉄に代表される国営企業の民営化、産業構造の変化は乗り遅れたものを容赦なく切り捨てる。

どんなことが起ころうと何とか踏ん張って、仕事に自負と誇りを持っていた日本人。そして行き着いた先は?
現在の不況、リストラ、格差社会、家族の絆の崩壊、そして未曾有の大震災と原発事故。
今回の大災害から果たして立ち直れるのだろうか?若者が疲弊しているのが気にかかる・・・・
鉄道に身を捧げてきた乙松の終着駅は幌舞線の廃線と孤独な退職であった。

娘や女房に何もしてやれなかったと言う後悔の念が、死んだ娘の幻想を作り出す。娘は限りなく優しく、慈愛に満ちて乙松を許す。
自分を「理解して欲しい、許して欲しい」と言う身勝手な願いが生み出した幻想ではあるが、この娘とのふれあいが乙松の魂の救いになっている。
現実に存在する今風の娘たちは決して乙松を許しはしないだろう。
孤独な死は乙松にとって心の平穏を手に入れることができる唯一の選択肢だったのかもしれない。

娘雪子の亡霊は、乙松がたった二ヶ月の娘に贈った与勇輝の人形を持って現れる。
来週、横浜高島屋でやっている与勇輝の展示会を見に行こう。





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