オータムリーフの部屋

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ザ・思いやり

2016-01-16 | 映画
在日米国人が製作した映画が話題となっている。「ザ・思いやり」、いわゆる「思いやり予算」に疑問を投げかけるドキュメンタリーだ。
駐留経費の負担は、1960年に発効した日米地位協定の24条で定められた。日本が基地や施設用地の借地料を、米国は基地の維持費や作戦の経費を、それぞれ負担するとされ、日本に人件費や光熱水費の負担義務はなかった。だが米国は財政赤字や世界的インフレを背景に一層の負担を要求。1978年、金丸信防衛庁長官(当時)が「思いやりというものがあってもいい」と発言して、基地従業員の人件費の一部62億円を負担したのが始まりだ。その後、施設整備費や光熱水費なども加わり、現在は5年ごとに額を大きく見直している。2011-15年度は年平均1866億円を支出。日本政府は昨年、16- 20年度分の減額を求めたが米側は受け入れず、逆に総額で130億円増の同1893億円で決着した。
 
映画では、基地内のリゾートマンションのような住宅から、学校、教会、ゴルフ場、銀行、ファストフード店に至るまで、米兵が快適に暮らすための数々の施設が日本の税金で整備されていると説明する。そして、米カリフォルニアの街頭で「この事実、どう思う?」とインタビューを敢行。「(在日米兵)1人当たり1500万円? ワオ!」「国際開発に使え。その方がより平和的だ」。問われた米国人やフランス人、インド人らは驚いたり、自分のことのように憤ったりする。
 
日本が駐留米軍のために支出する経費は思いやり予算だけではない。15年度予算では、(1)駐留関連経費(自治体に対する周辺対策費や漁業補償費など)の1826億円(2)米軍再編関係経費(普天間飛行場の辺野古移転費用や米海兵隊グアム移転費用など)の1426億円(3)日米特別行動委員会(SACO)関係費の46億円などがあり、思いやり予算と借地料を合わせると総額は7000億円を超える。
 
日本の負担額は、米軍が駐留する国々の中でも突出している。米国防総省が、同盟27カ国が02年に予算計上した「米軍駐留に対する支援額」を独自の基準で算出、比較したところ、日本の「支援額」は44億1134万ドル(当時の為替レートで5381億円)でトップだった。次いで、ドイツが15億6392万ドル、韓国が8億4311万ドル、イタリアが3億6655万ドルと続く。光熱水費を支払う国は日本だけだ。
 
琉球大の我部教授は「米国にとって日米同盟の最大のメリットは、自由に使える基地を提供してもらっていること。それなのに日本は『米軍に守ってもらっている』という負い目を感じている」と首をかしげる。
 
戦後の日本人にとって米国の属国であろうとなかろうと、どうでもいい話。大事なのは戦争に巻き込まれないことだ。そのための口実が憲法9条。歴代政権は米国との同盟を維持しつつ、いかにして米国の戦争に巻き込まれないようにするかに腐心した。朝鮮戦争からイラク戦争まで、金を出したり「後方支援」をしたりしながら、9条を口実に武力行使は踏みとどまってきた。
安倍首相は『憲法を改正し、安全保障で米国に協力して同盟を強めることが、日本の安全を強化する』と表明する。米政府の後ろには軍産複合体があり、グローバル企業の利益が最優先政策だ。国民の利益が優先されるような国は皆無だ。誰が利益を得て、誰が犠牲になるのか?しっかりと見極める目を持たなければ、犠牲になっていることにも気づかない。
 
それにしても、「ザ・思いやり」の製作者が在日アメリカ人の英語講師リラン・バクレー氏であるとは、なんと情けない。属国化して70年、思いやり予算は義務となり、増額されても日本のジャ-ナリストの声は小さくて国民には届かない。安倍氏のやりたい放題だ。もうどうにも止められない。ご主人様に褒められようと、米国議会で戦争法案成立の約束をし、日本の安保政策の立案者アーミテージ氏に旭日大綬章を授け、南シナ海での自衛隊活動を「検討する」とオバマ氏に表明した。安倍首相は日米同盟を強化すべく米国が要求してくることは何でも受け入れる。安全保障面だけにとどまらず、TPP交渉においても必死になって米国の要望に応えようとしている。
 
 安倍首相の『戦後レジームからの脱却』とは何なのだろう。アメリカの支配下から逃れることではなかった。強い軍事力と改憲を目指し、南京虐殺や従軍慰安婦問題を否定する歴史修正主義の立場を取ること、ナショナリズムの復活だ。アメリカの傘下のもとで戦争に協力すること、負け戦が間違っていただけで、勝てばアジアを牛耳る強い日本に返り咲けると思っているようだ。
 
 安倍氏が首相として登場して以来、自民党は安倍独裁だ。保守本流と呼ばれる賢い政治家はいなくなった。彼の祖父である岸信介氏は決して米国の属国であることを望んではいなかっただろう。安倍氏の頭の中ではアメリカの属国化と「戦後体制からの脱却」は何の矛盾もなく、相互補完するらしい。
 
映画は各地で順次上映する予定。問い合わせは(電話)090(4135)2563。

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