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オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

ギリシャはジリ貧

2015-07-02 | 国際

 6月22日、ギリシャのチプラス首相が、債権者側(EU、欧州中央銀行、IMFの「トロイカ」)に対し、消費税(VAT)の中心的な税率を23%に引き上げ、公的年金の給付開始年齢を67歳に引き上げる「緊縮財政策」を提案した。トロイカの要求を受け入れた格好だ。

 しかし、チプラスの譲歩は続かなかった。与党シリザの左翼が多数を占めるギリシャ議会は、チプラスの譲歩案に猛反対した。シリザは1月の選挙で勝つにあたり、消費増税や年金削減といった緊縮策をやらないと公約していた。チプラス政権は緊縮策の許諾について「公約は、電力料金を消費税率を上げないと言ったのであり、電気料の増税は今回の譲歩から外してある。年金支給年齢の引き上げは、年金の削減でない」などと弁解したが、議会は受け入れなかった。チプラスは6月26日、トロイカが求める緊縮策に賛成かどうかをギリシャ国民に問う国民投票を行うとを発表した。可決されれば、消費増税や年金支給年齢引き上げなどが実施され、見返りにトロイカがギリシャに追加融資することに道が開かれる。チプラス政権やギリシャ議会は、国民に、国民投票を否決するよう求めているが、誠意の感じられないチプラスが何をやるか予想できない。ギリシャで行われた世論調査では、賛成票を投じる国民が多いということだ。

 トロイカは、国民投票での緊縮策の否決がギリシャのユーロ離脱につながると脅している。ギリシャ政府と世論は、トロイカへの借金を返さないままユーロ圏内にとどまることを求めている。

 ギリシャが02年にユーロに加盟した後、高利回りを求めて巨額資金がEU各国からギリシャに流入してバブルとなり、米英投機筋がそのバブルを崩壊させてユーロ危機を起こし、米国傘下のIMFが救済支援と称してギリシャを借金漬けにした。ギリシャは6月30日にIMFから借りた資金の返済ができなかった。民間ならデフォルトだが、IMFの場合、「デフォルト」ではなく「滞納国」になる。ギリシャの負債総額は3127億ユーロで、その3分の2は、IMF、EUの基金、ECB、EU加盟諸国といった政府系機関からの融資だ。ギリシャ危機発生後、海外の民間投資家によるギリシャへの債権が急速に減り、その分をIMFなど政府機関が肩代わりしている。ギリシャが金を返さなくて困るのは、IMFやEUであり、民間投資家にほとんど迷惑がかからない。ギリシャ危機は、IMFやEUとギリシャの間の政治問題だ。IMFやECBから借りた金など返す必要はないとギリシャ人が考えているのも一理ある。

重要事項の決定に全会一致が原則のEUが、ギリシャをユーロ圏から追放する決定をするのはまず不可能だ。第一、離脱の手続きすら明記されていない。ギリシャのユーロ離脱は、ありえない。

 しかし、経済格差の激しいEU諸国が貧乏国への支援なしに維持できるはずもなく、これからも支援プログラムが切れるたびにEU危機が再燃し、ギリシャのジリ貧状態が続くことになる。政治的経済的統合を伴わない通貨統合は、ドイツのような先進国にはプラスに働くが、競争力のない国では自国通貨による調整がつかないので、圏外への輸出は低迷する。自立するには離脱してドラクマの暴落を受け入れ、観光立国、農産物の輸出で立て直す以外にないと思うが、そんな大革命を制御できる政治家は皆無なので、ギリシャはこのまま居候生活を続けることになるだろう。

 しかし、同じめちゃくちゃなら、日本の政治家もチプラス首相を見習ってもらいたいものだ。チプラスはありとあらゆる駆け引きを駆使してEUを脅している。離脱という経済的切り札だけでなく、ロシアや中国と接近する姿勢を見せる。同国最大の港湾、ピレウス港では、中国遠洋運輸(COSCO)がコンテナ埠頭の運営権を取得しており、港湾の民営化でも入札に名乗りをあげている。EUからの支援を打ち切られたら、中国やロシアに接近するという露骨な脅しである。
 弱小国が金融大国に楯突くカードは少ない。日本の政治家が、尻尾を振って米国の傘下に入りたがり、戦時下のマスコミ統制を彷彿とさせるような暴言を聞いていると、チプラスは貧乏な国民のために崖っぷちで頑張っているようにも見える。通貨統合で繁栄を極める先進国が弱小な加盟国家を援助するのは当たり前だ。ユーロ安で輸出が伸び、大繁栄を極めているのだから、見返りがあるのは当然だろう。彼らが加盟していなかったら、ユーロ高が進み、現在の繁栄はなかったのだから・・・・・

≪欧州各国民の各国への印象/ステレオ・タイプ≫
       最も勤勉  最も信頼  最も怠惰  最も不信
    英国  ドイツ   ドイツ   ギリシャ    フランス
  フランス  ドイツ   ドイツ   イタリア    ギリシャ
   ドイツ   ドイツ   ドイツ   ギリシャ    ギリシャ
                               イタリア
  イタリア  ドイツ   ドイツ   ルーマニア   イタリア
  スペイン  ドイツ   ドイツ    ギリシャ    イタリア
  ギリシャ  ギリシャ  ギリシャ  イタリア     ドイツ
 ポーランド  ドイツ   ドイツ   ギリシャ     ドイツ
    ──2015年2月3日付、日本経済新聞「経済教室」
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ドイツはやはり「勤勉で信用できる」と思われている。ギリシャは勤勉で信用できる国として自国を上げている。
ギリシャの評価は低く、働かない国民性は近隣諸国も熟知していたはずだ。EUの加盟条件(財政赤字3%以下、政府債務60%以内など厳しいハードル)から落ちこぼれていたギリシャがクリアできたのは、粉飾決算による“裏口入学”だったとささやかれていた。
 南欧諸国は、それまで、自国の破綻財政を立て直すには、10~20%もの高金利を支払わねば借金できなかったのが、ユーロに加盟すれば3~4%の低金利で借金できるようになったのだから、甘い汁に群がる国々に取っては、渡りに船だった。困ったらドンドン借り増し、行き詰まったら踏み倒そうと考えていたかもしれない。
 古代ギリシャを哲学・芸術の発祥地として称え、ペルシャ戦争など周辺との戦いで勝つと敵を次々と奴隷化し、苦悩の労働を全て押し付けてきた。ギリシャとは働かなくてもよい「誇り高き遊び人」たちが建国した産物であり、「働かない伝統」は今も健在だ。

 


AIIBは悪い高利貸し

2015-04-24 | 国際
安倍晋三首相は20日のBSフジ番組で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を「悪い高利貸からお金を借りた企業は、その場しのぎとしても未来を失ってしまう」とけん制した。組織運営を問題視した形で「参加を表明している主要7カ国(G7)も基本的に同じ懸念を持っている」とも指摘した。日本の参加は「国民の富を出資するわけだから当然慎重でなければならない」と語った。
 
 AIIBは、日米こそ利害関係から反発しているが、イギリスやドイツ、フランス、イタリアなど57カ国が参加し、国際通貨基金(IMF)や世界銀行も協力を表明している。もはやリッパな国際金融機関として認知され始めているのに、よりによって“高利貸”呼ばわりするとは呆れるしかない。「高利貸はマチ金とも呼ばれ、金融機関の中では最下級でしょう。経済や金融のことを少しでも理解していたら、決して口にはできないはずです。そもそもAIIBについては、参加するメリットが大きく、中国と領土問題で争うフィリピンでさえ、政治と経済は別と割り切って参加を決めています。さらに、ここへきて米国も態度を軟化させ始めているといいます。今月28日に予定される日米首脳会談でも、AIIBは話題に上るでしょう」(経済ジャーナリストの有森隆氏)
 米国が参加に傾いたら、日本は国際金融界から完全に孤立する。かといって、米国と歩調を合わせれば「今さら高利貸の片棒を担ぐのか!」と非難ごうごうだろう。安倍首相の不適切発言はあまりにも無責任だし、ナーンにも考えていないことがよく分かる。(日刊ゲンダイ )
 
 
 中国の驚異的な2桁成長が去年は7%に落ち込んだ。リーマンショック不況を避けるための異常な投資によるものだったが、そんな過剰投資がいつまでも続くわけがない。投資効率が悪化して、借金して投資しても利益が出ない。利潤の出ない投資を続ければ日本やアメリカのように、バブル崩壊で山のような「不良債権」を抱え込むことになる。どうソフトランディングさせるか?その期待の政策がAIIB(アジアインフラ投資銀行)だ。増大するアジアのインフラ整備のため、先進国の投資を積極的に導入するというのが謳い文句。
しかし、アメリカの属国日本は、仲間に入れて欲しいとは言い出せない。韓国だって加盟した。びっくりしたのはヨーロッパ随一の親米国家イギリスが一番に加盟を表明したことだ。政治的立場と経済的方策をきっちり使いわける大人の政策だ。このイギリス加盟で、ヨーロッパ諸国は雪崩を打って加盟し、57ヶ国となった。まさに中国経済の実力だ。
 AIIBに限らず、新興国への投資は先進国の利益のためにやるものだ。貧国は借りた金を返済できず、その見返りに大規模な開発権を企業に与える。森林は破壊され、資源は収奪され、カジノやリゾートマンション建設が進み、住民たちは追い出される。アフリカで中国がやってきたことを見るがいい。出稼ぎ中国人を大量に本土から連れてきて現場で働かせる。現地雇用をまったく生まず、100万人もいる中国人が現地に溶け込んでいるという。
 中国企業は株主に対してではなく、中国政府-中国共産党に対して利益を生めばいい。意思決定において利益は最大の動因ではない。安価な原材料と消費市場への政治的アクセスが目的であり、政府金融機関の助けを借りて国々における資源アクセスを独占し、中国への資源供給を確実なものにすることなのだ。政治的な国家安全保障上の考慮が投資を決める。たとえそれが採算がとれず高額に過ぎたとしても、中国企業は喜んで高価格を提示し、エネルギー案件や開発案件をとりまとめる。そしてアフリカに進出する中国の国有企業は、アフリカ諸国の政府から制度的支援を受けることによって、参入するリスクを最小限に、利潤を最大限にすることができるのである。中国は、鉱業プロジェクトに対し投資するだけではなく、そこで必要なインフラのネットワークを構築して鉱業を支援することで、問題を解決し、さらに資金援助、政治的な盛り上げなどを行って、取引が対象国にとって魅力的なものになるよう演出するのである。

 国際協力、とくに開発援助という視点で見ると、日本はトップドナーだった。道路を整備したり、発電所を作ったり、港湾を開発したり、通常は国際協力の実績を背景に日本企業がアフリカへ出ていく、となるはずだが、そうはならなかった。政府をバックに人海戦術を取る中国に対抗するのは所詮無理な戦術なのである。中国に敵とみなされるようでは、新興国の市場に活路は見出せないのである。

 多分AIIBもアジア開発銀行や世界銀行(アメリカ主導)と同じかそれ以上に、貧しい国をどん底に突き落とすことになる。アセスメントなどの審査をすばやくパスさせて、共産党政府が投資額を決めることになる。経済的メリットという観点だけなら、ビジネスチャンスが広がるのだから日本も加盟した方が良いだろう。  
中国は、国際金融のヘゲモニーを握り続けてきたドルに叛旗を翻している。世界の景気を支えているのは中国という否定しようのない事実を背景にしているから、57ヶ国が参加を表明した。共産党一党支配の独裁国家が、資本主義経済のヘゲモニーを握れるのか?興味の尽きない事象ではある。

ガザの戦争犯罪が裁かれる

2015-04-07 | 国際

パレスチナは、アメリカ、イスラエル、カナダなどからの激しい反対にあいながらも国際刑事裁判所(ICC)への加盟を決めた。

 これによりICCは、パレスチナ領内に対する、または領内から行われた戦争犯罪や人道に対する罪などの重大犯罪について、2014年6月13日にさかのぼって調査・裁定権限を与えられる。
「ICC加盟を理由にパレスチナをおどした政府は、圧力をかけるのをもうやめるべきだ。またICC規程の普遍的な受け入れを支持する諸国はパレスチナの加盟を歓迎すべきだ。非難されるべきは国際司法の力を弱めようとする動きのほうであって、パレスチナの条約加盟決定ではない。加盟国はすでに100ヶ国以上を数える。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの国際司法顧問バルキース・ジャラーは言う。
 
アメリカ政府はパレスチナが国家ではないことを挙げて、ICCの加盟資格がないと主張している。またICCがイスラエル政府当局者を捜査することにも反対している。2014年12月にバラク・オバマ米大統領はICCが行う「イスラエル国民をパレスチナ人への犯罪容疑で捜査対象とする...法的権限のある」捜査を「パレスチナ人が開始」または「積極的に」支援した場合に、パレスチナ自治政府(PA)への援助を一部カットするとの歳出関連法案に署名した。
 
イスラエル政府は2015年1月から3月に、パレスチナ自治政府の代理で約4億米ドル(480億円)の税金を徴収したが、アッバス・パレスチナ大統領のICC加盟決定を受けて支払いを拒んだ。その結果、パレスチナ政府の公務員16万人の給料が3ヶ月間、本来の6割しか支払われていない。イスラエルは3月27日、代理徴収分の一部を支払うと発表した。
 
 ガザ紛争における両当事者政府の戦闘行動だけが問題ではない。ICC規程は、占領勢力が、その占領地域に自国の民間人を「直接また間接に」移送することを戦争犯罪と規定している。その占領地域の住民の住むところを奪い、その占領地域の内部、または外部に追放し若しくは移送することも戦争犯罪なのだ。
 
 パレスチナ自治区を1967年に占領して以降、イスラエルは東エルサレムを含む西岸の入植地への自国民の移動を推進している。2009年のネタニエフ政権誕生以降、イスラエルは10,400戸以上の入植者向け住宅建設に着手した。同じ期間にイスラエルが西岸で行った破壊行為で、パレスチナ人5,333人以上が住むところを失った(2013年は同1,103人、2014年は1,177人)。イスラエルは1月30日に西岸で入植者向け住宅450戸の入札公告を出した。
 
「ICC検察官は、政府が国内で信頼性のある訴追を行わない場合のみ、行動する。よって、イスラエル、パレスチナ両政府は自ら捜査と訴追を行うことで、ICCの介入を免れるチャンスがある」と、ジャラー顧問は指摘する。「政府が信頼できる取り組みを行わない場合には、ICCは重大な人権侵害に関する責任追及の不足分を埋めるために介入することができるようになる。」
(2015年4月1日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」)
 
 
安倍首相の中東を歴訪でイスラエルに到着したのは、パレスチナ自治政府がイスラエル指導者の戦争犯罪を国際刑事裁判所(ICC)に訴えて、ICCが予備調査を始めたと発表した2日後であった。イスラエルは同盟国に対して国際刑事裁判所への拠出金を減らすようロビー活動を行うと表明していた。日本も国際刑事裁判所に加盟しており、最大の分担金拠出国であるため、複数の現地メディアは、ネタニヤフ氏がこの件について、安倍首相と話し合う予定であることを伝えていた。
 
 ICCは、戦争犯罪など国家による犯罪を裁く常設の裁判所で2002年に設立されたが、米国とイスラエルは加盟していない。
 だがパレスチナが加盟したことで、4月1日からICCの検察官がガザの虐殺などを捜査することが可能になった。ICCの検察官が捜査に入れば、ガザ侵攻の命令を下したイスラエルのネタニヤフ首相を起訴することも可能だ。極悪非道を尽くすイスラエルに対して国際社会は無力だったが、この4月1日からICCの検察官がネタニヤフ首相を起訴し、ICCがネタニヤフ首相への逮捕状を出すことができるようになったのである。アメリカが反対する中で、正義は行使できないだろうが、ネタニヤフを逮捕できなくてもイスラエルのガザ侵攻がやりにくくなるという効果はありそうだ。
 パレスチナのICC加盟が4月1日から発効したことを、日本のマスコミは大きく取り上げていない。
 

中国の新常態

2015-04-01 | 国際
中国観光客の爆買いのおかげで、炊飯器の売り上げが三倍になったという。目薬や絆創膏など日用品でも中国製品は品質が悪いから、日本で爆買いするのだという。温水便座や5~10万円もする高級炊飯器を1人で2個も3個も買い込み、銀座のブランドショップに押しかけると数百万円単位で買い漁る。欧米旅行客の支出は6-7割が宿泊費・飲食費なのに、中国人はその6割が買い物という。海外消費が去年は19兆円というから凄い。
 
 だが、彼らの「爆買い」には大きな謎がある。
 在日中国人向け新聞『東方時報』社長で、上海出身の福島大毅氏は語る。
「中国はGDPで世界第二位の経済大国になりましたが、1人あたりの名目GDPでは、いまだ世界89位(約60万円)に過ぎません。これは日本の6分の1程度です。まだまだ先進国と呼ぶには程遠い数字ですよ。億単位の富裕層が爆買いをしてるのでもない。本当の金持ちは、ツアーで来日してちまちま買い物なんてしません。日本にやって来て、家電などを爆買いしている人の多くは、表向きの年収が100万円~300万円程度の中間層です。」(福島氏)
 「中国人の多くは、本業だけでカネを得ているわけではないからです。みなさまざまな副業を持っている。表向きの年収が100万円程度でも、表に出ない裏の収入がその数倍あったりする。中国では本業しかない人間は無能と見られ、実際そういう人は今も底辺に沈んだままです。ちょっと目端の利く人は、ネット販売をしたり、役人に賄賂を贈って利権の一部にありついたりして、本業以上に稼いでいるものなんです」
 数百億、数千億円規模の不正蓄財が発覚した政治家、政府要人も多い中国では、規模の違いはあれ、庶民も同じことをしているらしい。
 
 3月5日、中国の国会に該当する全人代(全国人民代表大会)が開幕した。2015年の成長目標は7%程度と発表され、李首相は今後の経済は“新常態”に入ったと宣言した。指導部は“新常態”という言葉を使って、景気の急減速を正当化するつもりのようだが、中国経済は高成長時代を過ぎて、新しい成長過程を見いだせるかの正念場を迎えている。
中国の経済成長は補助金という覚醒剤のおかげであり、この覚せい剤効果を取り除けば、8%成長が実質0%なのだという。ということは、7%は実質マイナス1%である。これは確かに新常態ではなく「非常事態宣言」だ。
労働人口は減って高齢化する、「富の再配分」がうまく行かず、格差は更に広がる、福祉は劣化の一途・・・・なにか耳慣れた新常態。 
 
 汚職も日本の比ではない。いつ政敵によって抹殺されるか分からないから、巨額の蓄財に走る。中国の政治は歴史的に腐敗しているし、その規模も凄まじいが、現在の中国共産党の幹部も大したものだ。習近平を就任前に暗殺、クーデターを企て失敗したとされる最高幹部・周永康は、隠し財産1兆9000億円、愛人29人、前妻殺害疑惑という凄まじさ。彼のファミリーも収賄で逮捕され、その数は300人。
 
 北朝鮮ナンバー2だった張成沢が2013年末、死刑判決を受けて銃殺されたが、「北朝鮮の指導者を(金正日の長男の)正男に代えたい」と中国側に提案したためだったことが報道された。この話を北朝鮮側に密告したのが、渦中の周永康だった。周は失脚直前、北朝鮮への逃亡も計画したという。もともと中国の最高指導者習近平国家主席は、核開発を止めない金正恩を苦々しく思っており、「訪中したいという正恩側からの申し出を断っている。」(中朝外交筋)一方、長く北京に住んだ正男は中国側に知人が多い。現在はシンガポールに事務所を構え、ビジネスを展開している。
 こんな状態だから、中国の富裕層はせっせと財産を外国に移してる。中国国内では土地の私有は認められないから、外国に土地を買って豪邸や別荘を建てる。さらに驚くのはアメリカで子供を産む。アメリカは親の国籍がどこであれ、アメリカ国内領土で生まれればその子はアメリカ国籍を取得できるからだ。
 サイパンで生まれる赤ん坊の70%が中国人という。リッチな層になるとハワイからカリフォルニア巡りの観光と偽り、華僑集団の家や施設で数ヶ月滞在して出産する。その妊婦の中には、中国国営企業の経営者・共産党トップの娘・孫などが必ずいるという。
 サイパンで出産した中国人妊婦は、2009年の8人から12年には282人と35倍に増えている。米国領のサイパンは、ビザなしで45日以内の滞在が可能だ。おなかの目立たない6ヶ月ぐらいにサイパン入国し、ビザなし滞在可能な45日を過ぎても罰金のない180日まで不法滞在して、出産するという。さすが中国人、抜け目がない。自分が告発されて死刑になっても、蓄財して子孫を残すというわけだ。これだけリスク管理が万全だからか、楽観的な中国人は圧倒的に多い。
 
 世界23カ国の国民を対象にした世論調査によると、日本人の86%が将来に不安を感じており、最高値。2009年に国際的な世論調査会社IPSOSが実施したものだが、それほど国民性は変わっていないだろう。
 将来について安心を感じるか、不安を感じるかという質問に対し、「非常に安心」と「やや安心」と回答した人の合計が上位の3カ国は、インド(79%)、中国(78%)、オーストラリア(73%)。下位3カ国は、日本(14%)、フランス(21%)、チェコ(25%)。
 自国の経済情勢を質問したのに対し「非常に良い」「やや良い」と答えた人の合計は23カ国全体で36%。「非常に悪い」「やや悪い」と答えた人の合計は64%。
 「非常に良い」「やや良い」と回答した人の多い国も、インド(82%)、オーストラリア(81%)、中国(78%)の3カ国。下位3カ国はハンガリー(7%)、日本(8%)、スペイン(10%)。日本は「非常に悪い」「やや悪い」と回答した人が92%に達している。
 
 上げ底成長率のもとで不正に蓄財する中国人とアベノミクスで踊る日本人、お互い沈みゆく泥舟に乗ってる新常態だが、行き着く先は?

未だ中東は中世

2015-02-01 | 国際

宗教右派というのはユダヤ教にもキリスト教にも存在するが、イスラムの場合は貧困と圧政のためか、過激な行動に走る傾向がある。
現在のイラク政府はフセイン時代と違いシーア派(国民の60%)だが、アメリカが侵略して大混乱になり、無責任に撤退した。その大混乱に乗じて外部から入ってきたのがアルカイダに代表される過激派である。

 アメリカ国内イスラエル派の「ネオコン」と、戦争で大儲けを企む軍需産業が、ブッシュ大統領をそそのかして、フセインが核兵器や大量破壊兵器を隠し持っていると言いがかりをつけて始めたイラク侵略戦争。結果はイラクに内戦と国家分裂を引き起こし、イスラム国を勃興させてしまった。唯一のプラス効果として「アラブの春」と呼ばれる民主化運動を若者たちが起こしたが、それを担う政権は出現しなかった。あろうことか、シリアでは独裁者アサドが毒ガス・生物兵器まで使用して反政府の者や一般市民ら20万人を虐殺したと言われる。

 イスラム国は批判を一切許さないから、同じスンニ派の者でも容赦なく殺す。サッカーをテレビで観戦していた少年たちを公開処刑、ラマダン時期に道でモノを食べていた少年を、銃殺など耳を疑うような虐殺も行う。
 しかし、イラク政府(シーア派)の「スンニ派狩り」の残虐非道さも際立ち、スンニ派住民を家から拉致して拷問を加え、目をえぐり内臓を引き摺り出して虐殺するというのだから、残虐非道はイスラム国の専売特許ではない。イラク国内のスンニ派は「イラクの政府を倒してくれるならイスラム国でも良い」と言う心境らしい。中東は王政と欧米の石油資本が結託して統治する未だ中世の戦国時代なのだ。

 サウジアラビアがOPECの足並みに同調協力しないのは、シェールガス潰しというより、案外イスラム国潰しなのかもしれない。さらにアメリカとその同盟軍が石油施設を空爆して破壊したため、原油販売による資金調達は難しい。
 そこで人質による身代金作戦と言われているが、今回の人質事件は初めから身代金目的ではなかったろう。2億ドルという法外な額は単なる安倍政権の支援額への語呂合わせだった。さらに安倍首相は、最悪のタイミングで中東訪問した。日本の人質が二人も拘束されているというのに、ネオコンに媚びを売り、軍需産業に金儲けさせるために、オバマも嫌うネタニエフ政権のイスラエルに外遊した。自国民の人命などまったく念頭にない行動だ。

 「イスラム国と戦っている周辺諸国に支援を約束する」と言っているのだから、当然相手は敵だと解釈する。さらに二人の動画が世界中に公開されてわずか3時間後、イスラエル国旗を横にして「国際社会はテロに屈してはならない」と得意げに言う。日本はイスラエル・アメリカ連合の一員だから、人質は殺してくれて構わないというメッセージを与えたようなものだ。
 そして、後藤さんが犠牲になったようだ。初めからイスラム国の戦略だったと思われる。サジダ・リシャウィ死刑囚がイスラム国にとって奪還したい人材とは思えない。後藤さんを殺し、パイロットを殺し、ヨルダン政府にサジダ・リシャウィ死刑囚と収監されているISISのメンバーを直ちに処刑させる。真の狙いは政府への批判や反政府勢力をあおってヨルダン政府を弱体化させることだろう。

 今、アメリカのネオコンはオバマをそそのかして中東に深く介入させるのは困難なので、安倍政権に期待しているように見える。
 今回の人質事件を利用して安倍首相が何を企んでいるのか、
「政府として全力で対応してきたが、誠に痛恨の極みだ。非道、卑劣極まりないテロ行為に強い怒りを覚える。テロリストたちを決して許さない。その罪を償わさせるために国際社会と連携する。日本はテロに屈することは決してない。食糧支援、医療支援と言った人道支援をさらに拡充していく。そしてテロと戦う国際社会において、日本としての責任を毅然として果たしていく。」
 とりあえず自衛隊による後方支援・・・自衛隊派遣による人質救出・・・その後は???

 人道的支援と言って、渡される金の使途までは把握できない。テロとの戦いと合い言葉のように口にするが、その裏側でどれだけの人が殺害され、生活が崩壊していったか。テロの中で育つ子供たちはテロリストになる選択肢しかないように思う。本当に支援するつもりなら子供たちを日本に移民させることだ。
 イスラム国が仮に崩壊しても新たなイスラム国はまた勃興する。その連鎖を止める手立てはない・・・・・・中世の真っ只中にいる部族国家をまとめる王政を民主主義の国に変える手立てはない。イスラエルの領土拡大政策をやめさせる手立てはない。


湾岸のトラウマ

2015-01-26 | 国際
集団的自衛権の行使容認が閣議決定された今年、自衛隊海外派遣の必要性を意味する「湾岸戦争のトラウマ(心的外傷)」という言葉が蘇り、何度か新聞にも登場した。
 一九九一年、クウェート占領中のイラク軍を多国籍軍が攻撃した湾岸戦争で、日本は百三十億ドル(当時のレートで一兆七千億円)という巨費を拠出した。だが、クウェート政府が米国など三十カ国に謝意を示す広告を米紙に掲載した中に日本の国名はなかった。
 「カネだけではだめだ」との思いがトラウマとなり、翌九二年、日本は国連平和維持活動(PKO)協力法を成立させ、自衛隊の海外活動を本格化させるきっかけになった。
 だが、九三年に使途が公表された追加分九十億ドル(同一兆一千七百億円)の内訳をみると、配分先のトップは米国で一兆七百九十億円、次いで英国三百九十億円と続き、肝心のクウェートへは十二カ国中、下から二番目の六億三千万円しか渡っていない。大半は戦費に回され、本来の目的である戦後復興に使われていないのだから、感謝の広告に日本が出てこないのもうなずける。
 「外交失敗のトラウマ」というならまだ分かる。実際には自衛隊の海外派遣が検討される度に「湾岸戦争のトラウマ」という言葉が繰り返され、ついに集団的自衛権をめぐる議論にまで登場した。まやかしのトラウマは、いまなお健在である。 (東京新聞 12/31 半田滋)


 日本は、憲法の規定により戦争に参加することも出来ないが、戦争の費用を支出することもできない。
 しかし国連の加盟国として、国連軍による平和維持の活動に、日本だけその支出を拒否することもできない。日本の政治家の外交手腕の拙劣さ、更に事務手続き上の不手際が重なり、日本は大変な費用を支出させられることになった。しかもその分不相応な費用の拠出は、国際的に評価されず、多額の金を出しただけの愚かな国としての印象を世界中に広めた。
 この顛末は、NHKワシントン特派員であった手嶋龍一氏による「1991年日本の敗北」(新潮社)に詳しい。

 湾岸戦争の戦費は、当初、450-500億ドル程度と考えられていたが、戦後にアメリカ国防省が発表した戦費は610億ドルとされる。
 イラクのクウェート侵攻後、アメリカがまずやったことは、湾岸戦争の戦費をサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦などペルシア湾岸の産油国を中心にした6カ国でつくる湾岸協力会議(GCC)に主として負担させる体制づくりであった。その結果、610億ドルの戦費負担は、当然、GCCが多くなった。その負担額は、次のようになる。
        
サウジアラビア 160億ドル
クウェート 160億ドル
UAE 40億ドル
アメリカ 70億ドル
ドイツ 70億ドル
日本 90億ドル
 
 この結果をみると、なんと湾岸戦争の戦費負担は、当事者のアメリカより日本の方が多いのである。さらに、日本はそれまでに、8月30日に10億ドル、9月7日にブレディ財務官の要請で30億ドル、合わせて40億ドルの支援を決定し実行している。つまり日本が負担した実際の戦費は130億ドルというアメリカの2倍近い巨額なものなのである。

 上記の90億ドルは、91年1月20日の橋本・ブレディ会談で要請されたものである。
 サウジアラビアも、上記の160億ドルとは別に、湾岸戦争の軍資金として800億ドルをアメリカに支払ったことを内務大臣が2002年9月に暴露している。これらのサウジからアメリカへの巨額の軍資金の流れは、サウジの王家をイラクの侵攻から守るためのものであり、サウジ富裕層の一族であり、敬虔なイスラム教徒であったオサマ・ビンラディンを王政への反逆とアメリカ(異教徒)へのテロへ向かわせてしまったと言える。
 上記の日本の戦費90億ドル自体も、日米双方の政治家・官僚による交渉のおそまつさから、日本国民は更にその上に、5億ドルの追加支払いをさせられる。湾岸戦争の戦費90億ドルをめぐる交渉は、1991年1月20日に、ニューヨークのスタンホープ・ホテルにおいて、日本の橋本大蔵大臣とアメリカのブレディ財務長官の間で行われた。この会談において、90億ドルという支援額が、「円建て」なのか「ドル建て」なのか、またその支払い先は「アメリカ軍」なのか「多国籍軍」なのか、不明確のままになり、このことが後で日米双方に大変な問題をひき起こした。90億ドルという金額は、1ドル130円として1兆1,700億円という大金である。90億ドルの支払いが「円建て」か「ドル建て」か、国会において社会党の堂本議員から質問された海部総理は、明確に「円建て」と答えており、外務省は2月15日の村田大使宛の公電で「円建て」としている。つまり日本側は、前の40億ドルが「円建て」で行われていることから、当然、「円建て」と思っていた。
 問題は、橋本・ブレディ会談の後から、ドルが高くなり円が安くなり始めた。そのため円建てであると、アメリカが受け取る額は90億ドルより少なくなる。そのことを3月12日に記者団に質問されたブレディは、「日本には、ドル建てで支払うよう話し合った」と述べたのである。

 湾岸戦争のほとぼりも冷めた7月9日、日本政府は90億ドルの目減り分、5億ドル、日本円で700億円を平成3年度予算の予備費から支出することを国会で決めた。日本国民は、更に700億円という血税を負担させられたのである。

 今ひとつの問題点は、90億ドルの支出先である。91年1月15日、ベーカーは、橋本・ブレディ会談の90億ドルはすべてアメリカの戦費に対するものであると主張した。結果は、全額、アメリカのものとなり、日本は軍事費を負担した上に、多国籍軍の他の国から恨まれることになった。

 日本はこの戦争において130億ドルという巨額の戦費を負担しながら、その支出先も確認せず、日本の湾岸戦争への貢献は国際的に評価されなかった。その後、ショウ・ザ・フラッグ(日本国旗を見せろ!)とか、ショウ・ザ・ブーツ(靴を見せろ、すなわち現地に来い!)という、アメリカのタカ派の恫喝に屈して、あるいはそれを引用して、小泉首相がイラクに自衛隊を派兵することになった。小泉政権は、国連決議もなければ自衛戦争でもないイラク戦争を支持し、自衛隊を派遣したのだ。先進諸国の判断は、イギリスを除き賢明だった。国連常任理事国のフランスとロシア、中国が反対し、ドイツも反対した。国連のアナン事務総長(当時)も、「新たな決議なしの攻撃は違法」と断じた。イラクでは大量破壊兵器も見つからなかったし、アルカイダとの共謀も認められず、この戦争の是非はいまや明白だ。アメリカと小泉政権は、まったく状況の違う10年以上も前の湾岸戦争当時の旧い国連決議を引っ張ってきて、自衛隊派遣を正当化し、欺瞞に満ちたサダムに対する報復戦争を始めたのだ。

 金を出すだけではだめだ、湾岸戦争のときなんと言われたか思い起こせという「湾岸戦争のトラウマ」は現代に引き継がれ、実質的な集団的自衛権行使を目指して動き出している。
 各国の判断で戦争を許してしまえば、自衛戦争と宣言するだけで正義の戦争になってしまう。現に、イスラエルとパレスチナでは互いにテロリストと呼んで際限なき「自衛戦争」をしているではないか。アメリカが仕掛ける戦争を無批判に正義の戦争として受け入れる施政者しか現れない日本はアメリカの下請けしかできない。ご主人様と仰ぐにはアメリカは余りにも汚く、狡猾である。
 130億ドルも投じた湾岸戦争の総括すら日本はまだできていない。アメリカの不興を買うことになるので反省すらできないのだろうが、そんな国が最新兵器を持つほど怖いことはない。

中東の平和

2015-01-24 | 国際
イスラム国は国家を自称し、資金、軍事力などを保有している。宗教的政治的理念を持ち、現在の中東諸国の国境線を否定し、カリフ制による統治を目指している。第1次大戦後、敗北したオスマン帝国は解体され、英仏露によりその領土は分割されたが、領土の分割線の根拠となった協定が、サイクス・ピコ協定である。しかし同協定は、第1次大戦中の1916年に、現地住民の意向とは無関係に、3国間で秘密裏に締結されたものであった。イスラム国は、サイクス・ピコ協定により規定された現体制の打破を唱えている。また第2次大戦後も、植民地の独立は認められたものの、石油の利益は元の宗主国の石油資本とそれぞれの国の独裁的な支配者に専有され、民衆は恩恵にあずかっていない。
 カリフとは、ムハンマドの代理者としてイスラム共同体の頂点に立つ存在で、2014年7月、指導者アブ・バクル・アル・バグダディが、カリフ・イブラヒムであることを宣言した。世界中のイスラム教徒は、カリフの下に馳せ参じて忠誠を誓うように命令が出された。バグダディの教義は、18世紀のワッハーブが唱えたワッハーブ主義から導かれている。ワッハーブ派にとりシーア派とスーフィー教徒は、イスラム教徒ではなく、生存に値しないとされた。このようなイスラム原理主義の過激な復古運動は、今後もイスラム世界では、一定の勢力を維持すると思われる。
    
 イラクでのサダム・フセイン体制の打倒とアラブの春以降の中東諸国の混乱は新たなイスラム革新運動を引き起こす契機となってしまった。イスラム国は、占領地域の原油の密売を主な資金源としている。イスラム国の敵のはずの一部のクルド人も、イスラム国との原油交易で豊かになっているらしく、クルドの新聞は、イスラム国に関わっている人物のリストを最近発表したそうだ。その中にはクルド人の支配層の家族、政府と軍の指導者、石油精製業者も含まれ、トヨタの支店はイスラム国にトラックを販売していると報道された。しかし原油のみがイスラム国の資金源ではなく、資金の一部は、湾岸諸国の寄付だという。また、密輸、誘拐、拷問、強奪などいわゆるテロビジネスでも資金を得ている。原油価格が急落した昨今、資金源が減ったため、法外の身代金要求がなされたらしい。
 
 イスラム国には狂信的な人間ばかりでなく、様々な犯罪の経験を持つ外国人が加わっている。また、最高指導者の25人のうち、3分の1はサダム・フセイン時代の軍に所属し、ほぼ全員が2003年の戦争後、米軍の刑務所で過ごした経験を持つと言う。これらの元バース党員は、非合法な密輸ネットワークを利用し、公務員に賄賂を渡し、資金洗浄を行う非合法ビジネスのプロである。リビア、イラク、シリアでは国家はすでに崩壊し、エジプト、アルジェリア、レバノンでも国家機能は弱体になっている。アラブの春により、経済と政治システムが破綻し、トラウマを負った多数の若者たちの選択肢は少なく、戦闘員としてイスラム国に参加するのは自然の成り行きだ。また軍などから放出された多数の武器、弾薬も闇市場に出回っているため、最新兵器の入手も容易だ。
 また、SNSなど通信技術の発達により、ビデオやその他の情報を大量に発信できる。携帯電話やパソコンを使い、マスコミ並みの扇動や宣伝を行い、多くの人々を動員、組織化することが可能になった。通信技術の発達は、アラブの春が中東全域に拡散し、独裁政権が倒れた要因の1つだが、テロ組織や犯罪組織が拡散することにも繋がった。
 
 2013年6月、イスラム国は目覚しい進撃を遂げ、モスル、バイジ、チクリットを奪取し、イラク政府の空軍と陸軍は、ほとんど抵抗することなく敗退した。約3万人、2個師団分の装備と約800機から2000機の戦闘機がイスラム国に奪取された。2014年8月に開始された米軍などの空爆により、当時の勢いはなくなっているものの、イスラム国は、住民に紛れるとともに伝統的なゲリラ戦法に移行し、抵抗を続けている。米軍の空爆の目標は、皮肉にもイスラム国に奪取されたイラク政府軍の米国製装備である。
 オバマ大統領が正規の地上部隊を派遣することはないだろう。イラク政府軍は、米空軍の支援の下で、イスラム国との戦闘の主体となっているが、独力で戦うだけの力はない。アメリカはクルド人などにも武器を渡し、イスラム国と戦うように働きかけているが、統率のとれた軍隊となるべくもなく、最新兵器が闇市場を通じてイスラム国に流れる可能性の方が大きい。
 
 イスラム世界ではスンニー派とシーア派の宗派争いが絶えず、加えてアラブ主義のナショナリズムとイスラエルの闘争はどちらかが絶滅するまで続きそうだ。そんなところに日本の外交や金銭的軍事的支援が功を奏するわけがない。中東の国々は王族と欧米の石油資本が結託して富を独占し、圧政で統治する国家である。サウジアラビアなどは、アルカイダやイスラム国を支援する富裕層も多いお国柄である。石油を売ってもらっているだけの日本がどんないわれがあって、2億ドルもの支援をしなければならないのか、全く理解に苦しむ。しかも今回は二人の日本人が拘束されているのを知ってのパフォーマンスである。
 安倍首相がカイロで行った2億ドル支援演説の公式英訳(外務省)が、日本語のスピーチと違って<資金の面で戦争に加担すると読める内容になっている>。直訳すると<これからトルコとレバノンの支援を行う。ISIL(イスラム国)と戦う国々に、人的能力・インフラ支援のために2億ドルを供与する>となっているそうだ。
 
 サウジはイランの台頭に対抗するため、ワッハーブ派の神学校に資金援助し、スンニー派のイスラム過激派を支援してきた。近年も、シリアでJAIなどのサラフィ主義者やスンニー派民兵組織に富裕なサウジ王族が資金援助するのを黙認している。サウジがJAIを支援し、最終的にイスラム国に武器や資金として流れ込んでいるとみられる。サウジの指導層は、シーア派に牛耳られたイラク政府を快く思っていない。また、原油生産の競争者であるイラクに強力な中央政府が出現することも望んでいない。しかし、イスラム国はパートナーとしては危険極まりない。サウジの指導者たちは、イスラム国の聖戦を黙認すれば、脅威になると憂慮し始め、2014年2月にサウジのアブドラ国王は、国民に対し外国で戦闘員になることを禁じる命令を出し、1か月後、イスラム国を含む、ジハーディストの名簿を公表し、彼らに資金援助を行なうことを禁じた。
 イスラム国のサラフィ主義とサウジのワッハーブ主義との間には、宗教イデオロギー上の差異はほとんどない。サウジの指導層は王室の絶対的な権力を維持しようとしているが、イスラム国が宣言したカリフ制がいずれ脅威になることは明らかであり、両者は両立し得ない。このような事態に至ったのは、これまでイスラム国などのイスラム過激派に対し、寛大な姿勢をとってきたサウジの指導層自らに大きな責任がある。
 他方、イランと米国はイラクでの紛争に関しては、利害が共通する立場にある。米国とイランがイラク問題で協力することになれば、両国関係正常化の突破口になる。米国の専門家は、イラクの秩序回復のために、2つの対応策を挙げている。1つは、軍事力の再展開であり、もう1つは、政治的に迫害された者を含む地域のあらゆる指導者との共同作業を行なうことである。イランとシリアのアサド政権の軍だけが地上戦闘でイスラム国に対抗できる力を持っている。これら両者の力を利用することにより、サダム・フセイン排除以前の時代に戻すことができるかもしれない。シーア派とスンニー派のいずれかに肩入れすることは、両派の対立を煽ることになるが、シーア派寄りの立場をとるしか、もはや選択の余地はない。    
 スンニー派については、イスラム国を密かに支援してきたサウジ、カタールは、今では反イスラム国有志連合に参加している。しかしその動機は、パワー・ゲームでしかない。米国はこれまで、産油国のサウジとの長年の同盟関係とイラン革命以来のイランとの対立関係により、地域内のパワー・ゲームには関与してこなかった。もし米国が軍を派遣することなく中東地域の安定を望むのであれば、イランとの国交正常化に取り組むしか道はないだろう。
 
 
 世界の安全保障における日本の役割を拡大するという安倍晋三首相が掲げる政策は揺るがず、逆に人質事件をきっかけとして、首相の信念はますます強まる可能性がある。自衛隊が救出作戦を実行することは違憲だが、人質が殺害されることで世論を味方にして一気に憲法改正、集団的自衛権の構築に弾みがつくかもしれない。他国の戦争に巻き込まれるべきではないとする世論がある一方でテロとの戦いに積極的に関わるべきとの意見もある。今の状況では日本は70年間の平和主義をかなぐり捨てて、アメリカ下請けの軍事国家になりそうだ。.
 
 安倍首相のイスラエル訪問は、経済関係の強化が主眼のように見えた。今のイスラエルは、ガザ戦争や西岸でのパレスチナ人弾圧を国際的に非難され、EUは経済制裁を強めている。そこに日本の安倍首相が経済関係を強化すると言ってイスラエルを訪問した。日本は、戦争犯罪を犯して国際制裁されそうなイスラエルと仲良くしたい積極的平和国家なのだ。
 今回の安倍首相の中東歴訪は、イスラエルだけでなく、エジプト、ヨルダン、パレスチナ(自治政府)を回った。ヨルダンもエジプトもパレスチナも比較的親イスラエルで、日本から援助されることはイスラエルの国家安全にとっても有益だ。
 米政界は、イスラエル右派に牛耳られる米議会と、イスラエル支配を脱却しようとするオバマとの政争が激化している。米国の上層部が分裂する中で安倍首相は、議会を牛耳る軍産イスラエル複合体を対米従属の対象とみなしているようだ。EUやオバマがネタニヤフを嫌う中で、安倍首相は武闘派ネタニエフに肩入れしている。

 イスラエルの選挙で中道派が勝つと、パレスチナ和平を再開するだろうが、ネタニヤフが勝つと、和平推進を拒否し、西岸やガザを併合し、対立は激化しそうだ。ネタニヤフ政権に肩入れすることは、中東和平を妨害することになる。安倍首相がその点を自覚してイスラエルを訪問したとは考えられず、イスラエル右派とつながっている米国のタカ派議員から圧力をかけられ、イスラエルを訪問したと思われる。石油輸入国である日本は1970年代の石油危機以来、親アラブを貫いてきた。今回の中東歴訪は、日本が親アラブから親イスラエルに転じる転換点になるかもしれない。
 
 欧州諸国や日本をISISとの戦いに参加せざるを得ない状況にして、米国が指揮する国際軍を中東に駐留させ、イスラエルを守る、これがイスラエルとアメリカ共和党右派が目論む中東の平和なのかもしれない。


売れない米国債

2014-12-22 | 国際

1ドル=120円にまで急ピッチで進んだ「円安・ドル高」。輸入物価が上昇し、庶民生活はどんどん苦しくなっている。そこで、円安の弊害を一気に解決する“ウルトラC”が浮上している。
 ズバリ、財務省が保有している「米国債」の売却だ。いま米国債を売り払ってしまえば、急激な円安にブレーキがかかるうえ、巨額の儲けが転がり込むのだ。
 10月16日の参院財政金融委員会での麻生太郎財務相の答弁によると、2014年3月末現在、財務省が所管する「外為特会」は、円換算で116兆円の米国債を保有している。3月末当時、為替が1ドル=104円と「ドル安」だったために米国債の価値が下がり、9兆9000億円の“評価損”が発生していた。しかし、1ドル=120円まで「ドル高」が進み“含み益”が巨額に膨らんでいるのだ。
「これまで日本政府は、ドル安によって“評価損”が発生しているため、米国債は売るに売れないという立場でした。麻生財務相は、含み損を解消するためには、1ドル=112円までドル高が進む必要があると答弁しています。現在120円までドル高が進行している。儲けは出ているのは間違いない。売るなら今しかありませんよ」(民間シンクタンク研究員)

 日本が保有する米国債の“含み益”はどのくらいに膨れ上がっているのか。財務省は「3月時点での計算しかしていません」との回答だったが、単純計算では25兆円の儲けが出ているはずだ。消費税1%の税収は約2.5兆円だから、10%分である。

 内閣府官房審議官だった谷内満早大教授も、「80%くらい売ってもいいのではないか。80%くらい売っても、まだ他の先進国より多めの外貨準備を持っていることになる」とロイターのインタビューに答えている。

 政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「庶民に消費税増税を強いているのだから、値上がりした米国債を売って利益を出してもいいと思う。しかし、米国債の売却はアメリカに喧嘩を売ることになりかねない。アメリカに弱い安倍首相には無理でしょうね」

 「円高でも売れない」「円安でも売れない」のに、日本は100兆円を超える米国債を持つ必要があるのか。(日刊ゲンダイ)
 
  
 米国に「IEEPA」という法律がある。「国際非常時経済権限法」とでも訳したらいいだろう。「米国の安全保障、外交政策、経済に異常で重大な脅威が発生した場合」「外国とその国民が有する資産に関して」それを所有したり、取引したり、権利を行使することなどを「調査、規制あるいは禁止」したり「破棄、無効あるいは予防する」とうたっている。
 この法律が成立したのは77年、ドル切り下げというニクソン・ショックから6年後である。
 
 日本が米国債(あるいはドル)を売ろうとすれば、「米国の……経済に異常で重大な脅威」となり、このIEEPAにより禁止されてしまい、売り捌けない状態に陥る。勿論、日本以上に米国債を有している中国も同じだ。米国債を多量に購入することは、米国に「人質」を提供して「恭順の意を表す」という封建時代並みの仕組みである。
 日本の役割はひたすら米国債を買い続けることにある。米国債の三大保有国は、日本、サウジアラビア、中国。日本及びサウジアラビアには、アメリカの軍事基地があり、事実上、占領されている。アメリカは米国債を日本に購入させるために、財源として郵政に目をつけた。郵政の資産は350兆円である。アメリカは、『年次改革要望書』を通じて郵政民営化を日本政府に迫り、『郵政民営化準備室』との17回にわたる面談により内政干渉し続けた。それは、郵政を民営化して、米国債を強制的に購入させることが目的であり、アメリカの国益に適うことであった。アメリカは小泉純一郎、竹中平蔵を使って、郵政民営化を実現せしめた。
 
 日本郵政グループのゆうちょ銀行が2009年10-12月期に、07年10月の郵政民営化後、初めて米国債を約3000億円購入していた。この米国債の現物は日本にはなく、ニューヨーク連邦準備銀行の地下金庫に保護預かりされている。
 日銀保有の金(ゴールド)の現物も米国債同様に米国が保管し、米国の同意無しに処分できない。金保有を増やすこともできない。「米国が、日本政府の金の増加保有を禁じている」からだ。 日銀のゴールド保有は、貸借対照表を見れば、総資産114兆円(09年10月)のうち、わずか4兆4125億円(総資産の3.8%)。時価換算では、1300トン分(世界の政府保有3万トンの4%くらい)に相当する。日本政府公表分の持ち高は、なぜか、その半分の765トン。1グラム6000円相当の超高値(時価の約2倍)で買ったことになる。
 米国FRBの公表持ち分は8134トン(時価24.4兆円)とされるが、それも、実のところは不明だ。日銀を含む、各国政府・中央銀行は、FRBに保有する金を預け、その預かり証券を持っているにすぎない。米国は、金証券は渡しても、現物を渡さない。理由は、「有事(戦争)のため、貴国の財を守る。」というものだ。
 

香港の民主化デモ終息

2014-12-16 | 国際
香港中心部を占拠する民主化デモに多くの学生や市民たちが集まり、盛り上がりを見せた。きっかけは香港政府のトップを選ぶ行政長官選挙に関する中国の制度案が実質的に民主派候補を排除する制度であることに抗議の声が上がったのだ。1997年に英国から統治権が返還され、50年間の「一国二制度」がスタートして17年余り、金融都市として存在感を高めてきた香港にとって、初めての民主化の波。

香港警察は11日午後、学生組織の最大拠点となっている香港島・金鐘(アドミラルティ)の大通りで、占拠を続けてきた学生や民主派支持者らを強制的に排除した。警察は209人を逮捕したと発表。9月末から約2か月半に及ぶ道路の占拠は事実上終結し、国際金融センター香港の混乱は中国や香港の政府から一切の譲歩を得られないまま収束した。香港メディアによると、約7000人の警官が動員された。

 もともと自発的な集まりで明確な指揮系統はない。占拠が長引くにつれて市民の共感は薄れ、世論調査では「占拠を終えるべきだ」との意見が7割を超えるようになった。裁判所の占拠禁止命令を盾に、警察当局は九龍地区の繁華街、旺角の強制排除に着手した。追い詰められた学生団体は「最後の手段」として政府庁舎の再包囲を試みたが失敗に終わり、多くのけが人を出した。最後は警察の強制排除を待つしか道は残されていなかった。

 75日間にわたる占拠で民主派が得た成果はゼロ。民主化運動の主な舞台は立法会に移る。香港政府は来年前半にも中国の決定に基づく選挙制度改革法案を立法会に提出する。親中国派の議席は成立に必要な3分の2に足りず、民主派議員の一部が賛成に回る必要がある。民主派議員は法案を否決する方針で足並みをそろえている。しかし法案が否決されれば約500万人の有権者が一人一票を投じる普通選挙も白紙に戻り、業界団体代表など1200人の選挙委員会が長官を選ぶ従来の仕組みが続く。
 梁振英行政長官は民主派の切り崩しに意欲を見せており、世論の動向をにらんだ攻防が続く。

 ワーキングクラスが主役のはずの中国の政府がワーキングクラスを弾圧する。
 自民党の比例代表区の総有権者数を分母とする得票率は17%。それで2/3に近い議席を専有する。小選挙区制度が続く限り、20%足らずの富裕層が日本を支配する。これが彼らの称する民主主義だ。
 物価は円安で急上昇し、実質賃金は低下している。アベノミクスは企業優先の施策であり、庶民はトリクルダウンを待つしかない。設備投資減税や大企業の交際費非課税、法人税そのものの減税など、法人には優遇税制、個人には全国民平等な消費税10%の公約。
 ワーキングクラスが主役になれる国家など永遠に造れはしない。
 
 イマジンのB面の『ワーキングクラスヒーロー』。 ジョン・レノンはイギリスの労働運動家、タリク・アリについて歌ったとしている。12/8はジョンレノンの命日。今年も世界各地でイベントが行われた。ネット上にいろいろな訳詞があるが、ジョン・レノンの気持ちを考えて自分なりに訳してみた。
 
生まれた時から、君は自分を無力に感じさせられる
それ以外の感情を持つ暇も与えずに   
悩み苦しんで、何も感じなくなるまで
労働者の英雄はそういうものなんだ
労働者の英雄はそういうものなんだ
 
家庭で傷つけ、学校でいじめる
利口なら憎み、馬鹿なら蔑む
怒り心頭に達して彼らのルールに従えなくなるまで
労働者の英雄はそういうものなんだ
労働者の英雄はそういうものなんだ
 
20年、彼らは君を苦しめ、恐れ慄かせる
そして君が仕事に就くことを許す
仕事がうまく行かないと君は恐怖で凍りつく
労働者の英雄はそういうものなんだ
労働者の英雄はそういうものなんだ
 
宗教、セックス、テレビに依存させ
自分は賢く、差別されず、自由だと感じるようになる
でも君は僕の見る限り、未だ救われない農奴だ 
労働者の英雄はそういうものなんだ
労働者の英雄はそういうものなんだ
 
頂上に君の居場所があると彼らは囁く
でもまず君は笑いながら殺すことを学ばなければならない
丘の上の住人になりたいなら
労働者の英雄はそういうものなんだ
労働者の英雄はそういうものなんだ
 
ヒーローになりたいなら僕についておいで
ヒーローになりたいなら僕についておいで
 
"Working Class Hero" はジョンの代名詞となっている。

強化尋問技術

2014-12-14 | 国際

キューバ・グアンタナモ基地でのテロ容疑者への拷問、イラク・アブグレイブ刑務所における捕虜虐待の凄まじさを考えると、CIAの拷問は予想の範囲内だ。

 
 ただ驚いたのは心理学者が編み出した「強化尋問技術」EITという手法が広く実施され、政府の承認を得ていた事実だ。責任逃れをする体制を整えていたように見える。外傷を与えずに最大限の肉体的、精神的苦痛を与えることで、テロ計画や組織の情報を得る。素人が考えても、苦し紛れに虚偽の証言を引き出しそうだ。
 
 EITは確立した尋問テクニックとして米国社会の中で定着しているのか?そして、精神病患者を助けるはずの心理学者は人間性を否定する尋問技術を考案して、高収入を得、精神疾患を広めているのか?憤りを感じる。
 
 当時のブッシュ政権高官は、アルカイダの容疑者をEITで尋問することを承認したという。チェイニー副大統領、国家安全保障顧問ライス、ドナルド·ラムズフェルド国防長官とパウエル国務長官、CIA長官ジョージ·テネットとジョン·アシュクロフト司法長官など。
 
 5年に及ぶ調査では、CIAの630万ページ以上に及ぶ記録が精査され、CIAの強化尋問の手法や成果と主張されるものが検証された。

(1)CIAの「強化尋問技術」は、有効ではなかった。
  強化尋問そのものの有効性については、CIAが強化尋問の成功事例として挙げた例を調査し、CIAが容疑者から有効な証言を得たのは強化尋問を行う前だった事が明らかになった。    
  また、監察官やライス大統領補佐官からプログラムの有効性について検証を行うよう要求されたにも関わらず、それを行っていなかった事をCIAは認めた。
(2)CIAはEITの運用とその効果について、政府や国民に不正確な情報を提供した。
  ホワイトハウス当局者から質問が来ても、正直に、あるいは完全に答えない例もあり、強化尋問は必要であり、その権限が失われた場合、アメリカ人の死を招く結果になると表明した。(脅した)
(3)CIAの管理は、不適切かつ深刻な欠陥があった。
  CIAは十分に訓練・経験を積んだ人材を雇用せず、暴行や虐待歴のある不適格な人材を雇用していた。
  必要に応じて行われるはずだったEITも、最初から間断なく行われていた。
  強化尋問を受けた拘禁者は、幻覚、妄想、不眠、自傷等の心理的、行動的な問題を示していた。

 CIAはプログラムの開発運用のために外部の心理学者2人と契約したが、彼らに尋問の経験や、アルカイダや対テロ作戦についての知識はなかった。後に2人が設立した会社にCIAは8000万ドルを払って外部委託させた。支払われた金額もべらぼうだ。チェイニーなどネオコンにキックバックがあったのではないかと噂されている。CIAの管理下にあったと分かってる119人の拘禁者のうち、少なくとも26人が不当に拘束されていた。CIAは勾留すべきでないと決定した後も、何ヶ月も勾留し続けた。
 
 アメリカの情報機関では人員のアウトソ-シングが進んでおり、巨大対テロ産業が形成されている。アメリカの各情報機関の予算総額(軍事情報機関除く)は、2014年度は505億ドル(約6兆円)と、日本の防衛予算を超える規模にまで拡大している。
 
  拷問を受けたテロ容疑者は、ブッシュが攻め込んだアフガニスタンから容疑も固まらないうちに強制的にアメリカに連れてこられた。テロに対峙する戦争だと言っておきながら彼らは捕虜として扱われない。テロ容疑者に対しては非人間的な拷問もOKという破格の非人間的待遇である。テロ憎し、テロに対峙するには手段を選ばない強引さがますますテロを煽る結果になっていないだろうか。ますますテロの攻撃目標になり、国民監視が強化されることになる。

 しかし、民主党政権が調査公表したのは評価したい。しかもタイミングが絶妙だ。選挙のための共和党攻撃と見なされないように中間選挙後を選んだ。共和党が圧勝したことで来年からは各種委員会は共和党が牛耳る。そうなると今回のような報告は闇に葬られる。
二大政党の政権交代は情報開示という点でも国民に有利に機能することを目の当たりに見せてくれた。
 
 EITは、「Enhanced Interrogation Techniques」の略だが、実態は「Enhanced Interrogation Tortures」だ。心理学者よ、Toutures をTechniques と言い抜ける恥を知れ!!!