ペットボトル茶の生産量が増えている。問題はペットボトル茶に添加されているビタミンC(L-アスコルビン酸)の品質と量である。
緑茶飲料メーカーのホームページでは、ビタミンC添加の目的を「茶葉に含まれているビタミンCが加工や抽出の段階で失われてしまうので、それを補うため」としている。栄養強化が目的の場合、用途名は書かなくてすむ。しかし、どのメーカーもビタミンCに変色防止など酸化防止効果があることは否定していないのだから、原材料名表示では「酸化防止剤(L-アスコルビン酸)」と表示すべきである。
L-アスコルビン酸は、食肉製品では肉1キログラムに0.5グラム添加で変色防止効果、緑茶、ジュース類では0.02~0.04%添加で褐変防止、風味保持効果が出るとされている。L-アスコルビン酸はビタミンCのことだから、毒性もないと思っている消費者は非常に多い。しかし、WHO(世界保健機関)ではL-アスコルビン酸のADI(1日摂取許容量)を体重1キログラム当たり0.25グラムと定めている。
金沢工業大学研究グループの調査によると、市販されている主な緑茶飲料500ミリリットル当たりのビタミンC含有量は平均で100ミリグラムで、厚生労働省が定めているビタミンCの摂取推奨量は1日100ミリグラム。ペットボトル緑茶1本飲めば、この量に到達する。しかも、合成ビタミンCである。合成ビタミンCと自然の食品に含まれるビタミンCは、まったく異質のものであると理解しておいたほうが健康のためである。たとえば、がん細胞をつくる原因になる活性酸素を、ミカンなどに含まれる天然のビタミンCはほとんど発生させないが、人工的に作られた合成ビタミンC(L-アスコルビン酸)は大量に発生させる。天然のビタミンCには活性酸素の発生を抑える酵素が含まれている。いくら合成ビタミンCが天然のビタミンCと化学式が同じでも、安全性が同じとはいえないのである。
実際、合成ビタミンCを成人に1日3グラムずつ3カ月間用いても異常は見られなかったが、それを6グラムに増やすと、悪心、嘔吐、下痢、顔面紅潮、頭痛、不眠などの症状が現れ、幼児では皮膚湿疹がよく見られるとの報告がある。
加えて、現在、国内で使用されている90%以上のL-アスコルビン酸は、価格が国産の半値以下の中国製となっているのも大きな不安である。中国国内の報道によると、粗悪な添加物が原因で死者まで出ているという。日本への輸入品が、日本の食品衛生法で定められた基準に不適合として水際で廃棄処分になったケースも少なくない。しかし、水際で摘発するのには限界がある。つまり、消費者が自ら身を守るしかないのが現状だ。(文=郡司和夫/食品ジャーナリスト)
何とも恐ろしい話だ。
チョコレートは健康効果が高いと言われ、特に認知症予防に良いという情報でシニアが愛好している。
主な効能は赤ワインより含有量が多いとされているフラバノールの健康効果である。「血圧低下」「抗動脈硬化」「認知機能の改善」の効果が期待されている。
フラバノールはポリフェノールの一種で、チョコレートやココアの主原料となるカカオ豆に豊富に含まれている。
フラバノール含有量の高いココアを摂取すると、一酸化窒素が増え、血管拡張(血圧低下)、血小板凝集抑制(抗動脈硬化)などにつながる。
フラバノールを少なくとも520mg、毎日摂取している高齢者は、認知能力の大幅な改善を示したと言う。
新鮮なカカオ豆や、醗酵したカカオ豆には、約10%のフラバノールが、カカオ豆を加工したココアパウダーには約3.6%のフラバノールが含まれる。しかし、フラバノールは苦い。風味を調整するため、成分調整ココアを使ったダークチョコレートのフラバノール含有率は、わずか0.5%。ミルクチョコレートやホワイトチョコレートには、フラバノールは低いか、まったく含まれていない。そのため、市販のカカオ製品をたくさん摂取すると、健康効果どころか、飽和脂肪酸や糖分により、カロリー(500kcal/100 g)の摂り過ぎになる可能性もある。
もう一つ厄介なのは、カフェインの安全量を超える可能性もある。日本では、カフェインの食品添加物としての使用量や、1日当たりの摂取許容量の基準はない。欧州食品安全機関(EFSA)によると、1回に3mg/kgまで、1日に5.7mg/kgまでと制限されている。 カカオ70%以上の高カカオチョコレートに含まれるカフェイン量は100g当たり68~120mg。市販の板チョコは1枚約60gなので1回に100g食べると、体重が40kg程度の人は安全な1回量を超えてしまう。
多くの人が、エナジードリンクや栄養ドリンクを手に取り、休憩時、コーヒーに手を伸ばす生活を送っている現在、20代日本人男性の「カフェイン中毒死」の事故は記憶に新しい。実際に死亡例がでてしまうと、心配になる。カフェインは、コーヒー豆、茶葉、カカオ豆、ガラナなどの成分で、それらを原料とするさまざまな飲料や食品に含まれている。カフェインは、中枢神経系を興奮させて眠気をはらい、集中力を高めるといった効果をもたらすが、摂取しすぎると、頭痛、心拍数の増加、不安、不眠、嘔吐、下痢などを引き起こす。カフェインを繰り返し摂取していると、体が反応しにくくなり(カフェイン耐性)、より多くのカフェインを求める(カフェイン依存症)。
体重が40kg程度の痩せた女性では、缶コーヒー1本、またはエナジードリンク1本でも、安全な1回量を超えてしまうらしい。
さらに、カフェイン感受性は人ごとに異なるので、健康な成人には有益な量のカフェインでも、感受性の高い人には不眠や頭痛などの害をもたらす(カフェイン不耐症)。
こういう風に見てくると、市販のチョコレ-トで認知症予防や健康効果を期待するのは難しいように思える。
以前は「カラダに悪い」と言われていたコーヒーが、最新の研究により「カラダにいい」という。
肝機能に効果があり、痛風の原因となる尿酸値も下げる、糖尿病にもいいということだ。
1992年には、米国の研究者であるアーサー・クラツキー氏らによって「コーヒーを飲む量が多いほど、アルコール摂取による肝硬変リスクが下がる」というコホート研究が発表された。その後も12万5000人を対象に22年間追跡する大規模研究によって、「毎日4杯以上コーヒーを飲む人は全く飲まない人に対してアルコール性肝硬変の発症率が5分の1になる」という報告を2006年に行っている。
アルコールを摂取するとγ-GTPの値は上昇する。その際、コーヒーをほとんど飲まない人に比べて、毎日コーヒーを飲んでいる人のγ-GTP値の上昇率は低くなる傾向が確認できた。γ-GTPは、肝臓の状態を判断する指標の一つで、アルコールを飲んだときに上がる。AST、ALTは肝細胞のなかでアミノ酸の代謝に使われる酵素。肝細胞が壊れると、血液中に漏れ出てくるため、数値が高くなる。この数値とバランスから、肝細胞の壊れ具合や原因疾患を知る手がかりになる。「ALT」「AST」「γ-GTP」の3つの数値ともに、コーヒーの摂取量が多くなるほど低くなる。
コーヒーに豊富に含まれるポリフェノールの一種クロロゲン酸は強い抗酸化作用がある。炎症抑制効果があるので、それが健康効果につながっているのかもしれない。
1日あたりのコーヒーを飲む量が1~2杯、3~4杯、5杯以上と多くなるほど、尿酸値が低下することが確認された。コーヒーを飲む量が、「1日1杯未満」の人の尿酸値が5.88mg/dLだったのに対して、「1~2杯」では5.75mg/dL、「3~4杯」では5.69mg/dL、「5杯以上」では5.56mg/dLとなる。
2002年にオランダのヴァン・ダム教授らが「コーヒーを1日7杯飲む人は、1日2杯以下の人に比べて2型糖尿病発症リスクが50%下がる」という発表を「ランセット(Lancet)」という科学雑誌に発表した。約1万7000人のオランダ人男女を平均で7年間追跡した結果をまとめたものだ。
血糖値上昇を抑える効果も、おそらくクロロゲン酸の作用が効いている。インスリンを分泌する「膵β細胞」にクロロゲン酸が保護的に働く、クロロゲン酸が腸管での糖の吸収を抑制する、血糖値を上昇させる酵素の働きを抑えるなどの報告がある。
“肝臓がんを抑制する”のは「ほぼ確実」
国立がん研究センターのコホート研究は、10年、20年という追跡期間を経て、2000年代から続々と結果がまとまってきた。
その結果を、全体および個々の部位について、国立がん研究センターのホームページで公開している。
「肝臓がん」のリスクを下げる効果=ほぼ確実
「子宮体がん」のリスクを下げる効果=可能性あり
「大腸がん」「子宮頸がん」「卵巣がん」のリスクを下げる効果=データ不十分
コーヒーをほとんど飲まない人と比べ、ほぼ毎日飲む人は肝臓がんの発生リスクが約半分に減少する。1日の摂取量が増えるほどリスクが低下し、1日5杯以上飲む人では、肝臓がんの発生率は4分の1にまで低下した。
肝臓がんや子宮体がんは糖尿病を発症するとかかりやすくなるがんである。一方で、コーヒーが糖尿病を予防することは、多数報告されている。コーヒーによって糖尿病リスクが下がればがんリスクも下がるということだろう。
国立がん研究センターは昨年5月に、「コーヒーを飲むと、心臓病のリスクが軽減する」という研究報告も発表した。
コーヒーをほとんど飲まない人と比べ、コーヒーを飲んでいる人の死亡率は低下する傾向が確認された。コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、ほとんど飲まない人に比べ24%低い。飲む量が増えるほど危険度が下がる傾向が、統計学的に有意に認められた(国立がん研究センターの多目的コホート調査による結果、2015年)
「1日3~4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べ、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患の病気で死亡するリスクがそれぞれ4割程度減少する」といった結果が出ている。全死亡リスクについては、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、24%低いという結果だ。
コ-ヒ-の健康効果はカフェインではない。緑茶や紅茶には目立った効果はなかったという。