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TPPは米の国家戦略 日本市場を売り渡すな

2011年03月14日 | 経済

北海道新聞2011.03.14.夕刊 

 TPPをバラ色のごとく語る某国(亡国?)首相がいますが、本当にそうでしょうか?

 


論考2011 中島岳志(北大准教授)
 TPPは米の国家戦略 日本市場を売り渡すな


 昨年の秋から日本のTPPPへの参加の是非が急に話題になっている。TPPと
は「環太平洋連携協定」のことで、参加国は原則例外なしの関税撤廃の実現を目指している。菅直人首相は「平成の開国」という言葉を使い、TPP参加を積極的に推し進めている。全国紙の社説もおおむねTPPには賛成の意思を表明している。

 参加は小国のみ
 TPP推進派は「アジアの時代の生き残り戦階」を強調する。日本のような工業国は、成長が著しいアジア諸国との貿易自由化によって利益を確保することこそが国益にかなうというのである。彼らは「アジア太平洋地域の孤児になるな」「アジアの成長に乗り遅れるな」と訴える。
 しかし、最大のマーケットと考えられる中国はTPPPに参加しない。また、韓
国も2国間のETA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)を重視するため参加しない。環太平洋という地域からはずれるインドも参加しない。
 アジアで協定を締結、または参加を表明しているのは、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシアといった小国に限定されている。日本企業にとってのマーケットとしては、あまりにも規模が小さい。日本の輸出戦略としては、極めて限定的な対象国ばかりだ。
 これらの小国は、内需が小さいため外需依存度が高い。彼らにとって自由貿易への積極的参加は、今後の生き残り戦略として当然の帰結だ。人口が多く国内マーケットの規模が大きい日本とは状況が全く異なる。
 結局のところ、中国、韓国、インドネシア、インドなどが参加しないTPPは、アジア市場として魅力に乏しい。日本企業にとっての利益は、それほど大きくない。TPPは実質的には、アジア問題ではないのだ。

 オバマの危機感

 そもそもこれまではほとんど耳にしなかったTPPが突然、問題として浮上した背景には何があるのか。それは大国アメリカの国内問題である。
 アメリカは貿易赤字を抱え込んでいる。景気回復もいまひとつで、深刻な雇用問題を突破できていない。オバマ政権に対する風当たりは強く、中間選挙では民主党の完敗に終わった。
 危機感を抱いたオバマ大統領は、昨年の初頭の一般教書演説で、今後5年間で輸出を倍増させると宣書した。そして、TPPへの積極的参加を表明したのである。アメリカは自国の輸出の増大と雇用の拡大のためにTPP参加を訴えているのだ。
 では、アメリカの輸出拡大戦略の対象国はどこか。それは間違いなく日本である。
 TPP交渉に参加している9カ国に日本を加えた計10カ国の内需を見ると、アメリカが73%、日本が23%を占める。他の諸国を合計しても、たった4%にすぎない。つまりTPPは実質上、日米間の自由貿易問題に他ならないのだ。

 農業や医療破壊

 アメリカは日本の市場を狙っている。しかし、TPPPによって関税が撤廃されると、日本の工業製品もアメリカ市場に入ってくる。もちろんマーケットはアメリカの方が大きい。これは一見アメリカの方が不利な条件のように見える。関税撤廃による不利益は、アメリカの産業界の方が大きく、日本の経済界が潤うように思われる。
 しかし、そんなことはあり得ない。
 アメリカは問違いなく、さらなるドル安誘導を行う。これによって関税撤廃分を相殺し、日本企業の利益を奪い取る。アメリカは関税ではなく通貨によって、国内産業を保護するのだ。
 そうなると日本企業はアメリカでの現地生産強化に向かう。すると、アメリカにとっては雇用問題の解消にもつながる一方で、日本へはアメリカの農作物と金融・医療などのサービスが大量に流入する。
 もう一度繰り返しておきたい。TPPはアメリカの輸出と雇用を拡大する国家戦略である。そしてターゲットは日本の市場だ。TPPはアジアの成長市場の問題ではなく日米貿易問題である。TPP交渉の過程で、しっかりとした例外規定を設定することができず、国益を損なうような条件での合意が迫られるならば、きっぱりと席を立つべきだ。アメリカとの例外なき関税撤廃など、日本の農業・医療を破壊するだけに終わる。
(北大准教授)



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