~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

脊柱側わん症手術の長期成績―術後20年以上経過例

2007-08-04 18:55:30 | 20年後のアウトカム
当記事のオリジナル作製は2007年8月4日です。データを整理して再公開することを計画していたのですが、なかなか作業が進みませんため、とりあえずもう一度このオリジナルのまま再公開することといたしました。

長期成績に関しても、もう一度データを整理していきたいと考えております。

2018年6月25日
august03

//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////



側弯症学会での報告を転記しました。オリジナルは側弯症ですが、あえて側わん症
とここでは表記しています。
(添付写真と報告とは関係ありません)
................................................................

東京都済生会中央病院 整形外科、鈴木 信正

【目的】第32 回の本学会(1998 年)にて鈴木らは、脊柱側弯症に対する手術後10
年以上経過例111例の良好な長期成績を報告した。本発表の目的は、術後経過観察期
間を20年以上とし、正当性および信頼性の高い評価法を用いて臨床評価を行うこと
である。
【方法】対象は脊柱側弯症に対し1980年12月以後に手術治療を行い20年以上経過し
た86例のうち、死亡2例および消息不明16 例を除く68 例にアンケートを送付し、
回答の得られた40 例である。男4 例、女36 例、手術時年齢は63 歳の1 例を除くと
平均14.6 歳であった。診断は特発性33 例、先天性2 例、その他5 例、手術法は
Harrington 法36 例、Luque 法3 例、その他1 例であり、平均9.7椎間(6‐13椎
間)が固定されていた。Cobb角は術前平均55.8°が術直後21.9°、調査時29.2°で、
矯正率は術直後59.8%、調査時49.1%であった。調査時年齢は平均38.7 歳(31‐83
歳)で、経過観察期間は20‐29 年、平均22.9 年であった。調査は日本整形外科
学会腰痛治療成績判定基準(JOA)、Roland-Morris Disability Questionnaire
日本語JOA版(RDQ)、日本語版Oswestry Disability Index 2.0(ODI)、Scoliosis
Research Society Outcomes Instrument(SRS-22)を用いた。
【結果】JOA は他覚的所見6 点を除く23 点満点中平均19.1 点、RDQは平均1.6 点、
ODIは平均6.8%、SRS-22のすべての平均は4.1 点であった。各点数と調査時Cobb 角
との相関は認められなかった。
【考察】本報告のような単一術者による脊柱側弯症術後20 年以上の長期成績はこれ
まで本邦では報告がない。10 年成績と同様に20 年成績も臨床評価は良好であった
。今後L4傾斜や腰椎前弯などのX線計測所見あるいは身体計測所見との相関、現在の
手技での長期成績との比較などさらに詳細に調査する必要がある。
【結論】脊柱側弯症術後20 年以上経過例における腰痛および機能評価は良好であっ
た。

..............................................................

(解説 by august03)

手術後20年以上経過した86例にうちアンケート調査に回答を得た40例についての
成績報告。

性別 : 男4 例 女36 例 計40例
手術時年齢 : 平均14.6 歳
診断 : 特発性側弯症33 例、先天性側弯症2 例、その他5 例
手術法 : Harrington 法36 例、Luque 法3 例、その他1 例
固定数 : 平均9.7椎間(6‐13椎間)
Cobb角 : 術前平均55.8° → 術直後21.9° → 調査時29.2°
矯正率 : 術直後59.8%、調査時49.1%
調査時年齢 : 平均38.7 歳(31‐83歳)
経過観察期間 : 20‐29 年、平均22.9 年

* コブ角50度~60度前後が手術の目安
* 手術による矯正 21.9度 
* 20年間でのコブ角の進行 約8度 (毎年進行するのではなく、何かのきっかけで
  進行するという報告もあるのですが、あえて平均をだせば、0.4度/年間)
* 手術時15歳 調査時39歳として、女性の平均寿命80歳とすれば、26度程度まで
  のコブ角進行が予想される ? 26度程度であれば、健康上の問題は考えられない
  範囲といっていいと思います。
* 当時の手術法であるハリントン法やルーキー法は現在は使われていません。
  現在用いられている手術方法はさらに矯正率が高くなっていますので、手術後の
 コブ角は15度前後までは戻せていると予想します。
  (脊柱の硬さの個人差があります)

 手術成績は良好だと思いますが、年齢を経る事にコブ角の進行は見られますので
 術後の定期検査は欠かさずに続けられることをお薦めします。

...............................................

ブログ内の関連記事として

特発性側弯症 20年後のアウトカム No.4
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/4ddf60ab567dd7231bc02f555d416ac9

特発性側弯症 20年後のアウトカム No.3
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/2adfe0ba14cc2c85b09a511b957b5497

特発性側弯症 20年後のアウトカム No.2
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/a60e1144b03536ab11c07010ad5b605d

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« モアレ検診の課題 | トップ | 側湾症手術のタイミングについて »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

20年後のアウトカム」カテゴリの最新記事