シンムラテツヤのブログ

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ダブリング概論

2015年07月04日 | 日記
今日は渋谷という街に埋れていた。
男はあることについて考えていた。

「ダブリング」

歌を録音した後に
同じフレーズの歌を重ねて
音に厚みを持たせる手法。
男は妙に納得したようにメモをとる。

しかしそのダブリングとやらは、
気が抜けると少しずつ遅れていくのだ。
この遅れはズレになっていく。
挙句、遂にはこれがまったく
ずれてしまい別人の歌になってしまう。

昼休み後、しっかり締め直したのに
また遅れてきた。

夜になるとダブリングは
止まった時計の秒針のように
同じ場所にいる。

男は先に進んで良いのか
引き返すべきか迷っている。

大雨の中歩いた渋谷の街。
男は傘と傘の間をぬって歩く。

動き続けるたくさんの傘を
眺めているうちに
止まってしまったのは
ダブリングではなく現実の方では
ないかという仮説が浮かんだ。

そう考えた男は、あわてて
ダブリングの場所まで戻ったのだった。

戻った場所、そこは雨があがっていた。


2015.7.3