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中高年の健康「性器脱」という病気をご存知ですか?

2005年09月01日 | コラム
「性器脱」という女性特有の病気があることを初めて知った。五十歳以上の女性の三人に一人あるいは二人に一人がかかっているとみられる身近な病気なのだが、病気が病気だけに恥ずかしがって相談も受診もできずに悩んでいる方も多いのではないだろうか。しかし治療法は確実に進歩している。思い当たる方は医師に相談してほしい。
この病気の治療に早くから取り組んでいる昭和大学横浜市北部病院泌尿器科・島田誠教授に聞いた話を紹介する。
骨盤の中にある子宮、膀胱、直腸などの臓器は、筋肉や筋膜といった骨盤底筋群によって支えられているため、通常は体外に出てくることはない。ところが、この筋群が緩んだり傷ついたりすると臓器の位置が下がり、膣を通って体外に出てくることがある。出てきた臓器が子宮なら「子宮瘤」、膀胱なら「膀胱瘤」、尿道なら「尿道瘤」、直腸なら「直腸瘤」と呼ばれるが、中にはすべての臓器が脱出する「全性器脱」もある。
性器脱は症状により1度から4度に区分されている。1度は臓器がやや降りてきているが、膣にまでは到達していないもの。2度は膣の入り口にまで到達したもの。3度は膣の中にまで降りてきたもの。4度は完全に膣外に脱出してしまったもの。そして、1度の段階では気づかない人も多いが、中には、膣からゴルフボール大の肉塊が飛び出してきてあわてて受診する人もいるという。
症状は脱出する臓器によって膀胱瘤による排尿障害、直腸瘤による排便障害が多いが、これらの障害を起こす前に、下腹部の鈍痛や臓器が下に引っ張られるような不快感が持続することもある。さらに重要なのが性生活に支障をきたすことである。中高年だって性生活を楽しむ権利はある。
原因は、出産と加齢で、とくに巨大児の分娩、鉗子分娩などで子宮や膣の筋肉が伸ばされたり傷つけられると起こりやすくなる。
若い時は多少筋肉に傷がついていても内臓を正常な位置に維持できるだけの力があるが、更年期以降になると筋力が衰えてくるためなお性器脱が起こりやすくなる。
その患者数だが、日本には統計がないため不明だが、アメリカなどの例から一千万人以上、五十歳以降で出産を経験した人に限ってみると三〇~五〇%はいるのではないかと推測されている。
治療法は、これまで手術やペッサリー装着が主流だったが、最近は高分子素材のメッシュによる膣壁形成術が効果を上げている。網目状のメッシュで膣の壁を補強し、臓器の脱出を防ぐという方法である。
この療法は産婦人科と泌尿器科、外科の三領域にまたがるため、専門医を探すのが難しいとされているが、現在、島田教授らを中心に研究会が開かれており、医師の数も次第に増えてきているという。

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