ブログ あさふれ

朝日新聞読者の皆様へ「あさひふれんど千葉」が地域に密着した情報をお届け!

人&ライフ 海野暁子さん

2005年12月02日 | コラム
 母は人形作家で有名な鈴木明美氏だ。鈴木さんは現在病床にある。これまでに数度の危篤状態にありながら献身的な娘海野さんの介護のお陰で自宅介護できるまでになり、今年で6年目になる。鈴木さんの形作家としての知名度は高く、特に千葉では根強い人気がある。その作品で表現される女人は実に艶っぽく、粋で、ある種の凄みさえ感じさせる。そんな師匠に就き心20数年、海野さんも創作活動を共にしてきた。ここ数年は鈴木さんの介護もあり休止状態だつたが、つい先日、甥の長女の初節句に「姉さま人形」を制作した。もちろん海野さん一人の手によるもので、初めての作品だ。「彼女の写真を見ながら創ったんです」という「姉さま」の顔はふっくらとした頬が愛らしい。「母に見せました。そして何点もらえるって聞いたんです」といたずらつぽく、こちらの反応を覗う。何点だつたのか。その人形が海野さん一人の作品ということに驚く鈴木さんに「60点?70点75点?」と矢継ぎ早に間い掛けたという。そして答えは「そんなところかしら」。そう述懐する海野さんの表情は満足気に見えた。
 病床にありながら今も尚、創作への意欲を垣間見せるという鈴木さん。「あまり刺激にならないようにこっそり創りました」とささやき、「考えていることがあるんです」と明かす。鈴木さんの過去の作品で「原爆」を表現し、戦争の悲惨さを訴えたものがある。人形を実際に硫酸で焼いた迫力ある作品だ。今手元にあるその人形を眺めながら「もう一度これを世に出したいの。少し私流にアレンジしてね」と話す。徐々にではあるが創作活動を復活させる海野さん。次の作品はこの平和へのメツセージになるのか。そして師匠は何点をつけるのだろう。
(文 やまもとみどり)

最新の画像もっと見る