たまには、画像無しの記事も書いてみましょう。
映画化もされた吉田修一の小説「悪人」を読了しました。
上下刊の本ですが、意外と読みやすく、わりと短時間で読めました。
それぞれの登場人物の生い立ち、心情などを丹念に書き込みながら、
ゆっくりとしたペースで、事件の展開が語られていきます。
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映画「悪人」は、出会った二人の「逃避行」がメインの物語として
宣伝がされていますし、実際に内容もそうなのでしょうが(映画は未見)
小説の方では、その逃避行が始まるのは、下巻の後半になってから。
悲劇的なラストに向けて、物語のスピード感もアップして、
なかなか読みごたえがありました。
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一応、意外な「ひねり」「反転」があり、幕切れは印象的で、感動的です。
ミステリとしてみれば割りと「ありがち」な反転ですが、
丹念なエピソードの描写と、伏線の積み重ねで、
みごとに「感動」をよびおこす小説に仕上がっています。
その手際は、さすが「芥川賞作家」ですね。
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「本当の悪人はだれか?」というのが、映画や小説の帯での
キャッチフレーズですが、この作品のテーマはこれだけではないでしょう。
「愛するもののために、自分は何ができるのか」
作者は、このことが一番言いたかったのではないかと、思いました。
もう少し具体的に語りたい気もしますが、マナー違反になりそうなので
このへんで。