『真実を語ることができるのは、おまえがあまりよく知らないときだけだ。』 読み終えると、これが頭の中に戻ってきて腑に落ちる感じ。 確かに。
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ミステリウム
著者:エリック・マコーマック
訳者:増田まもる
発行:国書刊行会
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「島」の端っこの小さな炭鉱の町キャリックでは、不可解な事件が発生し、その後、町民たちが原因不明の病で次々と死亡していた。
見習い新聞記者のマックスウェルは、ブレア行政官の要請の下、現在は封鎖され、報道も規制されているキャリックに赴くことになる。
彼の手には資料として渡されたある男の手記。
町では死にかけた人々たちと、手記を書いた男であり、なおかつ犯行を自白したとされる男・エーケンがマックスウェルを待っていた。
彼らにインタビューすることを許されたマックスウェルは死の謎の真相に近づくことができるのか。
なんだろうなー、どうなるんだろうなーとさらりと読むようにすれば、「あー、もう、なんてこった」くらいの気分で終わりにできると思います。
でも、冒頭の部分、『これを読んでいるあなた、怖がることはない。鼻先がページすれすれになるまで、慎重に顔を近づけていきなさい。息を吸って。もういちど。(中略)本のにおいしかしなかったあなた。気をつけなさい。もう手遅れかもしれないが。』に多少なりとも引っかかってしまうと、そうはいかないかもしれません。
手にしたものが本であってはいけないのか。
「あなた」と呼びかける登場人物と同じところにいるはずの、その「あなた」にとって、本が本であってはいけないのか。
そんなことを思ってしまうと、その先、なんだかいろいろなところにひっかかってしまいます。
エーケンの手記のなかの表現、たとえば「不明瞭の文章のような」丘の稜線であるとか、死を目前にした町民たちの病状の現れ方や、マックスウェルの感じるにおいであるとか。
読んでいるときには先も気になるしで、うっすらとした違和感なのですが、最後のほうまで読み進み、「おいおい、なんてこった」と(場合によっては、なんだよ、それ、と)思った後、最初のページに戻って、最初の部分読んだりしようものなら、なんだかものすごく嫌な、というか、じわじわくるヤラレタ感がやってきます。
で、本を閉じて装丁をみると、また、さらに妙な気分。
遠目には青い花にも見えるようで、読む前にはきれいだとすら思っていたものが、不気味なものに変わった気がします。
なんだか、本から何かが漏れ出てそう。
でも、きれい。うーん。
『真実を語ることができるのは、おまえがあまりよく知らないときだけだ。』
これはマックスウェルが会った町民たちが彼に言った同じ言葉です。
読み終えると、これが頭の中に戻ってきて腑に落ちる感じ。
確かに。
ぱくっと本を閉じて、あー、楽しかったという気分が味わいたい時は避けて読んだほうが無難です。
面白いけど。
[読了:2012-03-27]
参加しています。地味に…。
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