東京創元社の海外文学セレクションのうちの1冊。
世界が終わるわけではなく
著者:ケイト・アトキンソン
訳者:青木 純子
発行:東京創元社
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12篇が収められている短篇集。
まずは目次を、と眺めてみると、それぞれのタイトルはこんなふう。
『シャーリーンとトゥルーディのお買い物』、『魚のトンネル』、『テロメア』。
『不協和音』、『大いなる無駄』、『予期せぬ旅』、『ドッペルゲンガー』。
『猫の愛人』、『忘れ形見』、『時空の亀裂』、『結婚記念品』、『プレジャーランド』。
このタイトル『世界が終わるわけではなく』はこの短篇集のためのものだとわかります。
さて、そのココロは?
うんざりするような現実、夢も希望もないような一面をさらりと描いておきながら、その一方で、それを平気でチャラにするような物語たち。もちろん、その逆も。
思い込みははぐらかされ、気持ちはなんとも中途半端なところに置かれてしまいます。
ちょっと悲しい。少し楽しい。
そんな妙な読後感は、世の中、楽しいだけでも、悲しいだけでも、当たり前のことだけでもないのよねと言われているようにも思えます。不思議には驚くけれども、受けいれてしまったら不思議なことではなくなってしまう。まあ、そんなこともあるでしょう、と。
沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり。禍福は糾える縄の如し。定まりきって変わらぬものは何もなく、不幸中の幸いなんて言葉もあることです。
それならば、世界に終わりが来たとしても、ちょっぴりは残る部分があったりしそうではありませんか。
終わりを予感させる世界で語られる物語がどこかで別の世界の一場面を作っている、12の物語が収められた短篇集は、ちょうど遠く離れた星々を結んでみる星座のようで、その隔たり、そのつながりのゆるさこそが、世界を終わりの先へと拡げていくのかもしれません。
いっそ、終わりだと思いさえしなければ終わらない、とか?
なんだか肩の力が抜けるような気持ちになってしまったのでした。
※こちらの本は「書評でつながる読書コミュニティ 本が好き!」さんからいただきました。ありがとうございます。
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