ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

門井慶喜【人形の部屋】

2011-01-25 | 東京創元社
 
以前読もうと思っていた本を見つけました。
天才たちの値段―美術探偵・神永美有』を書いた方の作品です。
 
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 人形の部屋

 著者:門井 慶喜
 発行:東京創元社
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父・八駒敬典。彼の前にはプラスチックケースに入った人形が1体ある。
それを見て、中学1年生の娘・つばめはフランス人形かと敬典に問う。
娘の問いに対して、敬典はビスクドールについての軽いうんちくを語り始めるのだけれど、この親にしてこの子ありといったところか、利発な娘は打てば響くような反応を返す。
かわいくなくてかわいいぞ、つばめちゃん。
問題は敬典のもとに人形が持ち込まれた理由、割れて欠けてしまっている人形の足の爪先である。
彼が壊したわけでも、彼の持ち物でもない。ましてや彼は人形の修復師でもない。
人形を壊したのは以前務めていた会社の先輩で、こともあろうに人形は預かり物。
このままにはできない、かといって正直に話す度胸もなく困り切った先輩が、博識の後輩を頼ってきたのだ。
割れたビスクドールの足の先っぽ。
人形愛好家でもなさそうな持ち主に、このまま弁償させられてしまうのか。

というお話『人形の部屋』から始まる日常の謎系の連作短編集です。
ミステリを読み慣れている方には、これだけでも大まかな展開と結末がわかってしまうのではなかろうかと思います。
この父と娘の顔見せ、シリーズの方向提示といった作品でしょうか。
うんちく好きのワタクシは「好き、好き、こういうの」という感じです。

東京創元社ミステリ・フロンティアシリーズのうちの1冊で、収められているのは5編です。
表題作『人形の部屋』、『外泊1 銀座のビスマルク』、『お花当番』、『外泊2 夢見る人の奈良』、『お子様ランチで晩酌を』。
それぞれの物語のなかで物事はすっきり収まって、後味も悪くありません。
底流には常に敬典とつばめちゃんの物語があり、最後の『お子様ランチで晩酌を』はストレートに家族がテーマ。
全体的にさらっとした印象の中では、感情の起伏が目立つ作品かもしれません。
最後のほうにだけ登場する敬典のお姉さんのだんなさんがすてきです。
 
これのシリーズ、続いているのかしら。
敬典を辞書代わりに使ってつばめちゃんが謎を解くとかのパターンなども読みたいような気がします。
次の時にはもう高校生だし。

こちらも楽しそうです。
 
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 おさがしの本は

 著者:門井 慶喜
 発行:光文社
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