ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

門井慶喜【天才たちの値段―美術探偵・神永美有】

2010-04-15 | 文藝春秋
 
「神永美有」はてっきり女性だと思っていたら、男性でした。

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 天才たちの値段―美術探偵・神永美有

 著者:門井慶喜
 発行:文藝春秋
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美術もののミステリです。
真贋を「舌」で判断できるという異能の持ち主・神永美有が探偵役。
「舌」といってももちろん舐めたりするわけではありません。
真作なら甘みを感じて、贋作なら苦みを感じるのだとか。
この神永とひとつの絵画を縁にして出会うのが美術講師の佐々木昭友。
佐々木のほうはわりあい親しみやすいキャラクターです。
いつも詰めが甘くて。

ボッティチェリの知られざる真作発見?
不思議な涅槃図の秘密は?
絵画の価値を争点にした政治家親子のディベートの決着は?

美術ものらしくうんちくたっぷりで面白いです。
「舌」で感じるのは直感としても、それを裏づけるのは知識というわけで。

ただ、美術ものというと、つい北森鴻のシリーズを思い出して読後感を比較してしまいます。
陶子さんとか恭壱とかのシリーズ。
これらのシリーズは、いわゆる名の知れた名画を扱っていないということがあるとはいえ、美術品に何らかの強い感情をもつ人が登場していて、うんちくもさることながら、美しいものにさまざまな形で魅入られた人々の物語を読むという読後感がありました。
でも、この作品にはそういう印象が残りません。
とてもあっさりしています。
短編集の最後の作品は遺言がらみの物語でしたので、それっぽいといえばいえそうですけれど、モノに対しての執着はさほどでもないので、やはりとてもさわやか。

シリーズは続いているようで、2作目の単行本がすでにありました。
1冊目の終わりの雰囲気からすると、腐れ縁ほど強い…なのか、やっぱり世間は狭い…なのか、再会の場面はちょっと気になります。
まあ、文庫になるころまで覚えていたら。

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 天才までの距離

 著者:門井慶喜
 発行:文藝春秋
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他の作品で、ちょっと気になったのはこれ。

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 人形の部屋

 著者:門井慶喜
 発行:東京創元社
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お父さんと娘が食卓で会話するという状況がベースの作品らしいです。
読んでみたいかも。





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