ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

船本 弘毅 監修【一冊でわかる名画と聖書】

2011-03-16 | and others
 
聖書のエピソードを名画でたどるガイドブック。

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 一冊でわかる名画と聖書
 107の名画とともに聖書のストーリーを解説


 監修:船本 弘毅
 発行:成美堂出版
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西洋絵画を理解するには不可欠といわれる聖書。
育んだ人々の中に深く根差しているものですから納得はしていましたが、こうして聖書のエピソードが有名な絵画とともに並ぶと、改めて西洋絵画史と聖書との切っても切れない結びつきを見せつけられる気がします。
 
主要エピソードとそれを題材にした名画を見開き1ページにおさめた簡潔さはガイドとしてわかりやすいつくり。
旧約聖書の『天地創造』から時系列に配置されたエピソードは歴史物語としての流れがあり、古今の有名画家の作品に彩られた絵物語としても楽しむことができます。
旧約聖書と新約聖書の違いからを説明してくれる丁寧さで、各エピソードは小さな欄まで読むと意外なほどの情報量でしたが、文字を読めない人たちへの布教のために描かれ始めたという宗教画の成り立ちを追体験する気分で読み進めたためか、やはり絵画のほうに気をとられてしまいます。
「これだけは知っておきたい聖書の名画」として挙げられているのは5作品。
ミケランジェロの『天地創造』、アンジェリコの『受胎告知』、ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』と『最後の晩餐』、ルーベンス『キリスト昇架』と『キリスト降架』。
説明文を読みながら、仄暗い礼拝堂で蝋燭だけを頼りに見上げた人々たちが感じただろう荘厳さや、絵画の中のイエスの痛みの生々しさに涙したかもしれない姿を想像したりしていましたが、やはり信仰には縁の薄い私には、これ以外に年代的にも幅が広く画家が選ばれ、聖書の一場面に託された何かを感じさせる作品も取り上げられていたことが嬉しい点。
ミケランジェロの『天地創造』のすぐ後、アダムとイブの作品に選ばれているのはクリムトの『アダムとエバ』。礼拝堂にある純然たる宗教画もあれば、本当に描きたいものを託して聖書の題材が選ばれた絵画もあり、手法や時代の感覚の変化なども感じることができます。
ゴシックから印象派に至るまで続く西洋絵画と聖書の関わりを再確認できる1冊でした。






※この本は書評コミュニティ『本が好き!』さまからいただきました。
  

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