なんとなくマンガが読みたかったので、衝動買いした作品。
ほとんどギャンブルです。
装飾的な文字で書かれた背表紙が読めなくて、棚から引き出してみたのが運のつき。
なんとなくアタゴオル物語を思い出して、つい買ってしまいました。
![]() ![]() | Marieの奏でる音楽 上 Marieの奏でる音楽 下 著者:古屋 兎丸 発行:幻冬舎 |
島々が点在する星。
人々は争うこともなく、日々を穏やかに生きています。
少女ピピと、少年カイが住む島は技術工房の島。
一度滅んだというこの世界の過去の遺産を糧に新しい機械を生み出している島です。
その技術は人を助けるためだけに使われ、そうして出来上がったものを他の島々の特産品と交換することで成り立っている生活。
争いごとひとつない、穏やかな理想郷めいた世界。
人々の生活と心には、ひとつの信仰が深く浸透しています。
その中心に存在するのが女神マリィ。
ピピとカイの島では、地下の神殿の巨大なからくり人形がその似姿として崇められ、そして、空にはさらに巨大なマリィが浮かび、人々の営みを見守っています。
その女神マリィに、人とは違った想いで強く惹かれているカイは、どんな些細な音も捉えることができる耳を持っている少年。
その能力で鉱脈を見つけたり、石油のありかを見つけたり。
そして何より、彼は空に浮かぶマリィから流れでる音楽を聴くことができる唯一の存在。
不思議な能力と雰囲気を持つカイを、ピピは子供の頃から想っています。
しっかりとひとつの世界が出来上がり、過不足なく描かれています。
ふたりの子供時代のエピソードが描かれる「プロローグ」の冒頭では、工房や機械、曲線の多い建物の造形、鉱物などのアイテムの印象から、やっぱりアタゴオルの感じ?と思っていましたが、読み進めるごとに、あれ、あれれ?と、話は、不思議や楽しいというところからどんどん離れていきます。
上巻では、ゆっくりとしたペースで世界が描かれ、ピピの片恋の物語かと思われた物語が、下巻では急展開。
なぜ、カイだけがマリィに特別の感情を持ち、その音楽を聴くことができるのか。
空に浮かぶ女神マリィとはどのような存在なのか。
ピピとカイが18歳になった年、この世界に溶け込んでいる信仰、その神の本当の意味が明かされ、最後に、物語はおお~というところに落ち着きます。
ミステリでいえば、叙述系のどんでん返し。
表紙からは想像もしていなかった展開と終わりでした。
表紙上巻がピピ、下巻がカイ。
ピピはカイに卵を渡そうとし、カイはそれを受け取ろうとしているところです。
ふたりのいる島では、女の子から卵を渡すことが、求婚を受ける証、あるいは求婚の証。
読み終わってからみると、なんとも切ない表紙です。
予備知識なしの衝動買いというギャンブル。
この作品に関しては、勝った、という気がします。
私にとってはなかなか良いお買い物でした。
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