カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

とある蒐集家の棚より・オーパーツ

2017-12-16 08:51:22 | とある蒐集家の棚
たかあきは『水晶鉱石』と『消しゴム付き鉛筆』に関する物語を創作してください。

 病弱だった姉さんは小さなクロッキー帳に何枚も水晶鉱石のスケッチをしていて、僕がすぐに短くなる鉛筆を何本も削ってあげながら見せて貰ったクロッキー帳には、ありとあらゆる角度から描かれた水晶鉱石の姿が並んでいた。時が過ぎ、姉さんを失った僕が異国で手に入れた水晶鉱石には、見覚えのある短くなった鉛筆が封じ込まれていた。
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とある蒐集家の棚より・永遠の酔っ払い

2017-12-14 21:48:01 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ガリレオ式温度計』と『ワインボトル』に関する物語を創作してください。
 
 うちのガリレオ式温度計の筒には何故か水の代わりにワインが詰まっていて、そのせいで浮き球が常に酔っ払っている。正確な温度を示さないことにはもう慣れたが、筒に体当たりするのを止めない奴、独楽のように回り続ける奴、ひたすらに浮き沈みを繰り返す奴、頑なに動かない奴などなどと、色によって様々な反応を示すので目が離せない。
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とある蒐集家の棚より・擬態する金魚

2017-12-13 21:41:59 | とある蒐集家の棚
たかあきは『皿の上のコイン』と『金魚鉢』に関する物語を創作してください。

 そのコインに刻まれているのは、いつの間にか金魚鉢から消えてしまった僕の金魚で、だから僕は金魚を元に戻そうと、こっそりコインを金魚鉢の中に入れてみたのだが、コインに刻まれた金魚は、まるで自分が金魚であった事など一度も無いと言わんばかりの無様な姿で金魚鉢の底に横たわってしまった。僕が金魚鉢を叩き壊したのは、そんな理由からだ。
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とある蒐集家の棚より・細工師が遺したもの

2017-12-12 20:40:24 | とある蒐集家の棚
たかあきは『皿の上のコイン』と『ランプ』に関する物語を創作してください。

 生前は不思議なものばかり作っていた叔母さんに貰ったコインをランプの光が照らしたとき、奇妙な継ぎ目を発見したので四苦八苦の末に開いてみると、表裏の二つにパーツが分かれたコインの隙間に何やら畳んだ紙が挟まれていた。
 これはもしや僕に遺された叔母さんからのメッセージかと思ってワクワクしながら読んでみると、書いてあったのはコインを元の形に戻す手順だった。
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とある蒐集家の棚より・宙を征く紅子さん

2017-12-11 23:08:37 | とある蒐集家の棚
たかあきは『星の砂』と『マグロのぬいぐるみ』に関する物語を創作してください。

 紅子さんはマグロだけど、ぬいぐるみだから海に連れて行っても泳げないよねと残念そうに呟いてから学校の遠足に行った姪っ子は、それでもお土産だと星の砂を買ってきてくれた。海じゃなくてお空なら紅子さんも泳げるかなと言う言葉に僕が想像したのは、胴体に巻き付けた赤いリボンの蝶結びを翻しながら星の海を進む紅子さんの勇姿だった。
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とある蒐集家の棚より・もう一度、始めよう

2017-12-09 07:47:28 | とある蒐集家の棚
たかあきは『空のコーヒーカップ』と『方位磁針』に関する物語を創作してください。

 愛するコップをメトロノームに叩き壊された方位磁針は、しばらく悲しみにくれていたが、やがて口径が似たようなサイズのコーヒーカップに鞍替えした。お気に入りのカップだったが仕方なくくれてやると、やはりカップの底で嬉しそうに回っているらしいが、何しろカップが陶器製だから良く見えない。
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とある蒐集家の棚より・瓶の中身

2017-12-07 21:48:26 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ワインボトル』と『ワインボトル』に関する物語を創作してください。

 高価なワインボトルは格好良いと言う理由で空き瓶を綺麗に取っておく知り合いがいるが、たまに来客があると安ワインをその瓶に詰めて出すのが趣味らしい。
 相応のつまみを用意して、滅多に空けない逸品だが、お前が来るから特別に開栓したなどとホラを吹くと、みんな面白いくらいに騙されるそうだ。
 ちなみに俺は騙されなかったが、それは奴が瓶に詰めた安ワインを普段から愛飲している故にだった。
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とある蒐集家の棚より・星のランプを灯して

2017-12-06 21:23:21 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ランプ』と『星の砂』に関する物語を創作してください。

 空から振ってきた星屑を砕いてランプのホヤに詰めておくと、暗いときに蒼白く輝き出してとても綺麗なのだが、照明として使うには少しばかり暗い。どうにかならないかとランプ職人の友人に聞いたが、灯りになるくらいの星屑を詰めたらランプのホヤが星の熱で溶け落ちるので、非常に危険なのだそうだ。
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とある蒐集家の棚より・星を散らす

2017-12-05 20:24:26 | とある蒐集家の棚
たかあきは『糸切り鋏』と『星座盤』に関する物語を創作してください。

 父さんが持っている星座盤には、天の星を見たことも無い星座の形に繋いだ糸が張ってあって、この糸を鋏で切ると星が散らばってしまうのだそうだ。
 星座盤の中空に浮く星と、それを繋ぐ糸が一体どういう仕組みになっているのかを知りたかった僕は。ある火とうとう星座を繋ぐ糸を切り離してしまい、何処かにある筈の世界が一つ消えた。
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とある蒐集家の棚より・逃げる貝

2017-12-04 22:05:59 | とある蒐集家の棚
たかあきは『アンモナイトの標本』と『灰皿と吸い殻』に関する物語を創作してください。

 普段、書斎で使っている大理石の灰皿にアンモナイトの化石が紛れ込んでいることに気付いた。しばらく観察していると煙草のヤニが嫌いらしく、なるべく吸い殻の少ない方向に移動しているようだったので、面白がって殊更に吸い殻を押し付けていたら、とうとうある日、出て行ってしまった。
 だからうちの灰皿には、今もアンモナイト型をした空白が残っている。
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