薮内武司「日本統計学史における呉文總」『経済論集』(関西大学)第28巻1/2/3/4号, 1978年9月(『日本統計発達史研究(第3章)』法律文化社, 1995年)
明治期, 杉亭二とともに, 日本の統計学および統計制度の礎を築いた呉文總の学問的, 行政的業績を考察した論文。1851年(嘉永4年), 江戸・青山に生まれた呉文總の統計分野での最初の仕事は, 73年の工部省電信寮訳文課での勤務だった。仕事に興味のもてぬまま勤務していたが, たまたま太政官正院製表課に勤務していた山縣三郎から声をかけられ, 呉は製表課で仕事をすることになる。ここで杉亭二課長のもとで働き統計への関心を強めた。その後, 呉文總は, 内務省衛生課, 新聞記者, 逓信局, 専門学校での統計教育, 麹町区会議員など, 職を転々とする。筆者はこの間の, 呉の足跡を追いながら, 統計への関心が強まっていくことを確認し, その業績を概観し, その死(1918年)までを丁寧に叙述している。
呉文總は, 著訳書, 論文が桁はずれに多かった。また, 呉は統計研究に没頭しただけでなく, 統計行政, 統計局に力を注ぐことを惜しまなかった。研究では, ドイツ社会統計学の伝統に依拠し, 欧文の著作を多数翻訳するかたわら自らの統計理論を構築していく。なかでも, 当時(1890年代)の数理統計学者の代表格だった藤澤利喜太郎との統計学の学問的性格をめぐる論争で, 社会統計学者としての自らの足場を固めていく。研究上の業績では, 『万国・国債政表全 一名万国国債統計』「『スタチスチック』理論」「スタチスチックノ学理」『統計詳説 一名社会観察法』『統計原論』『統計学論』「経済スタチスチック論」「斯氏統計要論」『統計之神髄 一名社会状態学』『実際統計学』などがある。筆者はこれらの内容と意義を要約, 説明している。他にも応用統計, とりわけ人口統計, 道徳統計, 疾病統計, 経済統計の分野での多数の論文を紹介している。
統計実践では, いまだ揺籃期にあった日本の官庁統計の規範作りに貢献し, とりわけ生産統計(工業統計, 農業統計), 労働統計(賃金統計), 郵政統計の基礎をつくった。特筆すべきは, 国勢調査の実施にむけて努力したことである。国勢調査の実施をみる前になくなったが, 各国の国勢調査の取り組みの視察, 早期実施に向けた環境整備になみなみならぬ労力を注いだ。
日本の統計研究, 統計制度を語る際には, はずしてならない呉文總の統計人生は, 本稿によって生き生きと伝えられている。
明治期, 杉亭二とともに, 日本の統計学および統計制度の礎を築いた呉文總の学問的, 行政的業績を考察した論文。1851年(嘉永4年), 江戸・青山に生まれた呉文總の統計分野での最初の仕事は, 73年の工部省電信寮訳文課での勤務だった。仕事に興味のもてぬまま勤務していたが, たまたま太政官正院製表課に勤務していた山縣三郎から声をかけられ, 呉は製表課で仕事をすることになる。ここで杉亭二課長のもとで働き統計への関心を強めた。その後, 呉文總は, 内務省衛生課, 新聞記者, 逓信局, 専門学校での統計教育, 麹町区会議員など, 職を転々とする。筆者はこの間の, 呉の足跡を追いながら, 統計への関心が強まっていくことを確認し, その業績を概観し, その死(1918年)までを丁寧に叙述している。
呉文總は, 著訳書, 論文が桁はずれに多かった。また, 呉は統計研究に没頭しただけでなく, 統計行政, 統計局に力を注ぐことを惜しまなかった。研究では, ドイツ社会統計学の伝統に依拠し, 欧文の著作を多数翻訳するかたわら自らの統計理論を構築していく。なかでも, 当時(1890年代)の数理統計学者の代表格だった藤澤利喜太郎との統計学の学問的性格をめぐる論争で, 社会統計学者としての自らの足場を固めていく。研究上の業績では, 『万国・国債政表全 一名万国国債統計』「『スタチスチック』理論」「スタチスチックノ学理」『統計詳説 一名社会観察法』『統計原論』『統計学論』「経済スタチスチック論」「斯氏統計要論」『統計之神髄 一名社会状態学』『実際統計学』などがある。筆者はこれらの内容と意義を要約, 説明している。他にも応用統計, とりわけ人口統計, 道徳統計, 疾病統計, 経済統計の分野での多数の論文を紹介している。
統計実践では, いまだ揺籃期にあった日本の官庁統計の規範作りに貢献し, とりわけ生産統計(工業統計, 農業統計), 労働統計(賃金統計), 郵政統計の基礎をつくった。特筆すべきは, 国勢調査の実施にむけて努力したことである。国勢調査の実施をみる前になくなったが, 各国の国勢調査の取り組みの視察, 早期実施に向けた環境整備になみなみならぬ労力を注いだ。
日本の統計研究, 統計制度を語る際には, はずしてならない呉文總の統計人生は, 本稿によって生き生きと伝えられている。
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