Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

パーツが、語ること。『刺青』

2004-10-08 | rayonnage...hondana
うつくしい着物の女性を見ると、思い出すことがあります。
谷崎潤一郎の、ことさらに耽美的な短編、『刺青』。
華やかな色彩の世界、酔ってしまいそうなくらい、素敵です。
大好き。

特に好きなのが、最初に、主人公の刺青師が、長年もとめた理想の女性を見つけるところ。
とはいっても、最初は足だけです。
簾からこぼれた、まっしろな素足。
その肌のきめ、かたち。
それしかみていないけれど、美の感覚に優れた彼の目は、
これこそ理想、男という男を踏みつけにしていく運命の、危険な魅力に満ちた究極の美女の足。
ということを見抜きます。

いったい、どんなにうつくしい足だったことだろう?
と、毎回毎回、気もちをこめて想像してしまいます。。

それからしばらくして、偶然の再会を果たす二人ですが、顔も知らなかったのに、彼女の足を見て、
彼は、何年か前、自分がとりこになった相手だと悟ります。

それだけで!

といううそみたいなお話ですが、それだけ、並外れた美しい足、少女ながら凄みを感じさせる美貌だったのでしょう。
さらに、肌のきめは、足のみならず。
太夫というのは、そういう感じに才能がある女性が、スカウトされてなるというよね。。
読み手であるこちらの想像は、どんどん膨らんでしまいます。

でもそんなふうに、太夫級の美女ならずとも、誰しも、自慢出来る美しいパーツを、必ず持っています。
たとえば、やわらかな毛、きれいな爪、流れるようなうなじ、なめらかな背中・・・
その部分をことさらに愛でていると、他の部分にも、じわじわ美しさが広がっていきそうです。

私は、この小説を読むと、ちょっとでもかの女性の魅力にあずかろうと、
じっくりお風呂に入って、丹念にくるぶしや甲、かかとを磨いてしまいます。
足が、秘めやかだからこそ官能的なパーツであることを、いまさらながらに思い出します・・・。
目から一番遠いところにあるけれど、それゆえにお手入れをしてあげないと。。
爪には好きな赤を塗って、仕上げ。
なんだか、足元を大事にすると、そこからキレイが立ち昇って来てくれるような気がして、うれしくなりますね

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