Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

読書会 プルースト『消え去ったアルベルチーヌ』

2019-03-06 | rayonnage...hondana
プルーストのシリーズを読む行為は、「源氏物語」を読む行為に似ていると、この間ふと思いました。
ひたすらな長編であること、がわかりやすい共通項で、また、最後まで読んだ人が非常に少ないから。
…というと笑えない冗談のようですが、双方とも、長いのは、ストーリーありきではなくディティールdetailsが溢れ出るように散りばめられているからです。
何もかも書き留めておかねばならない、という作家たちの執念を感じます。
それほどに、煌めく、価値のあるディティールに満ちている。
それに、ガイドブックとして読めます。源氏物語は京都のガイドブック、プルーストはフランス上流社会のガイドブックです。
読み込む価値があります。

「消え去ったアルベルチーヌ」は、プルーストの長編シリーズの最後から2作目です。
若かりし頃、第1編の初期時点でもう、ちゃんと読むことを挫折し、シリーズ半分くらいまでを拾い読みと飛ばし読みでお茶を濁してきた私は、「アルベルチーヌ」は、タイトルをチラ見したことがあるくらいで、このたび読書会のファシリテーターに任命されなかったら、進んで読むことはなかったと思います。
でも、今読んだら、なんだか沁みてくるんだなあ。

シリーズ構成はこうです。

第1編『スワン家のほうへ』
第2編『花咲く乙女たちのかげに』
第3編『ゲルマントのほう』
第4編『ソドムとゴモラ』
第5編『囚われの女』
第6編『消え去ったアルベルチーヌ』
第7編『見出された時』

登場人物も多いので、整理するために、わたしはまずは映画を見返しました。
『見出された時』

最終章ですが、よって、主要人物がだいたい出てくるので、本で字を追う時に、アルベルチーヌといえばキアラ マストロヤンニ、オデットといえばカトリーヌ ドヌーヴ、シャルリュス男爵といえば、ジョン マルコビッチの顔しか浮かばなくなります。端役にも脳内で顔が付いてくるので、とても良い。

とても良い映画ですが、キャストは部分的に、小説のキャラクターと一致してる?と個人的にはあんまり賛同しかねる印象もありました。フランス人的にはこうなんだ、と言われたらハイそうですか、というしかないけれども。
オデットのカトリーヌ ドヌーヴは、たぶん映画「昼顔」から、高級娼婦つながりで配役されたと思うのですが、なんといっても現在(当時も)は体格が、気さくな人そうすぎる、、、とか、
サン ルーを演じたあの俳優は、(王妃マルゴの兄役が印象深すぎるせいか)ちょっと、サン ルー役には濃すぎないか?とか、、、
まあ何にしても、オールスター勢揃い!の、当時のフランス映画ファンには垂涎の出演陣であります。


さて、先日3月2日に、読書会が無事終わりました。
さすが、プルーストくらい長編、かつ多様なキャラクター登場作品になると、熱心な読者がついていて、とても気楽にファシリテーターを務めることができました。
受け持ちグループは、5人。

なんといっても私はフランソワーズが好きですわ、
ほう、私はサン ルーが大好きや、

と、それぞれ「推しメン」でシリーズを読破するという新しい方法も披露いただき、大河ドラマの鑑賞会といった趣も。。。
寡作のラディゲで苦戦したのが嘘のようだ!
読者の層も、ラディゲのときより平均年齢が上がり、皆さまそれぞれの人生経験を踏まえて語られる、その感想の豊かさに、しみじみ皆、耳を傾けました。



前回より、丸善書店の大森氏より、席に着いたらまずはテーマ本の感想をコンパクトにまとめてもらおう、という案があり、実行されるようになりました。
これが、皆さんの思考の整理と、ファシリテーターからしても進行の助けになり、とても良かったです。

●サンルーはナイスガイやなあ
●結局のところ、アルベルチーヌって女は、主人公をどう思っていたのだ?
●アルベルチーヌの死は必要だったのか?
●ヴェネチア旅行のシーンは必要だったのか?
●アルベルチーヌの死をきっかけにして、妄想ワールドに耽溺していた主人公は現実世界に目を向けるようになった
●主人公はうざったい。でも、どんな人間だって自分について語ればこのようにうざったい。だから、どんなエピソードも、自分の人生に引き寄せて考えてしまう。

。。。等々、皆さまの「ひとこと」は議論に展開していき、それぞれの疑問にもそれなりに答えを得て、帰途につかれたようです。

プルーストを読破する。
というのは、フランス人にとっても課題のようで、その頃ちょうどうちに遊びに来ていたパリ住まいのフランス人(社会学者)に聞いても、「マドレーヌのとこで挫折して、以降読んでない」と頼りない返事。めっちゃ冒頭じゃないさー(・・;)

そういう訳で、当日いただいたプルーストについての覚書は、世界共通で役に立ちそうです。





3月31日のフランス古典読書会は、ボリス ヴィアン『うたかたの日々』
こちらは、ブルーブックス京都で。
そしてそして、翻訳家の野崎歓さんがいらっしゃるとのこと。
わたしは実は野崎さんのファンなのです。ぜひ行きたい!ところなんですが、所用で無理です。涙涙涙。


申し込みはこちらです。

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