Belle Epoque

美しい空間と、美しい時間

『恋は足手まとい』

2006-07-14 | cinema... eiga
数ヶ月前に観た『美しき運命の傷跡』にて、懸命に自分のもろさをこらえ立ち上がろうとする人妻を演じたエマニュエル・ベアールが、元気にドタバタコメディで楽しんでいる。
やっぱり、笑ってくるくる動き回る彼女は、砂糖菓子のようにかわいらしい。

水曜日、渋谷の映画館に19時半からの回に行くと、レディースデイサービスの上、シードルのちびボトルももらえました。
座席に落ち着いて、映画を観ながら早速あけるシードルで、ほろ酔い。
とことん軽いタッチ (ながらも、かなりもろにエッチ) の喜劇に楽しく笑い、笑いの余韻を唇に残しながら、帰り道、軽い足取りで渋谷駅に向かう。
今週はとことん息抜きに徹してる会社帰りですが、この日も、かなり抜け方として良い感じでした。

映画の公式サイトは、こちらです。


さて常々、フランス女性の「女らしさ」というものが、雑誌で特集されたり何だりで注目されますが、こういう、明るさ一辺倒の恋愛劇というものを観ると、かえって、その「女らしさ」がどのようにして作られてきたかの重さが、おぼろげに感じられる気がしました。

一般に描かれるいい男、としてのフランス男はたいてい気が多く、またはすごく移り気。
あの無責任さが、まあラテンの血なのか、とにかく、オス度合いがとっても高い。だから事件が起き、それが劇になるわけだけど。
しかもそれなりに口も達者だったりして、何かとうるさく注文が細かいところがまた面倒で、文化的なオス、といったらいいか・・・。

それを相手にする女側は、やっぱり、すーごく苦労する。
がんばったって、いくら綺麗だって、賢くったって、ふいに勝手な都合で逃げられちゃうし、プライドなんかしょっちゅうずたずた。
でも傷ついて世を儚んでいる暇なんてない。
「もう安心」
なんか、一生手に入らないどころか、手を抜いていると、まともに恋愛の土俵にさえ上れない。
それが、文化的にもう当たり前なんだなあ、主流として染み付いているんだなあ、だから、フランス女達もそれなりにしたたかになるわけだなあ・・・。
男女関係における「想定」範囲が広すぎるゆえに、あらゆる心構えをして臨まなくちゃいけないんですね・・・。

ちょっとやそっとのことで男を手放さないために、彼女達は、したたかに進化した。
孔雀が羽を発達させたように・・・
美しさも、絶妙な駆け引きのテクニックも、見惚れるコケットな仕種も、全て、優秀な種の保存のために、脈々と受け継がれ、さらに研かれてきたもの。
・・・そうして魅力的になった分、さらに男たちの目移りが増えてしまって、余計に、恋をめぐる話がややこしくなっていったりもするわけだけど。

一方で、日本・・・、
古く平安時代は、御簾越しの歌のやりとりと身の回りの品の断片で相手を想像して恋をし、
現代はメイドの制服に萌え、モデルの服を徹底して真似しなぜだかその人になりきる、
という、多分に空想の世界に負うところの大きい、繊細な空気感、を人間関係において大切にしてきた私たちの文化と、
一方でフランス、そんなバーチャルな恋愛なんてはなから歴史にない民族の、
「人とはぶつかり合い、関係はただ実践あるのみ!」
のたくましいコケットリーとは、根っこからして違いすぎる。
学ぶっていっても、土台が違う、関係への熱意が違う・・・、と痛感。

そんなわけで、誰にも全然感情移入が出来ずにただただ圧倒されて面白かった喜劇から、かえって恋愛にまつわる感情のどろりとした「濃さ」を感じました。
この濃さは、確かに、「足手まとい」かもしれない。
はまってしまったら。


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2 コメント

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たしかに~♪ (夜子)
2006-07-16 19:20:58
なるほど。

それが魅力的なフランス女性の恋のメソッドなのね。

なんだかmiさまの文章読んで、久しぶりにフランス恋愛映画、見たくなってしまったわ



濃ければ濃いほど、ハイリスク・ハイリターンなのかも。人と人って。

だけど、それこそが人間関係全てにおける興味深さで。



あたしはきっと、その「足手まとい」感、はまってると思います♪



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ハイリスク・ハイリターンの醍醐味 (夜子さま(mi))
2006-07-18 23:16:51
こんばんは!

夜子さまの「足手まとい」感、力強く拝見してます。

いつも勇気付けられる。ありがとうございます!

ひりひりするくらいの気持ち、持ってしまうくらいの濃い関係。

それを「幸せ」っていうには、同じくらいのつらさがあるからなんですよね。。

こういう生きてる実感、って、ジェットコースターみたい。ほんとに。
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