靴

靴がとても好き。
好きなスタイルの靴は、見るだけでも幸せになってしまうし（特にこの秋冬のモードはナイスだ）、
一度買った靴にも、愛を注ぎます。
中敷や底や、ヒールの皮の張り替えなどで、しょっちゅう色々持ち込むので、最近は、近所の修繕屋（とても良心的で仕事が丁寧なお店を見つけました）のお得意さん化し始めた気分です。

部屋で靴の手入れをしていて、ふと、マダム・クロードという、かつてのパリの高級娼館の女主人の、本のことを思い出しました。
政府の高官や、大富豪をお客として迎えていた彼女の館では、「娘たち」と呼んでいた高級娼婦たち（当時の一番洗練された、粋な女性たち）に、主人のマダム・クロードは、身なり・行儀作法について、厳しいしつけをしていたといいます。
靴を磨くときは、底までぴかぴかに。
私が思い出したのは、彼女のそのセリフ。

靴は、人となりをあらわす一番大事なパーツだから、上質の女は常に、きちんと隅々まで手入れを行き届かせているもの。
ふむふむ、かっこいいですね。
確かに、底まできちんと磨くと、時間がなくぱっぱっと上の方だけのほこりを払った時との、気持ちの引き締まりようが、全然違いますものね。

パリでモードスクールに通う友達も、「人は靴に出る」と言い切っていました。
男性を見るときも、「まず靴」だそうです。
どんな靴かでその人がわかるかはもちろん、手入れしてある靴ならば、まず「OK」らしい。

そういえば、以前勤めていた会社でも、今の会社でも、大事な打ち合わせに向かおうというえらい方が、
その前にささっと、ピカピカの靴をさらに、常備しているブラシで拭いていたのを見たことがありました。
いい皮は、磨かれるとさらに艶やかな輝きを増します。
そういう人は、スーツもシャツもタイも、良い生地と仕立てのものを身に着けていて、「格」を感じさせてくれます。

女性だって、もちろん同じ。
きれいに手入れしたお気に入りの靴を履けば、歩き方も軽快にキレイになるし、結果美人度がアップ。
我々は、常に見られています。
人にもそうだけど、なにより自分に。
靴の裏を磨いたかどうか、なんて、通常自分にしか知られないものだけど、その自負が、オーラのぴかぴかを生み出す鍵なのではないかと思います。